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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第14シーズン 異世界科クラスの修学旅行編
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第50話 送別会(上)

 異世界科生徒たちが、シローのために送別会を開いてくれたようです。


 異世界科二年の生徒たちによる送別会が開かれることとなった。

 異世界への修学旅行で彼らが世話になった、シローを見送るためだ。

 場所は、林、聡子両先生の新居である『もてなしの家』となった。

 生徒たちは、それぞれが荷物を持ち、竹林の道を抜け目的地までやって来た。

 

「へえ、先生の家ってこんな所にあるんだ。

 あっ、あの家!?

 すごく大きくない?」

「なんかオシャレだなあ」

「うん、聡子先生には似合ってるけど、林先生にはねえ~」


「おい、聞こえてるぞ!

 今のは、三宅だな。

 早く中へ入れ」


 上下とも紺色のジャージという、地味な格好をした林が玄関扉を開ける。

 

「「「お邪魔しまーす!」」」


 学生服姿の三十人近い生徒たちが、ぞろぞろ玄関をくぐる。


「なに、このオシャレさ!」

「フローリングかー!」

「囲炉裏があるよ!」

「景色いいねー!

 学校が見えるよ!」

「うわ、アイランドキッチンだー!」


「みなさん、こんにちは」


 生徒たちが騒ぐ中、エプロン姿の聡子がキッチンスペースから出てきた。 


「おい、小西、お前、囲炉裏に落ちるぞ。

 とにかく、みんな座れ。

 座布団は人数分ないから出さんぞ」


 林の説明に、生徒から不満の声が上がる。

 その時、別棟への引き戸が開き、リンダと彼女の母デボラが姿を見せた。

 リンダは手にしていた木の丸椅子を床に置くと、そこに母親を座らせる。

 

「あ、リンダ先生、こんちはー!」

「デボラさん、こんにちは」

「そういえば、リンダ先生も、ここに住んでたんだよね」


「ええ、そうよ。

 ママも一緒に住んでるの」


 リンダが穏やかな顔で微笑んだ。


「ホームステイですね!」

「羨ましいなあ!」

「なんでよ?

 あんた日本人でしょ?」

「だって、こんな家に住んでみたいじゃん」

「まあ、そうだけど」


 収拾がつかなくなりそうな生徒たちの会話を聞き、林がその額に手を当てる。


「おい、そろそろいいか?

 宇部、音頭を取ってくれ」


「はい、先生。

 みなさん、お世話になったシローさんが喜んでくれるよう、がんばりましょう。

 打ちあわせたとおり、班ごとで準備に取りかかってください」


「「「はーい!」」」


 生徒たちは、四五人ずつに分かれると、それぞれが自分の仕事に取りかかった。


 ◇

 

 夕暮れ迫るころ、シローが林邸の前に現れた。

 自分の家から、わざわざ歩いてここまで来たのだ。

 カーキ色の冒険者服から見える首筋には、汗が浮かんでいた。


「さすがに、この時期だと藪蚊やぶかが飛んでるね」


 シローにまとわりついていた蚊は、彼が『もてなしの家』の敷地に入ると姿を消した。

 これは敷地の境界線に沿って、虫よけの魔術が掛けてあるからだ。

 林邸からは、賑やかな声と温かい灯りが洩れている。


「どう、点ちゃん、割と良くない?」


『d(u ω u)  そうですね。夜の外観も狙いどおりになりましたね』

 

 二人が話しているのは、相談しながら設計した林邸『もてなしの家』の事だ。

 

「そうだ、まず、アレやっとくかな」


『(@ω@) えーっ、来るなりアレですか!?』


「だって汗かいただもん」


『(・ω・) ……』


 ◇


「シローのやつ、遅いなあ。

 あいつの場合、どっからでも瞬間移動で来られるはずだが、何かあったのか?」


 ジャージの袖を二の腕までまくり上げた林は、聡子を手伝いながら壁時計に目をやる。


「「「きゃーっ!」」」


 突然、裏の方で女子生徒たちの悲鳴が上がった。

 林はキッチン奥の八畳ほどもあるパントリーに駆けこんだ。そこに裏口があるからだ。

 彼が扉を開け外へ出ると、そこにはすでに大和と小西がいた。

 身を寄せあった三人の女子生徒もいる。


「何があった!?」


 大和と小西の呆れたような顔を見て、緊急事態ではないと気づいた林は、強ばっていた体の力を抜いた。

 大和が指さす方を見ると、泡立つジャグジー風呂に茶色の布を巻いた頭が浮いている。

 風呂の縁に座った白猫が、なぜか目の前の頭を前足でちょんちょんとつついていた。


「おいおい、シロー、そこで何やってる!」


「あ、林先生、こんばんは。

 いやあ、ここまで歩いてきたんで汗かいちゃって。

 この時期、日本は蒸しますねえ」


「『蒸しますねえ』じゃない!

 なんで風呂に入ってる?」


「いや、だから、言ったように汗かいたから」


「……もういい。

 おい、お前らはさっさと中へ入れ。

 シローは、風呂から上がったら、リビングへ来い」


「「「はい」」」

「ほーい」


 生徒が家へ入り、シローと二人だけになると、林がため息をつく。


「ふう、シロー、お前、少しは後輩のお手本になるようにしろ」


「あの子たち、お風呂に誘った方がよかったですかね?」


「……お前に常識を求めた俺が馬鹿だったよ」


「えーっ、こう見えても、俺、二児のパパですよ?」


「分かった、分かった。

 もういいから、思う存分、風呂を楽しめ」


「はーい。

 夜空を見上げながら入る露天風呂は、また格別ですねえ」


「……」


 ガチャリ


 裏口の扉が開き、タオル地のバスローブを羽織ったリンダが出てくる。

 

「リンダ先生、なにか?」


「いえ、せっかくだから、私もお湯につかろうかなあと……」


 パサリとバスローブを落としたリンダは、先日シローからもらった真紅のワンピース水着だった。


「リンダ先生、あなたまで、なぜ……」


 それを見た林は、薄暗がりでも分かるほど、顔が赤くなっている。

 ちょうど裏口から顔をのぞかせた聡子が、やけに優しい声でこう言った。


「あなた、いつまでそこにいるのかしら?」


「はっ、はい!

 すぐに参ります」


 なぜか敬語で答えた林が、足早にその場を去る。

 リンダと二人きりになったシローが、声を掛ける。


「リンダ先生、今日は月が綺麗ですよ。

 さあ、早く入って。

 風邪を引きますよ。」


「え、ええ……」


 シローに声を掛けられたリンダが、少女のようなはにかみを見せる。


『へ(u ω u)へ 「月が綺麗ですよ」は、ナイよねえ、ブランちゃん』

「なーご」(ナイナイ)


 夜になり気温が下がって来たのか、黙って二人の男女が入る露天風呂は、白い湯気に包まれていった。


 読んでくださってありがとう。

 おい、シロー! それはなんでもやり過ぎだろう!

 リンダ先生も、なにしてるの?

 まあ、もうやっちゃったことは仕方ないですけど。

 しかし、「月が綺麗ですね」は、ナイわ~。

 明日へつづく。


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