17話 教官リーナ殿の性格は。
性格って恋愛をする上で最も重要なものに入ると思うんですよ。まぁ、それは私の特異な環境によるものかもしれませんが。いくらイケメンでも、性格がヤバい奴は好きにならないでしょ?
『顔は良いんだけどなぁ......』って。
性格......好きな相手に素直な態度になれないなんて人もいるかもしれません。でも、もし本気でその人のことを好きなら、過度にいじり過ぎるのはよした方が良いと思います。
......私は後悔してますから。
「あぁ......俺、結構いいことしたと思うんだけどなぁ。」
「すごい怒られてたな。」
「俺、怒られるようなことした?」
「バカだなぁ。一週間も休んだら怒るに決まってるだろ。」
訓練の組手を適当に流しながらしゃべる俺とゼルド。......怒るかなぁ。副教官の娘へプレゼントしてあげてたのに。あれ、売ったらいくらになると思う?......俺もわからないけど、多分百万アルディアくらいにはなるんじゃないか?
因みに、この大陸での一アルディアは地球での一円と同じだ。一アルディア硬貨、十アルディア硬貨、百アルディア硬貨、千、一万、十万、百万、一千万硬貨と。ここまでの硬貨が存在する。......え?一千万硬貨を偽造されたら大変なんじゃないかって?そこの所はきちんと対策されているらしく、目に見えない特別な魔法紋が刻印されていて、偽造は技術的に不可能だという。すごいの一言に尽きる。
「......昔の訓練方法を知っているか?」
「きょ、教官殿!?」
「げっ!リ、リーナ!」
「昔は根性論というものがあってだな......肉体と精神を限界まで追い込むことによって、従来の兵士とは精神的にも肉体的にも一線を画す存在を作るという論だ。」
「そ、それがなんなんです?」
「でも、あくまで昔の話だ。なぜ廃止されたと思う?」
「さ、さぁ?」
「訓練内容が非人道的なまでに体を酷使し、死亡者が激増し、志望者が激減したからだ。」
「ハハッ、シャレですか?しぼうしゃって。えへ。」
「......副教官を甘言で惑わし、訓練を一週間サボった挙句ようやく訓練を再開したと思ったら、適当にお喋りしながら流したりしやがって......死にたいのか?」
「いやおかしいだろ!そこは『昔に倣ってお前らには本当に根性が付くのか体験してもらおうか......?』だろ!?」
なんでそこで殺しに来るんだ!?おかしいだろ!その前置きはなんだったの!?その数十秒は何か意味あったのか!?もしかして、ツッコミ待ち!?怒ってるふりしてデレてるの!?デレ期なの!?今までツンだったの!?
「厳しい訓練でどっちみち死ぬ。早い方が面倒は無いだろう」
「おかしいだろ!?訓練の下りはなんだったの!?」
「そ、そうですよ!ナツキはともかく、僕は普通なんです!本当に死んじゃいます!!」
「俺......私が普通じゃないみたいに言うな!私は普通だ!」
「普通なわけあるか!お前つい昨日バカでかい宝石掘り起こしてたじゃねーかよ!」
「あんなの誰でもできるだろ!」
「できるわけねーだろーが!あんなん出来てたら宝石市場が大荒れになるわ!」
たっ......確かに......!?言われてみれば、なんか俺とんでもないことしちゃったんじゃねーのか......!?ああ、俺としたことが、普通ではないことをしてしまっただと!?言われてみれば前世......ではないか。転生じゃなくて転移だし。前の世界に居るときから俺は変わっていると言われてきた。『人とは違う、周りの人物を惹き寄せるようなカリスマ性を持っている』と。ヤヴァイ。目立ちすぎるとあやふやな俺の経歴......というか生まれに目を付けられるかもしれない。
「たまたまだよ!たまたま見つけたの!」
「......お前、気付いてないかもしれないけど、普段からやってることめちゃくちゃだぞ?もしかしたら、騎士じゃなくて生産職に就いたほうが儲かるんじゃねーの?」
「バッ......!俺は安定した生活や金が欲しいんじゃなくて、陛下に尽くしたいが為に騎士に叙勲しようとしてるんだよ!......王国の為に!」
ジャキッ!
腰に備えていた長剣を勢いよく抜き、体の前に両手で構える。騎士風の敬礼だ。普段はこういう敬礼をせず、前世......じゃなくて......めんどいから前世でいいや。前世で自衛隊がやっていたような敬礼をするらしいけど。街中だと危ないけど、訓練中だったら問題ないだろ。
「それくらい忠義があるなら問題はないだろう。訓練に励め。」
コッコッコッコッコッコッ......
「助かった。こ、殺されるとこだった。」
「ナツキ、お前大変だな......」
「だろ?お前いつも羨ましいとか言ってるけど、いっつもこんなんだぞ?」
「でも、逆にうらやましいかもなぁ。教官殿にあんな態度で接することができるなんて。」
「それ本気で言ってる?」
「まぁ、実際そんな境遇になることがないから無責任なことが言えるのかもな。」
「それはあるな。」
よくあるやつ。芸能人とかに憧れて、それの大変さはあまり考えない的な。アイドルに憧れてるとか言って、ダンスの練習のキツさを考えない的な。
「結局体験してみないと解らないし。」
「あ、じゃあ今度リーナが居るとき遊びに来いよ。友達友達。お前も仲間だ」
「な、なんか今変な風に聞こえた気がする。」
「気のせいだ。」
今はまだ気づかない方が幸せだ。俺がな。殺られる人数が多い方が一人頭のダメージが減る。気のせいということにしておいてくれ。それに、お前の今の顔、輝いてる。大分うれしいみたいだな。時に現実は知らない方が良いということもある。
「今度呼ぶよ。」
「マジで!?やったー!」
ははっ。無邪気に喜びやがって。そんなに嬉しそうにすると、こっちまで嬉しくなってくる。......仲間が増えてうれしいよ。
「いやー本当に感謝するわ!こんな機会」
「......ほほう。良い度胸してるじゃないか。あれほど丑の刻参りしたにも関わらず態度を改めないとは」
「丑の刻参り......!?もしかして、釘を刺したにも拘わらずって言いたいのか?」
「洒落てる言い回しだろう?」
「そんな物騒な洒落た言い回しがあるか!」
「言うことを聞けないならしかたない。出来損ないの駄藁には私が直々に教育してやろうではないか......」
ひぃぃ!やめてくださいよ!っていうか駄藁って何?駄馬とか駄犬のノリなの!?出来損ないの駄藁って何!?俵の聞き間違いであってほしい。出来損ないの俵。変わらねぇ......。
「打つなよ!?っていうか、やっぱりそのつもりだったのか!丑の刻参りとか釘打ちなんて物騒なこと言いやがって!!」
「やっぱり幻聴じゃなかった!?じゃあナツキがさっき言ってた仲間って言うのも......!?」
こっちに思わぬ被害が!?リーナ!許さん!
「そう!今丁度教官殿の話をしていた所です!」
「そうそう!リーナの話をしてたんだよ。」
「あ゛?」
「リーナは少し態度がキツいだろ?だから美人だけどあまり気軽に接する人が居ない。その点副教官殿は気さくで頼れる人だから、気さくに話しかけられるし知り合いも多い。だから、今度三人で『気軽に接することが出来るように性格を改ぞ......改める作戦』を実行しようと話していたんだよ。」
何か言われる前に一気にまくしたてる作戦だ。これでゼルドを誘ったという事にもなる。フハハ。策士ナツキと呼んでくれても構わんよ。いや、参謀・ナツキ......かな?
「そうか。私の為に......その話は後でする。今は訓練に集中しろ」
「「はい!」」
ふぅ。今回も何とか誤魔化せたか。いや、どっちみちリーナの性格は何とかしようと思っていたことだし、少しそれが早くなっただけのこと。問題ない。むしろ、一度に片付ける算段を付けたボクを褒めてほしいかも。フハハ。
「(おい、どうするんだよ!)」
「(問題ない。俺たちがやることは変わらないさ)」
ふっ。俺もなかなかリーナの扱いに慣れてきたようだな。まぁ、それももうすぐ必要なくなるのだが。『性格改造作戦』の時にリーナの性格を素晴らしく魅力的な物にしてやれば......リーナに恋する者もあらわれ、リーナは俺のお世話に疲れず、恋を楽しむことが出来るってもんだ。素晴らしい!素晴らスィ!フハハハハ!フハハハハハハハ!
サブタイも前書きも関係ないことを書き始めたら、一体後書きには何を書くのだろう。そう思ってたけど、後書きは本編の内容を補完するための物だったと思いだした。
思い出しても前書きの内容を補完してしまっている今。