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49話 いったん忘れて遊びましょう!

何事にも、息抜きって必要だと思うんですよ。気分転換。気分転換ですよ。


ハイッ、ホンペンハジマリマース





「後悔しても知りませんよ」

「俺は......」


うつむいて黙り込んでしまう、ガーツィさん。


「私は行けとは言いません。でも、私は失敗したことがある。ただ、それだけのことです」

「ナツキ......」

「お前は、ちゃんと乗り越えられたのか?」

「乗り越えた......んですかね?わかりません。でも、解決はしました。だいぶ、楽になりました」

「そうか......そうだな」

「すみません、勝手なこと言って」

「いいんだ。お前は正しい。俺は、ただ逃げていただけだ。お前の言う通り、俺は知っていた。マイーロから届いてたんだ。『ギルシェさんは王都で騎士になったらしいです』ってな具合にな。最初は、無事と知って喜んだよ。だけど、すでにミルルシアは失踪していた。どのツラ下げて会えばいいんだってな。でも、それは逃げているだけだ」


私なら、責任感で押しつぶされちゃうかもしれない。実際、前世では重圧(プレッシャー)に圧し潰されそうになって、逃げようとしてたから。私も、やろうと思えばできたんだ。何だって、チャレンジすればよかった。だけど、もう遅い。あの世界にはもう、戻れない。


「予定通り、商店街を見て回りましょう」

「だが」

「別に、結論を急ぐ必要なんてないです。よくかんがえて、答えを出せばいい。だから、リラックスしながら、落ち着いてよく考えましょう?」

「そうか?」

「そうです!五か月ぶりに王都に来たんだし、せっかくなら楽しまないと!」

「楽しむ......お前は、本当に図太い性格をしているな。そういう考えの方が、得をするのかもな」


そうかな?でも、私は今までそんな考え方をすることは出来ていなかった。......変わったのは、たぶんこっちに来てからだ。


「ですよ。行きましょう」

「だな」





「あはははっ!これ、おいしい!」

「ナツキ、ちょっとはしゃぎすぎ!」

「やれやれだな。お前ら、元気あり過ぎだろ。オッサンはちょっとやすm」

「喰らえ!ホットドッグアタック!」


油断して大あくびをしたガーツィさんの口に、どすっ。ホットドッグが急所に突き刺さる。


「もぐもがっ!?」

「ちょ、ナツキ、マスタード付けないと」


何もつけないで口に入れてしまったホットドッグに慌てて、ミルアがマスタードビームをガーツィさんに向けて発射する。


「むぐぐっ!?ぶはっ、ぐあっ、ぐあぁぁぁああっ!目がぁっ」

「あははははっ、あははっ」

「ちょっと......ふふふっ、ふふふふふっ、ごめんなさ、面白いですっ!」

「お前ら......!こら、そこになおれぇっ!」

「そう言って止まる人はいませんよ、ガーツィさん!」

「ふふっ、ナツキ、ちょっと待って!」





「おおっ!このロザリオかっこかわいい!」


露店に並んでるアクセサリー類の中から、綺麗に装飾された、パンク風なロザリオを取って見る。


「あ~分かる。でも、私には似合わないかな」

「そうかなぁ。ゴスロリに合わせたら、似合うと思うんだけど」

「ご、ゴスロリ!?あんなの、恥ずかしくて着れないよ!」


ミルアが着れば、何だってかわいいんだけどなぁ。特に、ゴスロリとか、ロリータファッションとか、メイドさんとか。変わった色モn......ごほんごほん。かわいい服が似合うんじゃないかなって思ってるんだけど。


「オッサンの前でそういう話はしないでくれないか。全く話に入れないぜ」

「ガーツィさんも、オシャレしたらすごい化けると思うんだけど」

「はぁ?」

「あ、確かに。全然格好に気を使ってないけど、無精ひげをそって髪の毛を整えて、服もオシャレにすればいいと思います」


そうそう。せっかくの、綺麗な髪と整った顔がもったいないよ。そんなもったいないことしたら、色々な人からたたられそうだよ。


「え、本当か?俺も捨てたもんじゃないかもな」

「何、そのポージング!変なの!あはははっ」

「ちょっと、それウケ狙いですか?ふふふふっ」

「なっ、なぁっ......!おま、お前ら!」

「また怒った!あははははっ」

「また逃げるのー?ふふふっ」





「ふむ、この鍛冶屋は中々」

「でしょ?私も、目を付けてたんですよ。有名じゃないけど、腕もいい。しかも、エンチャントや魔力コーティングまでしてくれる。魔石加工も」


この店は、私が食べ歩いていた時に偶然見つけた、良い感じの鍛冶屋だ。この店は中々商店街のはずれにある......っていうか、商店街から出てるからね。探すのに、苦労したよ。そう、自慢気に胸を張って見せる。


「それはすごいな......!ここの経営者は一人か?」

「分かんないけど......すっごい美人な人がここの裏口から入ってった所を見たことがあるから、既婚者なんじゃないかな?」

「ぐぬぬ......」


私の報告に、顔をゆがめて悔しそうな表情をする、ガーツィさん。なんだ、その顔。


「ガーツィさん、まさか嫉妬してるんですか?」

「お前らには分らんかもしれんけどなぁ。結婚願望が無くても、悔しいもんは悔しいんだっ!なんでかは自分でも分からないけどな」

「自分で何もしないのに、文句ばっかり言ってても仕方ないですよ、ガーツィさん」

「だなぁ。俺は仕事に生きるぞー!はっはっはっはっはぁ!」


ヤケクソ気味に、笑い声をあげるガーツィさん。なにも、そんな極端に向かっていかなくても。......どうせ、待ってても大丈夫か。


「これが仕事に人生を捧げた者の末路か」

「だね」

「何だナツキお前!仕事に生きる男をバカにするってか!?ミルアも、なんだ、『だね』って!あーもう怒ったもんね!」

「『もんね』って、子供じゃないんだから......あははっ」

「ちょっとナツキ、言い過ぎ......っふふふふ」

「あーもー知らん」

「っ......っぐ、ふくくっ!っははははは!あっはははは!」

「ぷっ......ふぷっ!あはは、あは、ふっ、ふふふふふ!」





「はぁ。なんか、久しぶりに遊び疲れた感覚だ」

「こういう疲れも、中々いいものでしょ?」

「ああ、いい気分だ......」


身体を動かさないと、精神の方が疲れちゃうからね。たまには、こういった大きな息抜きが必要なんだ......と、私は思う。前世の私は、息抜きがうまくできなくて壊れちゃったから。


「ろくに体を動かしてなかったんでしょ?それじゃあ、体調も何もかも良くなりませんよ」

「ぐっ。たまには動かしてるぞ?副ギルマスと追いかけっことかしたりしてな」

「どうせ、書類仕事から逃げ出してるときでしょ。でも、安心してください。多分、帰ったら楽しい追いかけっこの始まりです」

「お前は本当に鋭いな。まぁ、帰ったら追いかけっこは確実だろうな。いや、正直に椅子に座るか。どうしようかな」


いや、そこは迷うところじゃないでしょ。仕事をやりなさいよ、仕事を。


「そんなこと言ってると、副ギルマスに怒られますよ」

「だな。......もう、約束の時間だな」

「ですね」

「......来ませんね」

「......だな」


......。............。..................。


「何でアイツ来ねぇんだよ!?自分で五の刻に来るって言ってたよなぁ!?」

「言ってましたねぇ」

「......はぁ。しゃーねーな......行くか」

「行くってどこへ?」

「執務室」

「「え」」





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