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29話 奇妙な現象なんだが

今回の話は、一見適当で良く解らない物ですが、適当で良く解らない物です。

ですが、この現象は主人公の秘密に関係する物だったりします。





「もう本は良いんだけどさ......」

「ん?どうしたのナツキ」

「いや、ね............」

「うん?」

「まだ着かないの?」

「......」

「......」

「......」

「......」


カッカッカッカッ。洞窟の中に、下たる水音と反響する足音がこだまする。それだけが。私、ナツキが投げかけた質問の答えは待っても帰ってくることはなく、帰ってくるのは響く水音と靴音、そして洞窟を通り抜ける風の音。


「あの......」

「どうしたミルア?」

「実は......迷ったっぽい」


暫くして静寂を破ったのは、恐ろしい魔物の聲でも開けた洞窟の奥に見えた、神秘の絶景に感銘を受けて発せられたため息でもなく、気まずそうに発せられたミルアの声だった。


「人生に?」

「そんな深い話してないよ!?」

「え?この状況で何に迷うんだよ」

「道にだよ!解ってるだろ!道に迷ってんだよ!」

「やだ、この子なに逆切れしちゃってるの?怖いんですけどー」

「だって、解るでしょ!?」

「いや、解るけど。仕方ないじゃん。もう、二時間くらいたつよ?」

「多分三時間はたつかと......」

「あれ、もうそんなに経つっけ?結構話が楽しかったから、短く感じたなぁ。一時間分だけだけど」

「うっ。」


一時間が三十分に思えることはあるよ。でも、さすがに時間が短すぎた。いやだって、暗い中で三時間ずっと進み続けてるんだよ?分岐点でも自信満々で『私に任せて!全部覚えてるから!』とか言ってたんだぜ。そんな自信満々に言ってたんなら、信じるってもんでしょ!


「あんな自信満々に言ったら信じるよ。俺はあんなに信じてたって言うのに、これだよ。任せてっキランっ!って感じで自信満々に言うからさあ」

「ううっ。本当にごめんなさい......」

「いや、それは良いんだけどさ」

「うう、ありがとう」

「いや、それは虎雷亭ね」

「え‟」


虎雷亭と言うのは、王都に存在するおいしい料亭の事だ。日本食に似たような食事が出てくるので、とても気に入ってる。だけど、そんなお店が安いはずもなく。王都で一二を争うほどの高級食事店なのだ。


「それは良いんだけどさ、これ、どうすればいいの?」

「え?」

「これだよ、この状況。今、私たち何処にいるの?」


見渡す限りの岩壁。したたり落ちる水滴。反響する声。洞窟に響く風の通る音。暗闇。カンテラが周りを小さく照らす。自分たちの影がゆらゆらと揺れ、不気味に踊る。


「うっ。なんか、急に怖くなってきた」

「いや、怖くなってきたとかじゃなくて、はよ道を」

「解んないよぉ」

「どうすんだよぉ」

「わかんないよぉ」


マジでどうすればいいんだこの状況。現在地も何もはっきりとわからないし......


バサバサッ!キュイキュイキュイ!!!


「いぎっ!?」

「きゃぁっ!」


何の声だ......?怖すぎて無意識のうちにミルアと抱き合っていた俺は、考えを巡らせる。洞窟の中で有翼生物?鳥......コウモリ?なんだ、ただのコウモリか。


「なななななな何今の音!?」

「大丈夫、ただのコウモリだよ」

「あ、そそ、そうなの......」


安心した、というように、胸をなでおろすミルア。


「あ、あの......」

「ん?まだ不安なのか?まだ抱き着いててもいいんだぞ?」

「いや、ちがっ、離して......っ」

「パニックになってるのか。大丈夫大丈夫、怖くな~い怖くな~い」

「パニックはナツキでしょ!?放せって、オラ!」


ゲシッ!本気で振り抜かれた足が、脛に直撃。怪力が自慢の吸血鬼に本気で脛を攻撃されたら、【防御力に定評のあるナツキさん】でも、さすがに痛い。痛すぎて、悲鳴を上げる。


「きゅぎごむっ!?!?!?」

「いっ!?変な声出さないでよナツキ!!!」

「お前が蹴ってきたからだろ!?」

「アンタがいつまでたってもしがみついたまま離れないからよ!」

「やめてぇ!怖いの!止めてぇ!」


ボォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!


「キャァアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?」

「ナツキ!?これ、空洞音!」


なに?立派でダンディで紳士的なこの俺が、女子にしがみついたまま離れないって?ふっ、そんな馬鹿な。私はそんなセクハラめいたことをするほど馬鹿じゃないさ。今のご時世、ちょっと下ネタを言っただけでもセクハラ認定を受けてしまうからね。紳士としては、慎重に行動をしないと社会的な地位が危ういのだよ。


「何ブツブツ言ってるの、ナツキ?」

「はは、はは。真なる紳士はこんな状況でも臆さず女子を護るものだ。食らえ化物め!」

「あんた、今の状況解ってる?女の子にしがみついて引きずられてるのよ?っていうか、何処に化物なんか居るのよ。現実逃避してんじゃないわよ。」


暗黒に包まれし洞穴を、迷いながらも一歩、また一歩と確実に進んでいく紳士一行。しかし、目の前に立ちはだかったのは、そこが見えぬような圧倒的な谷。いや、谷と表現するにはあまりにも高すぎて、そして、下は見えなかった。それは、まさしく【深淵】。ギリシャにおける、タルタロス。奈落。この広い洞穴の中で、小さなカンテラは心細かった。それ故、紳士がそれに気づいたのは奇跡だったと言えるだろう。


「まだブツブツ言ってるの、ナツキ?っていうか、深淵って何よ。ふっ。」


『紳士は、間一髪というタイミングでその深淵に気が付いた。なんの因果か運命か、縦に空いた大穴が道を分断してしまっていたのだ。一体、何が起こればこのような大穴が出来上がるのか。紳士には理解できなかったが、それは今はどうでもいい。問題は、後ろから近づく気配から逃れる方法が無くなってしまったという事だ。この大穴は、飛び越えるにはいささか大きすぎる。』


『吸血鬼のミルア嬢が血を取り込み、真なる力をもってすれば容易ではあろうが、ここに人間は存在しなかった。しかし......いや、待てよ。いや、だが......自分が秘密を明かすべきか。紳士が迷っている間にも、背後から近づく気配は刻一刻と迫ってくる。』


「え、ちょっと待って。これ、何?」

『ミルア嬢は紳士の言葉を信じていなかったが、その光景を目前にし、硬直する。』


何故なら、真実だとは思っていなかったからだ。では、この状況が真実だったとしたら、次に何が起こりうるだろうか?......そう、起こることはただ一つ。


ギュルゴエィァアアアアアア!!!!


近づく気配。背後から音もなく近づいていた気配がついに姿を現す。全長は優に三メートルを超し、八本の足が気味の悪い音を立てながら蠢き、近づいてくる。赤く不気味に輝く瞳は二つだけではなく、十......いや、十六はあろうか。


「ちょ、ナツキナツキ!キモイキモイキモイキモイキモイ!!!!!!!」

「う、痛て。痛てて。痛てっ。......うん?俺は何を?」


キモイって!なんだよ!唐突に失礼だな!もう!うん......?


「にゅん?」

「ナツキぃ」

「え」

「....?」

「キモイぃいいいいいいいいいいいい!!!!え、ちょっと待って何この状況!?どういう事だこの状況!?え、ちょまっ!くぁwせdrftgyふじこlp;!!!!????」


目が覚めたら目の前に巨大蜘蛛が居ましたってか!?何だこの状況!!!俺は、虫だけはほんとに無理なんだよ!!昔小学生時代にゴキブリが出た時にも『キャー!助けてミツアキくぅん♡』っていわれたけど、その可愛い女の子の後ろに隠れたからね俺!?すっごいいい笑顔で!


「ナツキ、アンタさっきからブツブツ言ってたけど、これの事何か知ってたんじゃないの!?」

「はぁ!?なんで俺がこんな気持ちの悪い生命体のことを知ってんだよおかしいだろ!?知るわけないだろこんな気持ちの悪い生物!!!!!」

「じゃあ何でさっき......」

「え!?」


カタカタカタカタカタカタカタカタ......キチキチキチキチキチ......


「......」

「......」

「今は良いから、とにかく逃げましょ」

「賛成」






前書きで言ったことは間違いではないのですが、それが変なように見えてしまうということは、文章能力が少ないという事なんでしょうね。(´;ω;`)

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