36話 誰のせいだ誰のせいだ誰のせいだ
タイトルって、そんなに考えることじゃないのかもしれないなぁ。
言い訳じゃないよ。本当に思ってるよ
本編いってみやしょう!
「......ミルア」
ミルアが静かになってから何時間経っただろう?一時間?二時間?三時間?いや、辺りがまっくらになっていることを考えると、もう十二時間以上経過してしまっているようだ。気付けば、辺りが少し臭い。何か、かいだことの無いような臭いが......何から臭ってるんだろう?
「ミルア」
ミルアの容態が安定してから、十二時間以上も私は何をしてたんだっけ?私が何をしていたかは思い出せないけど、ミルアの体調はすっかり良くなったみたいで、熟睡してるのか、寝息すらも聞こえない。
「ミルア、そろそろ森を出てアルカディアに戻ろう?きっと、リーナ達も心配してるから」
「......」
ミルアを起こすと、後ろから抱き着く。......わかってる。解ってる。分かってる。ワカッテル。自分が、無意味なことをしてることくらい、解ってる。じゃあ、みんなはどうするの?ともだちが、自分のせいで友達が冷たくなってるときに、どうすればいいかわかるの?
「なんで......だろうね?」
「......」
「なんでこんなことになっちゃったんだろうね」
「......」
「何の、せいなんだろうね?」
「......」
「クモのせい?洞窟のせい?クリスタルピールのせい?依頼主のせい?信用ある冒険記録書のせい?それの、増版をした人のせい?ミルアが、見つけちゃったせい?」
「......」
「......私のせい。私のせいなんだよ、ミルア。私のせいでミルアが死んで、私は生き残るなんて、許されないよね」
「......」
「ううん、ごめん。嘘ついた。私、耐えられない。こんなことになっちゃって、重い責任を背負い続けて生きるなんて、つらすぎるよ」
返事が返ってくるはずのない、冷たく、硬直したミルアに問いかける。なぜ?一体なぜ?意味のない問いを繰り返す。もしかしたら、これはミルアに問うているのではないのかもしれない。もしかしたら、私は、心の底で、自分に問いかけているのかもしれない。
「......」
「ミルア、実はね、私人間なんだ。ミルアに、血を分けてたら死ななくてすんでたんだよ。くだらないよね。秘密がバレるのが怖くて、ミルアに嫌われるのが怖くて、できなかったんだよ」
「......」
夢で見たように、起き上がって罵倒してくるかとも思ったが、そんなはずはなく、だらりと私にもたれかかったままだ。いや、いっそのこと起き上がって罵倒して、絶交を言い渡してくれた方が気が楽だったかもしれない。なぜなら、次の瞬間我慢の限界に達した私、ナツキの頭はプッツンと来てしまったからだ。
「何で死んじゃったの、ミルア!いやだよ!しなないで!いやだいやだ!だれなの!?誰がミルアを殺したの!?ゴーレムを作ったのは誰!?何のためにこんなひどいことをするの!?ねえ、誰か答えてよ!!!だれか、答えてよ!なんで......なんで、血清がないの?ロストルーンって何?なんで、全部封印しちゃったの!?なんで、封印されてるはずのルーンでゴーレムが作られてるの!?誰が殺した!ミルアを殺したのは誰だ!?死んでよ......ミルアを殺した奴は死ね!!!!」
私だ。私だ。私のせいだ。私の甘い推理と判断がミルアを殺した。私の、くだらない不安感とプライドがミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私がミルアを殺した。私のせいだ。私が殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した......私がミルアを殺した?
今まで、迷宮に捕らわれていた思考がクリアに晴れた感覚を覚える。解り切って、ずっと頭の中で考えてたことだから、気付かなかった。そうか、私がミルアを殺したんじゃないか。私の愚かとしか言えない判断で、ミルアを殺した。くだらない秘密を守って、ミルアを殺した。ミルアを殺すようなヤツは死ぬべきだ。
「ミルアは、優しいから怒るだろうなぁ。きっと、天国へ行ったらまずぶん殴られるだろうなぁ。」
「......」
もちろん、冷たく硬直してしまったミルアは、返事を返さないが。私には、ミルアの口元が微かに動いたのを見た。口角が、わずかばかり......上がったのが。
「今行くね、ミルア」
腰に携えられた剣を、ゆっくりと時間をかけて抜く。鞘と剣がふれあい、こすれる音が不気味に響く。......おもえば、私とミルアはこの鞘と剣のような関係だったなぁ。会えばいつも、喧嘩が多かった。近づきあえば、こすれあって歪な音が立つ。でも、周りからは良いコンビとか言われたり。この、鞘と剣がこすれる音、私好きなんだ。なんか、素敵じゃない?二つの物が擦れ合って、音を奏でるって。しかも、気持ちのいい音だし。
「......不思議だな。全然怖くないや」
ゆっくりと時間をかけて抜き放った、剣の剣先を自分ののどに向け、ため息をつく。何故だろう。全然、全く、恐怖が感じられない。でも、悲しい。ミルアと、この世界でもっと、冒険したかった。それなのに......天国って、楽しいのかな?なにもない、真っ白な世界なのかな?ううん、きっと、ここよりもたのしいところだ。不思議なものがたくさんあって、楽しい所だ。......そっちいったら、いろんなところを冒険しようね。
ヒュッ......!ブシュゥッッッ......
「ツキ、ツキ!?ナツキ、しっかりして!」
聞き覚えのある声。もしかして、着いたのかもしれない。天国と言うヤツに。辺りを見回すと、一面真っ白だ。ミルアの姿も見えない。これが天国か。......ざんねんだなぁ。これじゃ、一緒に冒険も何もできないじゃん。
「ああ、ミルア何処にいるの?」
「大丈夫?目が見えてないの?怪我がまだ治ってないのかな......」
「大丈夫だよ。いくらケガしても、ここじゃ死なないでしょ?」
「......何言ってるの?ほんとに大丈夫?」
「ここ、天国なんだから」
天国......かぁ。ここでも、なにか仕事をしなければならないのだろうか?っていうか、すっごい真っ白なんだけど。これじゃあ、何も見えないじゃん。
「天国?......ナツキ、私生きてる」
「生き......てる?」
なんだって?ラブコメの鈍感系主人公ではないが、瞬時にそんなセリフが思いついてしまった。でも、確かにミルアは冷たくなっていて......死後硬直もしてて......あ......。目の前の白い靄が消えて、見慣れた顔が現れた。その顔は、何処か心配そうな顔をしてて、何処か困ってて、どこか嬉しそうだった、
「ミルア......みるあぁ......」
うわぁっ!今まで、ため込んでいたものが一気に放出される感覚。顔が熱くなり、胸の中も厚くなり、鼻がツーンとして、目の前が何も見えなくなる。
「みるあぁ、みるあぁ、みうあぁぁ!」
「よし、よし。ごめんね、心配かけて。本当にごめん」
「ごわがったよぉ......ミルアが、死んじゃうかもって......」
「私は、ここにいるよ。死んだりしないよ。」
「うぁぁぁあん!みうあぁぁあ!みる‟あ‟ぁ......」
「よしよし......」
ひとしきり泣いた後、私は泣き止んだ。ほんとはもっと泣きたかったし、もっといろいろ話したいことがある。だけど、純粋に疑問が勝った。たしかに、ミルアの息は止まっていたし、ミルアは冷たく硬直していたはずだ。異臭も少ししていたし......。
「でも、なんで?ミルア、息が......」
「それはね......」




