第25話 異世界科生徒のお宅訪問(上)
異世界科の生徒たちが、シロー宅を訪れるようです。
にぎやかなことになりそうですね。
『(*'▽') お客さんがいっぱい!』
一週間が六日であるこの世界の暦で、今日は休養日、つまり地球世界の日曜日に当たる。国の機関や魔術学院、学校は全て休みとなる。
この日、異世界科の生徒たちがずっと楽しみにしてきた行事がある。
それは、シローが住む『くつろぎの家』への訪問だ。
シローとその家族が地球世界を訪れた時、異世界科のクラスで特別授業をおこなった。
そのため、生徒たちは、シローの家族を見知っている。
だからこそ、彼らはこの訪問を楽しみにしていたのだ。
城から『くつろぎの家』まで、生徒たちが足早に歩くから、林と聡子は、ばててしまった。
「はあ、はあ、ご、ごめんください」
木材を組みあわせた玄関扉のノッカーを、林が鳴らす。
「「はーい!」」
勢いよく扉を開けたのは、七、八才くらいの少女だった。
双子なのか、そっくりの顔をした銀髪の少女二人が歓声を上げる。
「「林せんせーだー!」」
「ナルちゃん、メルちゃん、こんにちは」
二人の少女が腰に抱きついてくると、林は二人の頭を撫でた。
生徒たちは、久しぶりにナルとメルを目にして、ほのぼのした表情になっている。
「ナル、メル、みなさん来たかなー?」
姿は見えないが、家の中からシローの声がする。
「「林せんせーだよー、パーパ!」」
ナルとメルが玄関から奥へ駆けこむ。
「お邪魔します」
「「「お邪魔しまーす!」」」
林と聡子を先頭に、生徒たちがぞろぞろと家の中へ入った。
◇
「なんなのこの家!」
「天井が高ーい!」
「あの穴なんだろう?」
「ふう~、ふわふわだー」
「三宅、お前、なんで一人クッションでくつろいでんだよ!」
生徒たちがリビングで騒いでいると、茶色いエプロンを着けたシローが現れた。
手にミトンを着けているから、料理をしていたのだろう。
「林先生、聡子先生、みなさん、『くつろぎの家』へようこそ」
「シロー、今日はご馳走になるよ」
林が、かぶっていたハンチング帽を脱ぎ、頭を下げた。
「ええ、楽しみにしていてください。
みなさん、料理の準備ができるまで、この部屋でゆっくりしてくださいな。
ソファーや、座布団、クッションは自由に使ってください。
あー、三宅さんだっけ、君、そのクッションだけは使わないでくれるかな?」
「えっ!?」
勧められる前から、緑のクッションでだらけていた三宅が、上半身を起こす。
「ほら萌子、立って立って」
親友の白神が三宅の腕を引っぱり、クッションから立たせる。
「ええと、この大きな緑のクッションって――」
「わーい!」
三宅が尋ねようとしたとき、クッションの向こう、奥の壁に開いている直径一メートルくらいの穴から、歓声とともにメルが飛びだしてきた。
クッションにぽよんと受けとめられた銀髪少女を見て、生徒たちがぽかーんとしている。
「この穴、三階の子供部屋から降りてくる、滑り台になってるんですよ」
シローの言葉を聞き、みんなが穴に注目すると、今度はナルが飛びだしてきた。
「わーい!」
それを見て、それまで黙っていた生徒たちが口々にしゃべりだした。
「スゲーっ!」
「家の中に滑り台!
いいなー!」
「ウチにも、あんなのが欲しい!」
「あんたんとこ、平屋じゃん!」
お宅訪問早々にして、とても騒がしい生徒たちだった。
◇
「なに、この庭!」
「緑のカーペットみたい!」
「カーペットってなんだよ、絨毯だろう」
「大っきな木がいっぱい!」
「家が森の中にあるみたい!」
リビングから、庭へ出てきた生徒たちは、個人宅とは思えない光景に驚いている。
母屋の前には、六畳ほどのレンガ敷きスペースがあり、そこに置かれたコンロには、すでに火が入っており、丸顔で小太りの男性が、額に汗を浮かべ、肉や野菜を焼いていた。
つけ汁が焦げる香ばしい匂いが漂ってくると、男女を問わず、生徒たちのお腹が鳴った。
母屋である『くつろぎの家』から、シローの家族が姿を現す。
メル、ナル、コルナ、ルル、コリーダの順で出てきたのだが、その度に、生徒から盛大な拍手が湧いた。
最後に出てきたシローが、改めて家族の紹介をした後、こう言った。
「では、バーベキューを始めようか。
今日手伝ってくれるのは、調理担当のデロリンさん。
食材の説明は彼から受けてください」
デロリンが鮮やかな手つきで食材を次々にひっくり返すというパフォーマンスに、生徒たちから拍手が送られる。
「そして、給仕担当のチョイスさん」
高く積みあげた皿を両手に載せ、バランスを取りながら現れた若いエルフに、生徒たちが歓声を上げる。
「では、チョイスさんからお皿を受けとったら、自分が食べたいものをお皿に載せ、『いただきます』の用意をしてね」
シローの声で、生徒たちが奪いあうように皿を手にすると、コンロが置いてあるスペースに殺到する。
生徒が突きだした皿に、デロリンが焼いた食材を手際よく載せていく。
「飲み物は、こちらのポットにジュースが、こちらにお茶が入ってるから、自由に取ってください」
コンロの脇に置かれたテーブルには、ポットが二つと、素焼きのカップがたくさん置かれていた。
「では、いただきます」
「「「いただきます!」」」
シローの掛け声に生徒たちが続け、食事が始まった。
読んでくださってありがとう。
お宅訪問するなり、ナルとメルに癒された生徒たちでした。
滑り台、やっぱり生徒受けしましたね。滑る生徒が現われなければいいのですが。
次話、バーベキュー。食材は何かな?
明日へつづく。




