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4話 主人公はなぜこうも価値の高いものに出会うことが多いのだろうか?

主人公って、謎に価値の高いものに出会う傾向がありますよね。幻の秘宝とか、伝説の聖剣とか、賢者の石とか。






「なぁなぁ。王都に着いたはいいけどさ、ここからどこに向かうつもりだ?」

「お前が仕えることになる、魔王陛下のところに......と、言いたいところだが、お前は本来城に入城するどころか入国するどころか、大陸に上がる権利すら持っていない。このまま入城したら、貴様は侵入者としてすこーんとやられる。」

「すこーんって、お前なぁ。」


すこーんって、いったいどういう意味だよ?あれか?おいしい奴か?そういえば、昨日から何も食ってないからお腹すいたんだけど。


「言い方は悪いですが、あってます。このままでは入ることはかないません。さらに、その見た目......陛下に認められても、気に入らない臣下に暗殺されるやもしれません。」

「じゃーどーすれば良いんだ?って、もしかしてアンタら......」

「そう、お前には騎士の称号を授ける。これからは、魔王陛下の忠実なる騎士として、働くことになる。」

「そうですな。そして、見た目の方を改善させるために、貴方には......ある薬品を使っていただきます。」

「ある......薬品?」


なんだその不安定な効果がある薬品をイイ感じに説明するための良い感じじゃない説明。説明内容が不安定すぎるんだよなぁ。第一、ある薬品って説明になってねーか。つーか説明の前のやつか。説明じゃねーのか。


「ええ。【秘薬 変身薬】です。効果は名前がそのまま効果となっていると言ったら分かりやすいのではないでしょうか」

「......変身するのか。」

「ああ。変身する。意識してその種族の者に触れると、その種族の姿形、能力をコピーできる。でも安心しろ。姿形をそのままコピーするのではなく、種族をコピーするだけだ。意識すれば、性別も変えられんことも無いが。」

「......どういう事?」

「つまりは、お前が女エルフに触れて変身しても、お前が目の前の女エルフになるわけではない。あくまでお前の種族がエルフになり、お前がエルフの見た目と能力を手に入れるだけだ。女エルフになりたいと思ったら、お前の女エルフバージョンになるだけだ。目の前の女エルフと瓜二つというわけではない。」

「なるほど、理解した。だけどなあ、その言い方だとその効果が一生涯続くように聞こえるのだが。」


なんてな。さすがに効果が一生続く薬品なんてこの世に無いよな。だって、そんなこと言ったら効果の良しあしに限らずめちゃめちゃ値が張るっつーか価値がでかいっつーか......。


「続くぞ。一生。お前は一生変身の能力を手に入れることができるのだ」

「おいおいおい。それ、不便以外の何物でもねーじゃねーか。」

「いえ、大丈夫です。変身したいと思わなければ変身することは無い。貴方の戸籍を改変して、魔族生まれということにすれば、なんにでも変身することができる魔族の者です。一生、人間とバレることはないでしょう。」


つまりはアレか。俺はタダで便利な能力を得ることができるってことか。なんつーハッピー。すげぇなおい。ここまで来ると、さすがに疑うぞ。俺をどうするつもりだっつーんだコノヤロー。


「お前、タダだって浮かれてないか?タダなわけないだろうが。そのおめでたい頭の中身、スパッと切って確認してやろうか?」

「うるせーなーおい。誰だって考えるでしょうが!で、一文無しの俺に、いくら求めるってんだ?もうあれだぞ。俺には健康的な臓器しか残ってねーぞ」

「お金はいただきません。その代わり、その金額に見合った働きはしてもらいます。」


金額に見合った働きね。つまりは、生涯を陛下の為に尽くすってことか。良いだろう。思春期男子はな、そんなシチュエーション、憧れ以外の何物でもねーんだよ。思春期男子ってのは、例外なくみんな中二病なんだ。日常生活でポロっと『ウィンガーディアム・レビオーサ』って唱えちまうもんなんだ。......あの時の周りの女子の冷めきった視線、忘れられねーよ。マジで。しばらくは話かけてもらえなかったからな。いつもは断っても大量に届くチョコが、その年のチョコは少し量が減ってたくらいだからな。


「ふっ。なら問題は無いな。陛下の世話から危険な任務、現地調査やらなんやら。何から何まで教われば完璧に限りない状態までこなして見せようじゃねーか。」

「普通そういう時は完璧にこなして見せるっていうもんじゃないのか?」

「物事を完璧にこなせる者なんて存在しない。だが、完璧に近い作業ができるものなら存在する。いや、そこは努力でなんとかできるんだ。だから、俺は完璧に近い状態までこなすと言う。」

「......うむぅ。確かに、言い得て妙でありますが、完璧なんて存在しないのかもしれませぬな。」


ふっ。そうなんだよ。だがな、知能ある生物は長きにわたる研鑽を積むことにより、完璧に最も近づくことができる。それを知能ある生物は競い合うから完璧ってのは遠ざかってくのかもな。完璧に近づいたものを追い抜き、さらにまた追い抜く。そして、追い抜き追い抜かれを繰り返すうちに、いつの間にか最初よりも高い位置にいる。でも、それでも競うことをやめないと、完璧は遠ざかっていくのかもしれない。だって、片方完璧になっても追い抜かされたらその時点で完璧じゃねーからな。完璧っていうのは、水面みなもに映る月のように、絶対に手に入らないからこそ魅力があるのかもな......。なんつってな!


「何を気味の悪い顔をしているんだ?まぁ、顔については置いておいて、問題は......」

「ええ、どうやって宝物庫から例の秘薬を持ち出すのかという点ですな。」

「え?正式に持ち出すことはできないのか?」

「......無理ですな。下手をすれば、国宝レベルで貴重な代物です。同時に、邪悪なものに渡れば世界の危機にも陥るかもしれないという、危険な代物でもあるんです。」


マジでか。おいおい、どうなんだよそれ。現時点では、俺って不法入国して、字も読めなくてふてぶてしい態度しかとって無い、めちゃんこ怪しい奴なんだぜ?そんな奴にそんな価値のそんな危険なもの、渡してもいいのかよ?


「......ふむ。考えていることは想像は付きます。では、それに答えておきましょう。私の好みは水着ギャルです。」


............ちげぇぇぇぇぇぇ!!!まったく考えてねーよ?そんなこと!いやでも待ってちょっと気になってたかも。この紳士的な人も、俺と同じで俗物的なことを考えているのかとは少し考えていたのかもしれないってどうでもいいわそんなことは!!!!


「......冗談は置いておいて、そうですな。......私は貴方のことは悪く思っていませんよ。今では珍しいほどに自分の欲に素直です。だからこそ、隠していることが隠れていない。いや、隠そうとしていない。」

「執事さん......。」

「まぁ、少々煩悩欲的な考えが強いとは思いますがな。」

「執事さん!?」


良い感じでまとまりそうだったのに、なんでそうやって最後の一言に要らないことを織り交ぜるかな!......まぁでも、そういうふうに評価されるのも、悪くないかもな。あれ?あんまりいい評価じゃ無くない?『自分の欲に素直』『隠し事ができていない』『煩悩欲的考えが強い』......あれ?あれぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!?!?!?






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