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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第14シーズン 異世界科クラスの修学旅行編
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第7話 説明会(下)

 説明会も大詰め。


『(*'▽') ご主人様、がんばってー!』


 おや、点ちゃんがあんなこと言ってる。

 ということは、シローも再登場するのかな?


「ええい、お前たち、これはどういうことだ!

 なぜ警察を呼ばんのだ!

 説明会など、やっとる場合か!」


 県議会議員の曽根が、演台の所で叫び声に近い声を上げる。

 舞台に戻った林が床に落ちていたマイクを拾うと、それを演台上のマイク立てにはめ込む。

 その時、林はなぜか演台を歩幅ほど横へずらした。

 演台と一緒に動きだしたマイクを曽根が掴む。


「おい、お前、ここの教師だろう!

 さっさと警察を呼べ!」


 この時点で、なぜか生徒や保護者から失笑が起きた。

 曽根は、それが自分の横に立つ林に向けられたものだと確信した。


「教師としての仕事をせんと、クビにするぞ!」


 曽根がいきり立つほど、生徒、保護者からの笑いは大きくなる。

 それに力を得た彼は、林の胸倉をつかもうとした。

 

 パシリ


 その手を林が払いのける。


「あなたごときに、私をクビにする力はありませんよ」


 思わぬ言葉を聞き、曽根が激高する。

 ゆで上がったタコのように赤くなった顔で、わめき立てる。


「言ったな!

 私が県の教育委員会にねじ込めば、お前の首など簡単に飛ばせる!

 たかが教師が、何様のつもりだ!」


 それを聞いても、林は落ちついたものだった。

 

「残念ながら、たかが・・・教育委員会などでは、私をクビにはできませんよ。

 話を戻しますが、あなたの息子さんは、修学旅行先に異世界を選んではいません。

 だから、本来、あなたの席はここには無いんです」


 どうやら、曽根は、選挙の宣伝が目的で説明会に参加しただけらしい。

 

「なんだと!

 こうなれば、国会議員の勝山先生に言って――」


 曽根がそこまで言いかけた時、突然舞台上に野球帽をかぶった老人が現われた。

 その恰好と手にしたクラブを見れば、たった今までゴルフをしていたに違いない。

 やけに貫禄があるその老人が、曽根をにらみつける。 

  

「なんだ、曽根君、その恰好は!

 みっともない。

 そんな姿で、私の名前を出さんでくれ!」


 青くなり、操り人形のように口をパクパクさせている曽根の手からマイクを奪い、代わりに自分のクラブを持たせると、老人は落ちついた声で話しはじめた。


「みなさん、本日は、大変意義のある説明会を開かれておりますこと、シローさんからうかがいました。

 異世界への修学旅行については、首相からも、地元として全面的にバックアップせよと言われております。

 どうか、若人わこうどたちの挑戦を、応援してやってください」


 大臣を歴任した大物政治家の言葉に、曽根だけでなく、教師、保護者まで、あっけにとられた顔をしている。

 

「シローさん、これでよいでしょう?」


 老人の言葉に答えるように、突然シローが姿を現す。

 どうやら、この青年、透明化の魔術で姿を消していたようだ。


「勝山さん、どうもありがとう。

 ゴルフ中断させてごめんなさい。

 では、またの機会に」


 シローの言葉が終わると、まるでそこにいたのが幻だったかのように、勝山老人は姿を消した。

 曽根が手にしていた、勝山のゴルフクラブも消えている。


「ええと、曽根さんでしたっけ?

 着替えられた方がいいですよ」


 シローが曽根のズボンを指さす。

 ネズミ色のズボンは、股間が黒々と濡れていた。

 先ほどあった襲撃事件で、漏らしてしまったらしい。 

 曽根は、生徒や保護者からの笑いが、林にではなく自分に向けられていたことに、やっと気づいたようだ。

 

「ひ、ひいっ!」


 少女のような悲鳴を上げた曽根が、内股でちょこちょこと舞台袖へ消えると、生徒と保護者が爆笑した。


 ◇


「先生方、そして保護者のみなさん、俺からもお話しさせてもらっていいですか?」


 シローの言葉は、割れるような拍手で迎えられた。

 

「異世界への修学旅行を考えている生徒たち、本当に勇気がある事だと思います。

 そして、見知らぬ地に愛する君を送りだすのに、親御さんが慎重なことを分かってあげてください」


 そのような心配をしてくれる親がいない彼の言葉は、聞く者の心を打った。


「まず、異世界に転移する際の危険をお話しします」


 異世界に棲む魔獣のこと、治安が良くない地域があること、医療体制に関して地球のようなものが望めないこと、そして、彼自身が転移中に他の世界に召喚されたことまで、シロー青年は、一つ一つ丁寧に説明した。

 

 最初、どちらかというと、わくわくした気持ちで話を聞いていた生徒たちが、今は真剣な顔で耳を傾けている。

 保護者、教師は言うまでもない。


「それでは、次に異世界旅行で学べることを話しましょう」


 シローは、彼自身が住むアリスト城下の様子や住んでいる人々の様子などについて話した。


「ケガや健康面の管理ですが、向こうには、確かに地球のような医療技術は発達していませんが、その分、ケガや病気を治癒する魔術が発達しています。

 もし私がケガや病気になったとき、どちらで治療を受けるか選ぶなら、間違いなく異世界です」


 教師と保護者が目を丸くしている。それは、彼らが聞いていたのと真逆な情報だからだ。


「そして、魔獣などの危険についてですが、もし私が住んでいる世界への修学旅行が可能になるなら、『ポンポコ商会』の社員を随行させます」


 体育館の四隅にいた四人の騎士が、一瞬でシローの横に並ぶ。

 舞台奥で椅子に座っていた白騎士が前へ出てきて、五人の騎士が揃った。

 

「現地では、俺の家族や友人も、生徒たちを見守ります。

 生徒たちの夢と希望がかなえられるよう、心から願います」


 シローと騎士たちが軽く頭を下げ、舞台袖に消えると、体育館はしばらくもの音一つしなかった。

 やがて、一人の少女が立ちあがりパチパチ手を叩くと、生徒、教師、保護者が一斉に立ちあがり、拍手を始めた。

 体育館は、割れるような拍手の音がしばらく止まなかった。


 読んでくださってありがとう。

 異世界旅行について、その危険を話した史郎。

 保護者たちは、どんな決断をするのでしょうか。

 明日へつづく。

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