表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第14シーズン 異世界科クラスの修学旅行編
759/927

第49話 おばちゃんとハンドバッグ

 シローはナル、メルのお土産を買うようです。


『(*'▽') おばちゃん、いつもご苦労様』


「あんたねえ、何回言ったら分かるんだい!

 おばちゃん、腕がパンパンだよ、もう!」


 シローが訪れているのは、大阪の下町、お好み焼きの名店「おこじゅー」だ。

 またしても百枚もの豚玉を注文した彼に、おばさんはご立腹のようだ。

 彼女は、開店前の時間を使い、最後の四十枚を焼きおえたばかりだ。

 金色のヘラを持つ手をぽよぽよの腰に当て、顔をしかめている。


「ま、まあまあ。

 すぐに、なんとかしますから」


 シローが指を鳴らすと、おばさんの肩から手にかけて、白い光に覆われた。  

 

「おや?

 なんだいこれ?

 急に腕が軽くなったよ。

 頑固な肩こりまで消えてる。

 なんだい、こりゃ?」


「ああ、異世界のおまじないみたいなもんですよ」


 実際には、『・』に付与した治癒魔術だ。


「そうかい、助かったよ。

 そういや、あんたんとこの会社、『ポンポコ』さんだっけ?

 ニュースでやってたけど、あそこが絵を売って、かなり儲けたらしいじゃないか」


「いや、それほどじゃありません。

 たった五億くらい?」


「……呆れるねえ!

 こんなパパだと、ナルちゃん、メルちゃんは大変だね。

 ルルちゃんを泣かせるんじゃないよ!」


「そこは、大丈夫です」


「そんなこと言ってるけど、あんたかなり長い事こっちにいたろ?」


「一、二、三、……あ、よく考えたらそうでした」


「どこまで抜けてんだい!

 いい加減、帰ってあげなよ!」


「はい、明日には帰る予定です。

 だけど、ここのお好み焼き買っとかないと、娘たちが悲しみますから」

 

「ナルちゃん、メルちゃんが喜んでくれるなら、あたしゃ本望だよ。

 あんたは食べるんじゃないよ!」


「そんな殺生な!」


「まあ、それは冗談だけど、なるべくあの子たちに食べさせてやっとくれ」


「はい、分かってます。

 あ、そうだ。

 お土産渡すの忘れてました。

 はい、これ!」


 シローが指をパチリと鳴らすと、彼の膝に女性用のバッグが載っていた。

 ケリーバッグタイプのハンドバッグは、地が深緑色で、オレンジやピンクの花柄が描かれていた。


「コルナが、おばさんにってデザインしたんですよ。

 彼女も、ここのお好み焼きのファンだから」


「おや、オシャレだねえ。

 だけどそんなのがあたいに似合うかね?」


「大丈夫ですよ。

 似合うようにデザインしてあるんですから」


「じゃあ、ありがとうよ。

 コルナちゃんに、よくお礼言ってといておくれ」


「はい、分かりました。

 それから、そのバッグの使い方ですが……」


 シローが指を鳴らすと、彼の横に大きな段ボール箱が現われた。

 おたふくのマークがついたその箱を開けると、中にはさらに小箱が入っており、そこにお好み焼きソースの容器が並んでいた。

 シローは、バッグの口を開き、そこへぽんぽんソースの容器を入れていく。

 いくら入れても膨らまないバッグに、おばさんの目が皿のようになる。


「あ、あんた、それどうなってんだい!?」


「これ、マジックバッグって言って、見かけよりたくさんのモノが入るんですよ」


「驚いたよ!

 初めて見るね、そんなもん」


「ええ、これ、地球世界で初めてのマジックバッグですから」


「いいのかい、そんなモノもらって?」


「いいんですよ。

 ほら、ここに手を入れてください」


 おばさんが、バッグの口に手を入れる。


「こうかい?

 おや、頭の中にソースの容器が浮かんでるね」


「じゃあ、どれか一つ選んで取りだそうと考えてください」


「ええと、こうかい?

 わわっ、いきなり出てきたよ!」


 バッグから出てきたソースの容器を、おばさんが慌ててつかまえる。


「使い方は、分かりましたね?

 バッグの口より大きなものだと、バッグ自体を近よせると中へ入りますから。

 中に入れたものは、なかなか腐らないので、保存庫としても使えますよ」


「ふぇー、便利だねえ。

 これ、いくらくらいするだい?」


「そうですね。

 これから『ポンポコ商会』で売りだすつもりですが、もう少しグレードを落としたやつで十億か二十億の予定です」


「単位はペソとかリラかい?」


「いえ、円ですね」


「……本気かい?」


「ええ、きっと近くニュースになると思います。

 ああ、そうそう、このバッグ、おばさんと俺しか使えませんけど、一応、入れるところと出すところは、人に見られないように。

 魔法のバッグだってことは、くれぐれも秘密にしといてください」


「当たり前だよ!

 そんな高価なもんだと人に知られたら、どうなることか分かったこっちゃないよ!」


「盗んだりしても、他の人には使えないんですけどね。

 じゃあ、焼きたて一枚もらってもいいですか?」 

 

「ああ、あと十五分で開店だから、それまでお待ち。

 鉄板も、もう一度あっためなきゃならないからね」


「はい、じゃあ、その間、作業を録画してもいいですか?

 ナルとメルが、ジューッて音を聞きたがってるんですよ」


「ウチは、そういうのお断りなんだけどね。 

 ナルちゃんとメルちゃんのためなら仕方ないね」


「はい、他には見せませんから」


「じゃあ、好きにしな。

 バッグありがとね」


「ははは、お礼言われたの初めてかも」


「まあね、あんたはいつも迷惑ばかり掛けてくれるから。

 さて、じゃあ、焼くよー!」


 ジューッ


 開店時間が来たので、常連客が次々と店にはいってくる。

 名店『おこじゅー』の一日は、まだ始まったばかりだ。


 読んでくださってありがとう。

 焼きたてのお好み焼きを、首を長くして待っているだろうナル、メルに、パパが、いや、おばちゃんが、頑張りました。

 青のり入れないでって、きちんとおばちゃんに伝えてますかね、シローは。

 次話、今シリーズ、最後のエピソード(上下話)です。

 明日へつづく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ