25話 女子がいつも話してるイメージのあるやつ。
男子女子分け隔てなく仲が良かった男性諸君なら、一度は経験したことがあると思われる現象、【俺が居るのに恋バナ】。
キツイですよね......あれ。マジで何を話したらいいかわからないので、マネキンになっちゃうんですよね。
本編参ります!
これは悪い雰囲気だぞ。わたくしナツキは、ダンジョンに通じるという洞窟の一本道で危機感を感じていた。と、言うのも。今、ここには二人、俺ナツキとミルアの二人っきりという状況だ。女の子二人。はたから見れば普通の女の子二人だろう。だが。
(うわ~めちゃくちゃ気まずい!最近リーナ以外の女の子と二人っきりになるなんてこと、全然無かったからなぁ。更衣室で話すことはあっても、ほら、あれは周りが騒がしいじゃん?そういう話やすい雰囲気っていうの?そういうのあるからさぁ。)
そう言うワケだ。はたから見ればほほえましいピクニックみたいなものなんだろうけど、俺から言わせてもらえば、この状況はまずいわけだ。なんせ、女子と二人っきりだぜ?この『女子と二人っきり』という字面だけでヤバいってわかるだろ?俺は見た目だけなんだよ!いわば偽物!見た目は乙女、心は紳士!でも、俺が言いたいのはそういう事じゃない。そう、そういう事じゃないんだ。こういう空いている時間に女子同士でいると何が起こるか。
「あのさぁ~ナツキって今気になる子とかいる?」
地獄だ。女子は時間さえあればコイバナをしたがるお年頃なのだ。それは二十歳を超えても例外ではなく、女子という生物は四十歳半ば......つまりは行き遅れさえも結婚し終える時期になるまで、そういう話は絶えないのだ。
「え?ええ?私は居ないぞ?」
まぁ、こうなるだろうと予想はしていた。というかなぜ予想をしていたのにまともな回答を用意しておかなかったんだ俺!
「うっそだぁ!私はねー......」
まず、一段階目は成功か。ん?なにをそんなに焦ってるかって?いや、コイバナに参戦したことのある男子ならわかる。あの空間は地獄だ。いや、情報収集の場としては、これほどまでに良い場所は無いんだよ?でもね、『俺はこの空間にいていいんだろうか』っておもうと、一気に額に冷や汗がね......。そう、コイバナに参戦した男子は、いかに自分への話題をそらせるかに集中する。真のコミュ上手は暴露して雰囲気をよくするんだろうけど、俺たちはそうはいかない。
「私はー居ないかなぁ。みんな子供っぽくって」
最悪だ。これだよ。これこそが最悪なコイバナのテンプレだよ。話を振ってくるのに自分はなんとも......って。つか子供っぽいってなんだよ。そこが良いんじゃん。若いときは若いなりの良さがあるんでねーの?で、どうせまた......
「なつきは~?」
「いやだから私は居ないって」
ね?言ったでしょ?俺に戻ってくるわけよ。話題は俺に帰ってくるわけよ。二人しかいないから!だからさっきから二人の状況を嘆いてたの!だが、これには素敵な回避方法がある。そう、必ずこれで回避できる。いわば必殺だ。必殺!
「そういえば、ミルアは他の子のそういうこと知らないの?」
「えー?」
これだよ!【必殺 身代わりの術】☆4モンスター【訓練所の仲間】を墓地に置くことで、自分に対しての攻撃を回避する。体感成功率約72%の技だ。ゲスイなぁ。最低と言わざるを得ないよね。身代わりって言うね。トーク力とかじゃないから。結局は身代わり。うん、最低すぎる!
「そういえばシースが、好きな子いるとか言ってたなぁ」
「え?それ、ほんと!?」
自分に話が来るのは嫌だが、他の人の話は大好きである。シースって、あのすっごい凛とした黒髪ベリーショートの『私には剣しかない』とか『くっ!私の体は自由にできても、心は自由には出来ないぞ!』とか言いそうなあの!?マジか!!!!テンション上がって来たぁ!!!!!!しかも、あの見た目でサキュバスなんだぜ!?やべーって!ギャップ萌え~!いつもザ・サキュバスみたいな子と一緒にいるんだけど、その【ザ・サキュバス】がなにやら耳打ちしてシースが真っ赤になる様子はいつ見ても笑顔が浮かんでくるというか、ほほえましいというか!で、その子がだれを好きだって!?ほれ、おじさんに言ってみんしゃい!
「で、誰が好きだって!?おじさんに言ってみんしゃい!」
「ナツキ......おじさんてアンタ女の子でしょ?」
「そんなのは今はどうでもいいんだよ!で、続きを!」
「あ、シースね。うん。......えと、ほら。アンタとよくつるんでるゼルド?」
何でそこでゼルドが出てくる?まぁそんな事はどうでもいいや。さっさと次々!
「シースはゼルドっちのことが気になってるらしいわよ」
「は?」
????????
「いやだから、シースはゼルドが好きなんだって」
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「ナツキ?おーいナツキ――――――?帰ってこーい」
「は。は?はぁ!?ゼルドを!?なんで!どうして!あーダメだちょっと待って!!!」
あー頭の中の疑問符がまだ削除しきれてない。......だめだ。理由を聞くまでは削除のペースより生み出されるペースの方が早い。
「なんで!?」
「え、ええとね、確か......見た目が」
「ほぇえ!?あんな純粋そうで純朴そうでこの世の汚いことは何も知らない!私は剣に生きる!みたいな顔してるくせに、顔なの!?結局顔なの!?」
純粋な人は、タイプを聞かれたら『優しくて面白い人、かな///』って言うんじゃないの!?まじか。顔ですか......なーんて、当然だよなぁ。『結局顔だろ』とか言ってる男は自分に自信がないか童貞くんなだけだ。顔で選ぶなんて当然。ま、俺は性格を一番に気にするけどね。......ただ、ゼルドに春が訪れそうな雰囲気が気に喰わないだけだ。
「やっぱり。」
「何が?」
む?やっぱり?......うわ、なんかこれ。嫌な予感がひしひし......。
「やっぱりナツキってゼルドが好きなんでしょ?」
「?」
「いやアンタなんて顔するのよ......」
「ごめんちょっと待って。......何を言ってるの?」
「何って、アンタゼルドのこと好きなんでしょ?」
「や、だから......なんで?気持ち悪いこと言わないでよ」
「えぇ?違った?」
違うぜ。そこだけ違ってるわけじゃないぜ。何一つとしてあってないぜ?全部間違ってるからね?ぎゃくに何かあってたら困るよ。ベーコンレタスになっちゃうからね?
「だって、ナツキっていっつもゼルドとつるんでるし、仲も良さげだし......一緒にいたずらもしてるし。」
「あれは!あれは......」
「あれは......?」
「ゼルドに......秘密を握られてるとしか」
「何それ!面白そう!」
うん、間違ったことは言ってないぞ。何一つ間違ったことは言ってない。そう、間違ったことは言ってないんだ。でも、なんで今こんなことを言った、俺?言わなくていいんじゃないか?......これが噂の『雰囲気に流されて言っちゃうやつ』かぁ。確かに、これは『言え』の雰囲気が無いとは言い切れないなぁ。メンドクセ。
「秘密って何!?すっごい面白そうなんだけど!」
「あのね、秘密ってのは人に言えないから秘密なのであってね」
「ちっ」
「おい」
何の舌打ちだよ。まさか、言えの雰囲気にまた流されるとでも?フッ。甘いな。相手はこの『駆け引きではあまり負けたことが無いと定評のあるナツキさん』だぜ?......うそです。今考えました。
「いい?この秘密は本当に知らない方が良い秘密だから、言わないの」
「まぁ、知られたくはないでしょうね。秘密だし。」
「そういう問題_____でもあるか。知られたくはないな。」
「?」
俺が男でした何で言ったら、ミルアは何て言うんだろうなぁ。今まで一緒に更衣室で着替えたりしたわけだし、一緒にシャワーで流しっことかも普通にする。いわば友達だ。気を許してすべてをさらけ出して(いろんな意味で)見せてた友達が男だなんて知ったら、俺だったら最悪だね。
「まぁ、お互いのためにも知らない方が無難って事だね」
「そうかぁ。私の事は信用できないかぁ」
「いつかは言うよ」
いつか。いつかは言わなきゃならないんだろうなぁ。......今からでも想像すると怖い。打ち明けた時どんな攻撃が飛んでくるか。考えただけでも......こっわ。
「期待しないで待ってまーす」
「別に待ってなくても良いんだよ?」
「えーどういう意味よ~」
「いや~恥ずかしいというか、恥ずか死っていうか?」
「ハズカシ?」
恥ずかしい&死って言うか......恥ずかしいって感じる前に死って言うか......。まぁ、いつかは言わなきゃならないんだ。いつ殺られてもいいように、覚悟だけは決めておこう。シニタクナイヨゥガクガクブルブル......




