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3話 陛下、敬っても良いですか?





「さぁ、お乗りください。」


綺麗な動作で俺に乗るように誘導する、執事っぽいいでたちの男。


「あ、ああ。......あの、一応聞いとくんだけど、けしかけようってわけじゃないよね?」

「はい?」


この反応からして、ふざけているんじゃ無ければ、惚けているんじゃ無ければ、乗れってことなんだろうなぁ。でもさぁ。これはちょっと、けしかけてるようにしか見えないっていうか。え?くだらないことで悩んでないでさっさと乗れって?......くだらないこと。これがくだらないことって、そりゃないだろう!だって、乗れって言われてるけど、明らかにウルフでしかもビッグなサイズのウルフだぜ!?そりゃ警戒するってもんよ。だって、夜中ずっと正体不明の獣に唸り声挙げられてたんだから!


「おい。つべこべ言ってないで早く乗れ。持ち運びがらくちんになるようにコンパクトサイズにしてやってもいいんだぞ?」

「はいはい、ご親切にどうも。......そんなにコンパクトにしたら、量が多くて運べるわけねぇだろうが。バカか。」

「なっ......!なんだと、この人間が!」

「俺にとって【人間】は悪口になりえませ~んべろべろべ~」

「こっ......この野郎!叩ききってくれる!」


は~あ。これだから頭が悪い巨乳は。こういう事があるから俺は貧乳好きなんだよ。大体、幼馴染のアイツも巨乳だし。っていうか、貧乳好きはロリコンみたいなのやめろよ。おかしいでしょ!?巨乳よりも美乳の貧乳の方が良いだろ!?巨乳過ぎて形が崩れてるなら、貧乳で形がいい方が良いだろ!?常識的に考えて!大きすぎて若干垂れてたり、輪が大きかったりとかもうわけわからんから。ツンとした美乳が一番いいに決まってる!!貧乳こそが至高!貧乳最高!!!!......ふぅ。少し熱くなり過ぎたか。


こういうのって、主人公だったらつい口に出しちゃったりしててヒロインに引かれたりするんだよね。ま、この場にヒロインが居ないから轢かれよう無いんだけど。そもそも絶対に口に出したくないし。


「ふっ。真の主人公はこんな状況でも恐れないのだ。」

「......足が震えているぞ?」


ぐぬっ......。小癪な小娘が。オオカミ乗ったことないし、なんだか乗りづらいんだもん。......俺が魔法を覚えた暁には魔法の練習の的にしてやる。あと貧乳にしてやる。貧乳にする魔法か。ふむ。研究、開発の必要がありそうだ。


「俺が強くなったらお前なんてちょいちょいのちょちょちょいだからな。覚悟しろよ?」

「ちょいが無駄に多い!」


そういえば、今更すぎではあるけど言葉は通じるんだな。通じなかったらどうしようかと思ってたけど、心配は杞憂だったみたいだ。


「ご覧ください。あの看板......そろそろ魔王国に到着するようです。」

「あー......済まないが、俺、文字が読めないんだ。馬車に轢かれたときに記憶のほとんどを失ってな。」

「......本当なのか?」

「それは......教育も困難を極めますね」

「違う国の言葉なら書けるから、要領をつかめば早いと思う」


俺は一応日本語も英語も韓国語も書けるからね。エッヘン。まぁね、コツがあるんですよ。っていうのも、それを日常的に目にした方が習得は早いから、本でも貸してもらおうかね。


「そうか。もう少しで魔王国に到着するぞ。」

「ああ、済まない。俺のせいで面倒なことになってしまって。どうせ、あんなところにいたんだ。何か用事があったんだろう?」

「ええ。少し調査がありまして。ですが、おそらくそれも同時に果たせたと思います。」


用事を果たした?俺に会う前に何かやっていたのだろうか?そういえば、女の方に遭遇した時に執事の方はいなかった。あの時に何かやっていたのだろう。


「......随分と態度が良いじゃないか。良い心掛けだ。」

「......扱いが良い方には自然と態度は柔らかくなるわ。つまりはお前に対しては態度は悪いまま~」

「こっ......この野郎!」

「おいおい、女なのにこの野郎とか使っちゃっていいのかよ?普段から女っぽくしていないと、女剣士の利点が一つ減るぜ?」

「女剣士の利点?」


お。気になります?女剣士の利点って言ったら一つしかないだろ?剣士なら敵地に潜り込むこともあるだろう。あんのか?まぁいい。つまりは、そういう事だ。


「敵地に潜り込み、バカな将軍やら軍師やらを誘惑して、情報を盗む。今は戦時中なんだろ?ならなりふり構ってる暇はねー。それに、お前は無駄に美形だからな。敵の飲み物に自白剤やら幻覚剤を混ぜ込めば、本番・・に持ち込まれる前に何とかすることができる。薬を仕込むなんて、お前には楽勝だろ?無駄に美形だし。」

「無駄に美形とか言うな!......お前、いったい何者だ?幻覚剤も自白剤も、かなり貴重なものだぞ?知っているのも一部の研究者のみだ。」

「俺は、魔王国を戦争に勝たすべく派遣された厄介者ってところか。どうやらお前らの様子を見るに、魔族は野蛮ってワケでもなさそうだしな」


何てあほなことを言ってみる。......なんだよ。本当かもしれないだろ?この世界の神みたいな人が、魔帝国の勝利を願って俺を派遣したのかもしれないだろ?


「ふ、バカを言え。だとしたら、こんなやつを派遣したものはよっぽど目が悪いんだろう。......こんなやつを送ってくるなんて。」

「こんなやつこんなやつ言うんじゃねーよ。これだから頭の悪い巨乳は。頭に行くべき栄養が、胸に行ってんじゃねーの?」

「な、何を言うんだ貴様は!私はちゃんと座学の成績もいいんだぞ!」

「座学の成績が良くても、実際のところ頭がいいかって言うとそうでもなかったりするからなぁ。応用もあるけど、大抵は暗記じゃねーか。」

「機構学の成績もいいんだぞ!」

「頭の良さ関係ねーじゃねーか。そんなの手順やら基礎やら覚えれば誰にだってできるわい」


別に、機構に関する方々をバカにしているのではない。あくまで、頭のよさとは関係ないってことを主張したいだけなんだ。うん。手の器用さは必須だと思うし、細かい作業だから目が良くなきゃできないだろう。でも、こんなやつを認めるのは嫌だ。第一、性格が良くなければ認めたくねーんだよ。


「......ふん。貴様にいわれたくないんだが。お前は今のところ、不法入国の文字を読めない役立たずなんだぞ?この場で首をはねられても問題ないほど貴様は怪しいんだぞ?」

「この場でって......お前、今誰の騎獣にのってっか忘れてないよな?」

「くっ......物のたとえの話だ!」


いや、お前今くっ......!って言ってるからね?その後に続いていいのは、『ころせ!』か『うるさいっ!』とかそういう系統の言葉しか入んねーんだよ。そんな解りきってることを言っても仕方ねーんだよなあ。え?知ってるならなんで聞いたのかって?そりゃおめー、『くっ、ころせ!』を聞きたいからだろうが。


「よし、見えてきたな。アレが陛下が納める王国都市、【魔王国・アルカディア】だ。」

「アルカディアか。でけぇな。」


当然と言っちゃ当然なのだが、王国都市は......この大陸全土を統治する国。デカくないはずはない。ニンゲンとの付き合いがないなら、必然、自給自足になるはず。って言っても、街やら村やらから輸入......というか購入して運搬してくるんだろうが。


「この大陸を支配し、統治する魔王様は、それはそれは素晴らしい方なのだ!!」

「解ってる解ってる。だって、こんな作法がなってない無礼者を生かしておくくらいなんだからな。」

「こっ......コイツ!言わせておけば!」

「ふん。何か間違ったことを言ったか?だって、こいつは陛下のおそばに仕える者なんだろう?だったら、陛下の品格が疑われる人物を傍にはおいておかないはずだ。まだそばに置いていて生かしているなら、素晴らしい人物に違いない!」


俺の身を保護して、さらに衣食住を保証してくれて、しかも勉強までさせてくれるって言うんだろ?しかも、戦術指南もうけさせてくれるって言うじゃないか。最高だ。良い人じゃないはずがない!充分崇拝するに値する方だというのは解る。


ああ、どんなにすばらしいお方なのだろうか!腕も振動で痛むし、早くお目にかかりたい!










「うっ......なんだか寒気が。」







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