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9話 スキルって、簡単じゃないんですね

前話の前書きを思い出したのですが、カットして月日が流れた後の訓練の途中ってのも良くあるパターンかも?って思ってしまいました。無念。






「チックショー......一体何だってんだよ?副教官殿は俺にうらみでもあるのか?」

「ははは、副教官殿はうらみがあるわけではないと思うぞ?教官殿は、期待してるんじゃないか?」

「期待?なんで?」

「『......教官殿が期待しているというダークエルフの小娘は、いったいどんな奴なんだろうか』ってね」

「お前のせいじゃねーか!何言っちゃってんのお前ー!?」

「謎のダークエルフ訓練兵、ナツキ!教官に期待されているという、その正体はいかに......!?」

「だめじゃん!興味持たれちゃダメじゃん!正体暴かれたらダメじゃん!っていうか、ナツキはやめろ!ナツと呼べと言っているだろう!?」


ナツキって言うのは、俺が本名の七瀬ななせ光明みつあきをもじって適当に付けた名前だ。......今考えると、この世界ではあまり普通な名前じゃない気がする。日本人っぽいし......。


「だから、ナツって呼んでくれや。ナツキって呼ばれるの慣れてないんだよ。」

「まだ慣れていないのか。というか、なぜナツなら平気なんだ?」


ナツは元の世界でも呼ばれていた名前だからな。......文化祭の女装時の名前だ。あとは、コウメイとか。そのまんまのミツアキって呼び方ももちろんある。


「あのなぁ。呼び方はどうでもいいんだよ。どうでも良くないけど、そこは今問題じゃない。問題なのは、問題なのは............俺が上達しねーって事だ!なんで!?なんで?なぜ俺は剣の腕が上達しねーんだ!」

「おいおい。剣の腕なんて、そうすぐ上がるもんじゃないぞ?実践の前に訓練。じゃないと、型が崩れるかもしれない」

「そん......そうだな。それは分かってるんだが、俺はお前らに頼ってばかりだ。だって......お前らに何も返していないし、秘薬の金を返すどころか、借りる金が増えるばかりだ。......こんなんじゃ、俺は」

「そんなもん、かまうか。ナツは恩を返すんだろ?なら、今は問題ないよ。ナツは何としてでもお恩を返しそうだ。どんな形でもね。」

「......!」


......解った。解ったわ。この物語の主人公、お前だろ!?なんか、悔しいって思うより、納得しちまう俺がいる。だって、コイツカッコいいことばっか言うんだもの。ぐすん。


「はっ。たしかに。俺は死んでも恩を返す男だからな。」

「おい、今は女だろ?あんまり大きな声で男だとか言うな。」

「ああ、すまん。で、今日も行くのか?短剣の練習と弓の練習。」

「話を逸らすな。ま、今日も練習日和だからな。その代わり、明日は訓練も休みだ。ゆっくり休めよ?」

「わざわざ訓練の日程と合わせてるのか?」

「ああ。まず、体に覚えこませるには、適度な休憩も必要だからね。」

「わざわざ済まないな。......そろそろ、話さなきゃならんよな。」


絶対的に安全な場所なんてない。周りの目がない安全な場所というなら、王都の中よりも外だ。部屋の中よりも、外にある。魔物がはびこる森の中なら、そう人の目も無いってもんだ。


「そうか。別に、無理して言わなくても良いんだぞ?」

「いや、そう気にすることは無い。そう大きなことでも、つらいもんでもない。ただ、これはヤバい秘密なんじゃねーかって。」

「ヤバい秘密?」

「もしかしたらだけど、知ったら消されるかもだぜ?」


――――――――俺をここに転移させたやつ。それはまだ誰だかわかってない。一体、誰なんだ?俺を、こんな人間が腐ったところに送ったやつ。俺に、何を望んでいる?


「――――――――消される?」

「ああ。あくまで可能性だ。」

「――――――――ナツが言うなら、冗談じゃないんだろうな」

「俺も冗談くらい言うさ。だが、これは」

「冗談じゃない――――――――と?」

「ああ。」


だから、言うのを避けてきた。こんな現象、誰かが意図しなきゃ起こりえない......と思う。もしかしたら、不慮の事故で死んだ人間はこういう風になるかもしれないしな。まだ、心配の域だ。


「まぁ、アレだ。あの~アレだ。行くか。」

「そうだな。行くか!」


......今日はほどほどにしたいなぁ。明日もゆっくり休みたいんだよ。長年の知恵として、一日丸々休んでも疲れが取れない場合があるんだよな、これが。十二時間PCの前でY〇uTubeの動画見てたら、ぐっすり八時間寝た後にも疲れが取れないでさらに六時間寝ちゃったからな。さらに、その日は休日だったのに、翌日体ガタガタだったなぁ。目の疲れで頭痛いし、腕も足も痛かった。肩こりで体はだるいし、熱もちょっと出た。十二時間休憩なしでPCの前にいると、まさかこんな副作用が起こるとは、思いもしなかったよ。本当に。


「さ、出かけるぞ。」

「ああ。よろしく頼みます、教官殿!」





「深呼吸しろ。深呼吸して、心を落ち着かせるんだ。この距離なら......的の少し上を狙うんだ。弓の感覚をつかむんだ。そして、慣れろ。」

「任せろ......!んぁっ......!」


ヒュドッ!


放たれた矢は、直径三センチくらいの大きさの円を見事に打ち抜いていた。文句なしのど真ん中だ。


「うん、完璧だな。」

「ああ。弓をほぼ毎日撃たされてれば、上達もするってもんだ。」

「そのとおり。この程度は、ダークエルフなら普通だ。むしろ、成長の速度は遅い位だ。」

「ええ......。」

「まあ、仕方ないさ。お前は、共に切磋琢磨するダークエルフの仲間がいなかった。共に上達して競い合う仲間がいないから、上達の速度が遅くても仕方ないさ。」


俺も競い合う相手がいてこその技術の上達だと思うけど。自分の限界を超えていくのも、競い合う相手が手こそ......っていうか、上達には競い合う相手がいた方が良いってね。


「ここからは練習ではなく訓練になる。心してかかるように。」

「......ステップアップって事っすねワクワクする!」

「いいか?次は、連続で矢を放つんだ。急いで矢筒から矢を取り、つがえて打つ。これを最大限の速さで行い、最大限に命中精度を高められたら、弓の中級者と言っても過言ではないな。スキル名は【五月雨撃ち】だ。【狙いすます】が【弓スキル】の習得条件なんだが、実はお前、【弓スキル】自体は習得できているんだ。だから、スキルポイントを50にして、五月雨撃ちを覚えてしまおうって寸法だ!」

「......キツくない?」

「大丈夫。実践に入れば、嫌でも熟練度......スキルポイントは上がっていく。もちろん、練習でも上昇するぞ。習得してない技を習得しようと練習すればスキルポイントも上昇するし、それを使って強い魔物を倒したりすると、ドカンとポイントが入ることもある。」


どうやら、技を習得するには必要なスキルポイント数を満たしていないとだめらしい。スキルポイントを満たし、練習することによって【覚えた】スキルは、発動しようと意識しただけで発動できるものへとなる。スキルで放った技が本物だとして、その形を覚えるために、偽物を練習しなければならない。例えば、弓だったら五月雨撃ちを習得するために、矢筒から急いで矢を取り出して、つがえて打つ。これを繰り返し練習しなければならない。一回の五月雨撃ちに必要な矢は五本。つまり、急いで矢を取り出して撃つ✕五をやらなければならない。それをやり遂げ、スキルを習得出来たら、矢を取り出すのが早くなる。矢を取り出すモーションが早くなる。そして、命中精度も高くなる。やっぱり、変にRPGっぽいよなぁ。......もしかしたら、裏技とかあるんじゃねーの?


「だが、鑑定スキルは早く手に入れたいな......自分のスキルポイント位確認したいしな。」

「慌てることは無いのではないか?だって、鑑定人がいるし。」

「あ、あるんだそういう職業。」

「予想してなかったか?珍しいな。っていうか、ナツも鑑定してもらったことがあるじゃないか」

「......俺が?」

「ああ。あの、騎士養成所に提出する、書類を作るとき。まとめてステータスやらなんやらを。」

「ああ、あったな、そんなこと。」


あれが鑑定士だったのか。武器、防具、魔道具、装飾品。あらゆる品や人物を鑑定する、万物を『鑑定』し、人物を『診察』する職業。スキル値によっては、バッドステータス......いわゆる毒や半身マヒ、脳死。そして、病気なども知ることができる貴重な職業。スキル習得が困難と聞いてたので、まさかあのオッサンがそうなんて思ってなかった。......ま、どこか特別なオッサンだとは思ってたけどね。......ウソです。全く気が付きませんでした。特別なオッサンってなんだよ......。


「で、ほら。やってみろよ、五月雨撃ち。」

「あ~まず、手本を見せてくれないか?解らんからよ。」

「う~ん。参考にならないし、本当は自分で練習した方が良いんだけどな......よし、一回だけだぞ?」


おお!ダメもとで頼んでみたけど、本当にやってくれるらしいぞ!?


「じゃ、一度だけだからな?心してみろよ。」

「お、おう。」







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