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21話 夏だ!夏だからその....えーと....うぇーい!!!

夏と言えば。そう質問されると、スイカ!とか、海!とか、山!とか、川!などなど。人それぞれの回答が聞けると思います。え?私?......私が思う『夏』とは。


私は、その難しい......人類が抱える謎多き問いを一言にまとめることに成功しました。

『夏』とは......夢。

夏とは、人によって違うものが見える......つまり、夢のようなものなのです。

夏の持つ多様性は、時に人を大きく惑わします。


それが、課題の提出期限の超過だったり、思い切ってナンパからの玉砕だったり。

はたまた、はしゃぎすぎて怪我をするかも。


『夏』とは人生の中で人が最も熱くなれる、夢のような時間なのかもしれませんね。




あ、因みに私は夏がキライです。






母さん......か。もう四か月と半月くらい会って無いんだよな。こっちと地球の時間の流れが同じとは限らないから、もっと経ってるかもしれないのか。宿屋のベッドに寝転がりながらあの人のことを思い出す。


「母さん......心配してるのかな?......轢かれて気付いたらこの世界に居たけど、向こうでは死んでるって言う扱いになってるのかもな......死んでたとしたら、悲しんでくれたかな?」


もう答えの分かってる疑問を声に出して呟いてみる。あの人が俺の死で悲しむ?......無理だ。それは無理だ。きっとあの人はこう言うだろう。『期待外れね』正直、期待されていたのかすら怪しい。俺は、タダの道具だったんだ。思い通りにいかない出来損ないの道具。


「あー、だめだだめだ!考えるな考えるな考えるな。落ち着け落ち着け落ち着け。僕は死んだ僕は死んだ僕は死んだ!」


ネガティブな思考に覆いつくされかけた脳内を、叫ぶことで一掃する。......そう。僕は死んだ。あの、進路希望調査の日に。弱気な僕はしんで、俺に生まれ変わった。ネガティブで操られてた人形の僕は死んだ。自ら進んで考え、周囲に流されない俺に生まれ変わったんだ。


「ふーっ。大丈夫だ。大丈夫......くそっ!最近全然無かったから治ったと思ってたのに」


あの人を思い出すと、酷い動悸と頭痛、不安感に襲われる。最近は収まってきていたんだけど、まさか再発するなんて......。軽い頭痛と動悸なら問題ない......というわけにもいかない。これがもし会話中じゃなくて戦闘中に起こっていたら?大きな隙ができることは間違いなく、そこを狙われて大きな攻撃を受けるかもしれない。


「どうすりゃいいんだよ......」


リーナに秘密にしていることの一つ、母親に対する恐怖と自分に対する劣等感。こればかりはリーナに相談しても困惑させるだけだと思ったから秘密にしておいた。


「とりあえず風呂に入って早い所休もう。明日も訓練が入ってるからな」







「おーいナツキー?ボケっとしてどうした?」

「あ?ああ、うん。」

「それに、目の下のクマ。昨日まともに寝れてないんだろ?」

「......するどいな。ほぼ寝れてないよ。ちょっと考え過ぎてというかまぁ、色々あってなぁ」

「そうか。深くは追及しないが、良く休まないと体に毒だぞ」

「解かってる」

「そうか。なら良いんだけどな」


まだ少し納得のいかない様子で返事をするゼルド。ま、言わんとすることは解る。俺のせいで心配かけてるって言うのも理解できる。だが、自分の体調管理には自信があるぜぃ!そこんところは任せてくれって言うワケだぜぃ!!!


「安心しろ。俺だって死にたいわけじゃないさ。ちゃーんと体調管理するよ。」

「そうだよな。よし、このままじゃ教官たちに怒られちまう!訓練訓練!」

「よっしゃ、任せろ!本気で行くぞ!」

「かかって来い、ナツキぃ!」


「この......バカ者どもめ!もう少し静かに出来ないのか!!!」

「「っす、すみませぇえええええん!!!!」」





「お前ら......ちょっとは学習しろよ。毎回馬鹿みたいに叱られて。お前のお陰で二百三十七期訓練生はみんなポンコツだって言われてんだぞ?」


俺は今、男子更衣室でグレンダ......グレンに叱られていた。仕方ないか。毎回俺らが怒られるせいで訓練時間が少し伸びるんだから。いや、ナツキが怒られるせいで。

 

「す、すまん。でも、俺のせいじゃなくて、全部ナツキのせいだぞ!」

「あのなぁ。まあ、確かにどっちもどっちって言う感じだが、お前も大概だぞ?お前から副教官を襲ういたずらを考案したこともあるとか。」

「そっ、それはなぁ。」

「それは全面的にお前が悪いんだろ?」

「いや、ナツキもノリノリだったしぃ......」

「言い訳すんなよ......大体、ナツキちゃんは女の子だろ?そんなことでノリノリになる女の子が居てたまるかって。」

「ナツキは......女の子っていうか。紳士?とは言いがたいか。」

「おいおい、女の子に対して紳士って......殴られるぞ?グーで。」


な、殴られるぞって。お前の方が失礼じゃね?殴るって。しかもグーでって。話したことない人にスゲー遠慮のない言葉ぶつけるやん。って、ぶつけられてるの俺か......。


「ナツキのことだからなぁ。もしかしたら、今俺らと同じような話してるかもな」

「んなバカな!どんな偶然だよ。」






「まったく、アンタたちのせいで私たち二百三十七期訓練生は全員アホだって言われてるのよ?」


おれ......私は今、女子更衣室で着替えながら、ミルアーデ......ミルアにめっちゃ怒られてる。まぁ、仕方ないか。毎回ゼルドのせいで少しとはいえ訓練時間が伸びているわけだからね。あれ、なんでゼルドのせいで俺まで怒られなきゃならないんだ?いや、親友の不手際は俺の不手際。


「も、申し訳ない。でも、悪いのはゼルドだ。......私は悪くない」

「アンタは......確かに、ゼルドとか言うのもとんでもない奴だって聞いてるけど、ナツキは論外じゃないの!!」

「そ、それだとまるでゼルドよりも私の方が悪いように聞こえるじゃないか!」

「ナツキの方が悪いって言ってんの!」

「ええ!?」

「ナツキは......もっとお淑やかさを身につけなよ。ゼルドっちが発案した副教官急襲作戦だっけ?アレにのっかって大暴れしたそうじゃない」

「確かにそれはそうだけどさぁ」

「なに不満そうにしてんの。大体、どこに自分の上司を背後から襲う女の子がいるのよ......」


呆れた様子でボソッとつぶやく。た、確かに。納得してしまっている自分が居る。ぐぬぬ。


「いや、世界は広いよ!?絶対いるって!何処かしかには居ることは間違いないよ!」

「居たとしても相当な変人ね。っていうか珍しいって自分で認めてるようなもんじゃん」

「たっ、確かに!?くっ、してやられたか!」

「いや、してやられたって私何もしてないから」


ぐぬぬ。本当に賢いものは直接攻撃せずとも相手を殺せる......こういう意味だったのか!なるほど、俺のHP(ヒットポイント)はもう赤ゾーンに達している!


「でも、ゼルドっちはドラゴニュートの里から追い出された人なんだよね?」

「そう聞いてるけど......」

「元老院にそんな異議申し立てできる人が、そんなくだらないことするかなぁ......」

「そこは関係ないんじゃないの?副教官殿に拾われたって言ってたし、ゼルドのヤツはきっと心の底から副教官殿を慕ってるんだよ」

「え?慕ってるって」

「慕ってなきゃ逆にあんなことできないよ。相手を信頼しきってるからこそ、素を見せられる。」

「隙を見せえられるのは信頼してる相手だけって事ね。確かに、一理あるかも」

「でも一理なんだ」

「そりゃ一理だよ。『親しき中にも礼儀あり』って言葉聞いたことないの?」

「確かに。」


きっと親しいからって調子に乗っていじり過ぎたりしたんだろうなぁ。人には絶対にいじられたくないコンプレックスみたいなのがあるから。きっとそこをいじられてこんな言葉思いついたんだろう。すっごい怒ったんだろうな。まぁ、その気持ちはわからなくもないさ。何せ、自身の塊と呼ばれている俺でさえコンプレックスはあるからね。エッヘン。


「でも、親しいからこそ、ゼルドには引き際がわかってるんだと思うんだよ」

「なるほど。それは納得できるかも。」

「でしょ?」


ふふふ。長く接していれば、その人となりが分かってくるってもんよ。そこから引き際だったり好物だったり弱点だったりをね。探していくわけなんですよ。そこがまた、楽しい。仲が良い人のことを知っていく過程が面白いんだよ。あと、把握してからからかう。おもしろい。


「そう言えば、私がゼルドとあってからもう四か月ちょっと経つんだー。時の流れは遅いようで早いようで。」

「ゼルドねぇ。そう言えば、ナツキとゼルドって似てるわよね。」

「ええ?ゼルドがぁ?......そうだねぇ。もしかしたら、今頃同じような会話してるかもね。」


と、そこで夕方の時刻を報せる鐘がなり、更衣室内にいた喋り好きの女子たちは慌てて服を着だす。ナツキも例外ではなく、慌てて着替え終わった服をたたみながら考える。


(そういえば、今日は暑かったなぁ。季節ももう少しで夏か。)


すでに日が落ちかけ、涼しくなった外気が訓練で温まった肌をなでる。暑いのは嫌だなぁ。なんてのんきなことを考えながら更衣室の扉を開けると。


「くしゅん!」


大きなくしゃみ一発。やっぱりまだちょっと肌寒いか。などと、考えて走り出す。今日はゼルドは早く帰ったはずだ。なんでかは知らないけど!


夏が、来る。知らず知らずの内に昂った感情が、歩くリズムに現れる。たったったっ。たったたったたっ。意識しないうちにスキップをしたナツキ。元の世界での癖なのか、夏と言えば海。海と言えば海水浴。海水浴と言えば出会い。何となくそんなイメージが脳内を駆け巡る。


出会い。異世界での、出会い。期待せずにはいられなかった。知らないうちにスキップをしてしまうほどナツキの脳内はお花が咲いていて、夏の魅力はすさまじかった。因みに、ナツキが今は女だったと気づくまでには約三時間ほどかかった。





夏は熱中症に気を付けてくださいね。私は......死にかけたことがあります(`・∀・´)エッヘン!!

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