プロローグという名の物語の始まりの部分
どうも皆さんもっちもちです。
あらすじだけ元々書いていたものを、新たに二、三個投入することにしました。更新は曜日ごとに変わるかもしれませんが、『無双できるんじゃなかったの』は大幅修正これと追加したものが更新......というふうにしたいとおもってます。忙しくなるので更新が遅れてしまうかもしれませんが、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
「彼女もまた許せなかったのだ。自らに近いほどの美貌の持ち主が⎯⎯⎯⎯⎯」
洒落た帽子を目深に被り、真っ黒な羽ペンを持った人物は少しの間客の反応を見る。そしてゆっくりと、次の言葉を紡ぎだす。
「虐殺姫【白雪姫】⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯」
客の様々な反応を窺う。
「ふぅーっ。」
客の様子を窺っていた人物は深くため息を吐く。
「今日は皆さんノリが悪いようだ。」
洒落た格好をした語り人は、大きなしぐさで肩を竦める。......まるで、その動作も物語の一部なのではないか、と思うくらい芝居めいていて、大げさな動きだ。
「どうやら僕の一風変わった物語にも慣れてきた様子。」
周りに居る多くの観客達は沈黙で肯定を表す。
「僕の話に慣れ、耳が肥えてしまった皆様には、ここで一つ奇妙な運命に取り憑かれた一人の少年の物語を_______________」
「りがとうざいやしたー」
「ついつい買ってしまった。」
ポテチ爆買い。勉強の合間にでも食べるか。ほんとは食べ過ぎは体に悪いんだけどね。それに、なんだ最近太ってきたような気が......
「俺、何やってんだ..................はぁぁぁぁぁぁぁ。」
意識せず深いため息が口から漏れ出す。疲れ切った脳みそがため息を認識し、疲労感がどっ......と押し寄せる。俺に休めって言うのか、脳みそよ。
「はぁぁぁぁぁぁ...............」
俺は成績が優秀だ。全国模試も全国二位。学校での成績もいい。頭脳明晰、スポーツ万能。つまり、文武両道を極めていた。中性的な容姿端麗さで女子からの評判もよく、バレンタインデーはチョコは断っているほどだ。
..............いや、正確に言うなら成績が優秀だった、か。
毎日学校での勉強に精を出し、塾に通い、家に帰って猛勉強。何も考えずに勉強ばかりしていた。父が死に、俺の面倒を見ることが生き甲斐となった母からの期待。それをこの小さな背中に背負って、重くて重くて耐えきれなくなって、潰れかけて、何も考えない訳には行かなくなったとき、考えてしまった。
『俺は何のために勉強してるんだろう』
将来のためだ。将来のために決まっている。一生懸命自分に言い聞かせようとした。.......だけど、無理だった。幼い頃から、自分の意思ではなく親からの重い期待を背負って勉強をしてきた俺には【自分のため】に勉強をしているとは思えず、【母のため】に勉強しているとしか思えなくなっていた。
俺の名前は七瀬光明。
普通の人は将来に目標を定めて、それに向けて努力するのだろうが、俺には目標がない。親からの期待に応え、幼い頃から努力していた。父親が医師だったため、俺もそうなるのかと幼心ながらにそう思っていた。だけど、レールが敷かれていたからこそ、目の前に選択を置かれたときとき、何も解ることが出来なかった。
今の俺になってしまったきっかけ。それは、普通の人なら一度は経験する、大人になったら忘れてしまうような些細なものだった。
『あい、では進路希望調査の紙、回収するぞー。後ろから集めてこーい。』
ガタッガタタ.........。
『ん?おい、七瀬。お前何も書いてないじゃないか。』
『す、すみません。よく.........解らなくって。』
『んー。まぁあくまで希望調査だから。何でもいいから適当なの書いておけ。帰りのホームルームまでには提出しろよー。』
何でもいいから。.........何でも良い。その言葉に戦慄した。俺もなにかを目指して良いのか.........と。暗かった俺の心の内がパッと晴天になった気がした。
そして、探した。探して探して探しまくった。でも.........見つからなかった。
幼い頃から猛勉強をして、将来は医者になる、と。父の病院を継ぐ、と。そう育てられてきたが故に、どうしたら良いか解らなくなった。親に価値観を決められてしまった俺は、何を見てもピンと来ない。どんな職業も色褪せて見える。何故だ。何でも良いと知ったときには晴天だったのに。何時しか元々よりも曇ってしまった。
現実を突きつけられたからだろうか。
『お前は今日まで医者になるために勉強をしてきたんだ。ならば医者を目指すのが一番現実的だ』
と。元々知っていたはずなのに。
落ち込んだ俺は常に下を向いて歩くようになった。顔が陰って隈が増え、肌も荒れ果てた俺は、いつしか心配してくれていた女子からも相手されなくなっていた。失意のどん底に墜ちた俺は、勉強も手につかなくなった。運動なんてもっての他だ。やる気が沸かないのに動く気力なんて絞り出せるわけがない。
甘えだ、と言うかもしれない。だけどそうじゃない。
今の俺の状態は、例えるならば燃料の切れたエンジンだ。エンジンは燃料がなければ動かない。俺には燃料がなくなってしまった。前は何も考えずに勉強に没頭することでなんとかごまかしていたけれど、そう言うわけにもいかなくなった。
今も俺は燃料を探し続けている。将来の進路。それが、俺の燃料になるはずだ。あの時感じた希望と開放感は偽りであるはずがない。それを見つければ、もう一度――――――――――――――――
「よし。も少し頑張ってみるか。」
パッと顔を勢いよく上げる。目に入ってきたのは強い光。耳に入ってきたのはけたたましい擦過音と、人の怒鳴り声と叫び声。突然のことに驚いて硬直する僕は。
あっと言う間に強い光に呑み込まれた。