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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第14シーズン 異世界科クラスの修学旅行編
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第17話 職業指導『魔術師』 

 今回は、『魔術師』に覚醒した生徒たちのお話です。


『(*'▽') 水の力、我に従えー!』


 あ、点ちゃんも練習したかったの?

 でも、君、無詠唱で魔術使えるよね。

 言いたかっただけなのね。


 迎賓館の一室に集められた十二人の生徒たちは、『魔術師』に覚醒した生徒たちだ。


「ええっ!

 先生って……」 


 宇部学級委員長の驚いた声に続き、残りの生徒たちが声を合わせた。


「「「翔太様!」」」

 

 テーブルに着いた生徒たちの前に現れたのは、プリンス翔太だった。

 彼の後ろには、桃騎士、黄騎士、緑騎士の三人が控えている。


「こんにちは。

 ボクのことはご存じのようですね。

 魔術師になったみなさんに、ボクが魔術の基礎を紹介しますね」


「「「きゃーっ!」」」


 八人いる女子生徒が、悲鳴のような歓声を上げる。


「まず、それぞれの属性を伝えますね」


「翔太様、属性って何ですか?」


 男子生徒の一人が、さっそく知識不足を見せてしまう。


「ああ、そうでしたね。

 みなさん、魔術の事は、まだほとんど何も知らなかったんだ」


「そうなんです。

 今まで、異世界の文化概論の授業でした。

 魔術など各論ついては、来月から習う予定なんです」


 生徒を代表して、宇部が説明する。 


「へえ、異世界科って、なんだか面白そうですね!」


「えへへへ」

「うふふふ」

「ほほほほ」


 変な声を出しているものもいるようだが、生徒たちは、授業のことを褒められて嬉しそうだ。


「では、シローさん、お願いします」


「「「えっ?」」」


 生徒たちが驚いたのも無理はない。

 シローは、この訓練に参加していないのだ。

 そして、周囲の景色が一瞬で変わり、生徒たちが言葉も出ないほど驚く。


「……ここ、どこ?」


 十二人の生徒たちは、ドーム状の丘、その頂上にいた。足元は短い草に覆われており、丘の周囲は見渡す限り白い石柱が並んでいた。

 

「ここは、アリスト王国南西にある、センライという地域です。

 あの白い柱は、石灰岩だそうですよ。

 ボクも初めて見るんですけど、凄い風景ですよね!」


「しょ、翔太様、それより、私たち、どうやってここに?」


「あっ、説明するの忘れてました。

 シローさんが、瞬間移動でボクたちをここへ連れてきてくれたんですよ」


 翔太の言葉を聞いても、生徒たちはぼーっとしている。

 見かねた桃騎士が声を掛けた。


「みなさん、しっかりしてください。

 翔太様から、魔術を習うんでしょう?」


 それを聞いて、やっと生徒たちの硬直が解ける。


「翔太君、お願いします!」     

「魔術、楽しみだなあ!」

「私、魔術師になるのが夢だったの!」


 口々に騒ぎだした生徒たちに、翔太が声をかける。


「では、みなさんにどんな魔術適性があるか、ボクが調べてみますね」


 翔太はさりげなく言ったが、これは普通のことではない。

 本来、魔術の適性を見るには、専用の魔道具を使う。

 最初から属性を調べたりなどしないのだ。

 これは、マナが見える翔太だからこそできる芸当だ。

 

「あなたの属性は水、あなたは土、あなたは水、あなたは火ですね」 


 小さな先生は、生徒一人一人に魔術適性を告げていく。

 その結果は次のようなものだった。


 水 五名

 土 三名

 火 三名

 風 一名


「えーっ、俺、土かあ。

 なんか地味だなあ、火や風がかっこよかったのに」


 ぼやいた少年が、翔太に突っこまれる。


「ははは、土属性を残念がるなんてもったいないですよ。

 シローさんが得意なの、土魔術ですし。

 地球にあるシローさんの家、知ってるでしょ?

 あれ、シローさんが土魔術で建てたんですよ」


「ええっ!?

 凄い!

 俺、土魔術でよかった!」


 ついさっきまでがっかりしていた少年が、今は跳びあがって喜んでいる。


「それから、水、土、火、風という四つの属性なんですが、一つしか使えないっていうわけじゃないんですよ。

 さっきお伝えしたのは、あくまでも、一番使いやすい属性っていうだけですから」


「翔太君、いや、翔太先生は、どんな属性が使えるんですか?」


 目をキラキラさせた女子生徒が尋ねる。


「ええと、ここだけの話にして欲しいんですが、ボクは全部使えます。

 それと、他の人にスキルのことを尋ねるのはマナー違反なので、気をつけてください」


 本当は、聖魔術や闇魔術も使えるのだが、翔太はそれを秘密にしている。


「「「分かりました!」」」


 翔太に対し素直な生徒たちを見て、桃騎士、黄騎士、緑騎士の三人が微笑んでいる。


「では、実際に魔術を唱えてみましょう」


 こうして、翔太先生による魔術指導が始まった。


 ◇


 魔術詠唱の訓練は、まず、全員が水魔術の基礎中の基礎、水玉を創りだすところから始まった。 


「水の力、我に従え……だ、だめか」 


 宇部は人生始まって以来ともいえる挫折を体験していた。

 勉強もスポーツも、少し習っただけで人並み以上にこなしてきた彼女にとって、他の生徒が次々に水玉を創っていく中、自分が同じようにできないことでストレスが募るばかりだ。


実のところ、魔術杖を使わない詠唱は、宮廷魔術師でさえ簡単な事ではないのだが、先生役の翔太自身が杖を使わないから、そのことをすっかり忘れているようだ。


 途方に暮れた宇部は、草の上に仰向けに寝転がり、青空を行く雲を眺める。

 私、異世界まで来て何してるんだろう。

 彼女は、ぼんやりそんなことを考えていた。


「宇部さん、調子はどうですか?」


 すでに十二人全員の名前を覚えた翔太が、宇部に声を掛ける。


「え、ええ、まあまあ、かな?」


 本当は水玉ができる兆しすらないのに、宇部はそう答えた。


「ボク、最初は水玉ができなくて、苦労したんですよ」


 翔太のその言葉で、宇部は上半身を起こした。

 いつだったか、異世界科の教室で、彼が大きな水玉を自在に操っていたのを思いだしたのだ。


「嘘でしょ?

 翔太君、あんなに魔術が上手じゃない!」


「ははは、嘘じゃないです。

 本当に、なかなか水玉ができずに苦労したんですよ。

 シローさんが、『イメージを大切にしろ』ってアドバイスしてくれて、それでなんとかスランプを脱出したんです」


「えっ、本当に?」


「本当ですよ」


 翔太はにっこり微笑むと、その場を離れた。

 その小さな背中を見て、宇部は自分の考えちがいに気づいた。

 あんなに小さくても、一から順に積みあげたのね。

 イメージか。

 水玉ができるイメージをはっきりさせて、もう一度挑戦してみよう。

 いえ、もう一度じゃないわね。何度でも、できるまで挑戦するのよ。


 こうなると、宇部本来の負けず嫌いが闘志となって燃えあがった。

 右手を突きだし、はっきり水玉をイメージする。


「水の力、我に従え!」


 開いた右手の少し上に、ビー玉くらいの水玉が生まれた。


「やったーっ!」


 嬉しさのあまり、思わず飛びあがってしまう。

 いつもは感情を表に出さない宇部だが、今はそれを恥ずかしいと思わなかった。

 初めて魔術が成功して喜びあっている、生徒たちの輪に飛びこんでいく。


 先ほど宇部が寝ころんでいた場所に咲いている小さな白い花が、生徒たちを見守るように揺れていた。


 読んでくださってありがとう。

 宇部委員長、挫折からあっというまに立ちあがりましたね。

 次回は、『拳闘士』『写生師』に覚醒した三人のお話です。

 明日へつづく。 

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