45話 五か月、久しぶりの王都
五か月ぶりの王都と言うのは、ガーツィさんの事です。ナツキ&ミルアは普通に四日ぶりとかです。
「歓迎すると言ってこれじゃあな」
「私たちに言わないでくださいよ」
「そうですよ。仕方ないじゃないですか」
「だがなぁ。この行列は、どうにかならんのか」
確かに、この行列はつらいものがある。長い道を歩いてきたうえに、ここで長時間待たされるのは、体力的にも身体的にも勘弁願いたい。
「仕方ないですよ。手作業なんですし」
「ま、それもそうだけどよ、もっと、簡単な方法があったらなぁ」
それも、人が手作業でギルドカードの称号をしているのが原因だ。人の手で一人一人やっていると、遅くなるのも当然でしょ。だけど、もしかすれば。前の世界の知識をもってすれば、通った人物の魔力を照合して犯罪歴や経歴などを調べることのできる装置は作れるかも。ギルドカードを、水晶にかざすと情報が照合できる。その仕組みは、一人一人が違う魔力だという特性を利用して、登録してある魔力と情報を照合するという物だったはず。なら、水晶の機能を遠隔化......つまり、カメラのように、通り過ぎただけでスキャンできれば、圧倒的に効率化できるんじゃないかな?
「簡単な方法ですか。多分、私簡単につくれますよ」
「はぁ!?何言ってんの、ナツキ!」
「んな!?お前、自分が何言ってるかわかってるのか!?今まで誰も実現できなかったことを、簡単にできるって言ってるんだぞ!?」
「そこがおかしんですよねー。だって、私程度の人に考え付くんなら、方法は違うにしろ他の人が試していてもおかしくはないじゃないですか。ガーツィさんだって、さっき考えようとしてたし。実現は出来ないけど、アイデアを出すくらいなら、一般人にでもできるんですよ」
それなのに、研究機関や研究者が研究開発をしない。いや、したという記録がない。一体、それはどういう事なんだろうねぇ。
「だが、お前は本当に作ることができるのか?」
「できますよ?衛兵やギルドが使ってる水晶の見本と言うか、本物があれば」
「......解った。王都のギルマスとは知り合いだ。口添えておこう」
「おお。やっぱり、あれなんですか?ギルマス同士の繋がりとかあったりするんですか?」
「まぁ、俺はいい関係を築けてると思うが」
おお。やっぱりあるんだな。そういうギルマス同士の繋がり。どこで、そういうコネクションをつくるんだろう?あれかな、やっぱり、会議みたいな集まりの場なのかな?そこで、挨拶をして、ご飯なんか行ったりして親睦を深めるとか。仲良くなっておけば、何かあった時に良いことがあるかもだし、情報を共有したりなんかも出来る。なんか、いいなぁ、そういうの。私とミルアの関係とは少し違うか。パーティーメンバーみたいな感じではなく、同僚?っていうのかな。私と、シースみたいな感じか。......まだ一度も絡んだことないんだけどね。
「あ、もう少しで私たちの番ですよ」
「おう」
私たちの前に万里の長城のごとくならんでいた長蛇の列は、時間と共に解消され、私たちの前に待つ人は、二組だけになっていた。......二十分くらいか。これが、二分くらいになったら素敵だな。そんなことを考えていたら、自分たちの番になっていた。
「では、ギルドカードを参照します」
「うむ」
「ギル!?」
「静かにしてくれないか」
ギルドマスターと言う情報が出てきたのだろう。衛兵の青年が思わず叫びそうになったところを、ガーツィさんが素早く口を押さえつける。確かに、こんな場所で叫ばれて、騒ぎにでもなられたらたまった物じゃない。
「も、申し訳ございませんっ!で、では、そちらのお二方のギルドカードも参照します」
「はーい」
「はい」
「......問題ないです。ようこそ、王都アルカディアへ」
ガーツィさんはともかく、私たちはただの冒険者。しかも、ランクF。ギルマスと最低ランク冒険者が行動していたことに訝しげな視線を向けられたものの、今度は叫ぶことはないようだ。ギルドマスターにお供する、Fランク美少女冒険者二人。怪しい。怪しすぎる。
「で、どうします?早速ギルシェさんに会いに行きますか?」
「いや、少し歩きたい。五か月ぶりの王都だからな」
「じゃあ、私が案内しますよ」
五か月ぶりの王都か。五か月。前世では、五か月といったら、結構な期間だ。長期間と言えるだろう。でも、この世界の交通手段は、馬、馬車、走魔物、飛空船、徒歩くらいだ。五か月と言うのは、当たり前で普通の期間なのかもしれない。
「それは助かるんだが、いいのか?俺とは、なにも親しいわけでもないのに」
「構いません。王都のギルドマスターに口添えいただくというのに、何もせず帰るわけにもいかないでしょう」
「王都まで案内をしてもらったので気にすることはないんだが......」
「いえ、ここでギルマスに顔と名前を売っておくのも悪くないと思っただけです」
「そうか。まぁ、案内してもらったし、ギルシェの部下って事だしな。何かあった際には俺の名前を出すと良い」
「有難うございます、ギルドマスター」
「逆に、本当にいいのか?お前には世話になりっぱなしだが......例の、水晶についても開発してくれるんだろう?」
「ええ、まぁ。まだ調べていないので何とも言えませんが、大丈夫だと思います」
実際、調べてどういう仕組みかわからないと、何とも言えない。これがもし、すごく複雑なルーンで構成されていたとしたら、実現は難しいだろう。
「では、まず昼食でも取りませんか?腹も減ったでしょう」
「ああ、そうだな昨日は野宿だったし、一日ぶりのまともな食事だ」
実は、クリピ場所からここまで約二日間ほど経過してる。クリピからウルミアの町まで朝から夜まで歩き続けて約十二時間。ウルミアから王都まで朝から朝まで二十四時間弱。ちなみに、少し急げば王都→クリピ間も三十時間ほどで到着することができる。これは、朝六時に出発したとしたら、翌日のお昼には着く計算だ。なぜそんなに差が出るか。それは、私たちの移動ペースが他の人に比べて遅いからだろう。ぺちゃくちゃ喋りながらゆっくり進んでいれば、到着するのも遅くなるというものだ。徒歩だし。
「ですね。干し肉もイケますが、温かいスープと柔らかいパンが恋しいです」
「うむ。というか、お前らは料理が出来ないのか?」
「料理は作ってくれる人が居るので」
「私は、一応は貴族ですので」
「はぁ。そうか、ミルアは貴族だったか」
「は、はい。でも、俗に零細貴族と呼ばれるほどの、何の力も持たない貴族です」
「そう、か。だろうな」
貴族が騎士訓練生になっているという事は、一般的にそういう理解になってるということだね。よくある話だ。
「ミルアはともかく、ナツキはなんだ」
「なんだとは」
「恋人でもいるのか?」
「はあ?」
おもわず、はあ?と言ってしまった。あまりにも、脈絡のない単語が出てきたから。仕方なくない?だって、急に恋人でもいるのかって聞かれたんだから。
「いや、料理を作ってくれる人が居るというのは、そういう事かとな」
「いえ、同性の世話焼きです」
「そう、か。なんか、すまん」
「いえ、謝罪は必要ありません」
謝らないでよ。何故だかわからないけど、謝られるととても心が痛くなる。いや、恋人とか必要ないし。私は剣に生きるんだし。作れないんじゃなくて作らないんだし。だいたい、私今女だし。女の恋人を作るって?むりだし。一生独身でもいいし!剣に生きるんだし!
「おすすめの店があります」
静かで、美味しい食事と紅茶、コーヒーが出てくる雰囲気のいい店。心地よく、スイーツを味わえる。最近お気に入りのお店だ。良い感じの雰囲気なので、男性でも問題ないと思う。




