第14話 狐人族領への旅
こりゃ大変!
俺たちのパーティ『ポンポコリン』が、狐人領へ向け出発する日が近づいた。
今までで一番の遠出になるので、俺は十分準備をした。点ちゃんとも、いろいろ打ちあわせておく。とりあえず、ミミとポルには、点を二つずつ付けておく。
『(^▽^)/ ご主人様ー』
何だい、点ちゃん。
『つ(;ω;) 最近、私のこと、忘れてませんでしたか?』
ぎくっ。
そ、そんなことないよ。
『(・ω・) だって、この前の捜索だって、私を使えば、あっという間でしたよ』
……そういえば、そうだね。まあ、でも、あの時は、他の冒険者たちも働いてたからね。点ちゃんに頼むと、彼らの仕事がなくなっちゃうじゃない。
『( ̄ー ̄) ホントにそんなこと、考えてました~?』
ぎくっ。
点ちゃんは、もの凄く役に立つからねー。
『(´艸`*) えー、そんなことないですよ、ウフフフ』
ところで点ちゃん、舞子に付けてた点は、どうなったの?
『(・ω・)つ・ ポータルを通る時に、力を失ったようです』
あーあ、あれが使えてたら、一発で見つけられるのにね。
『d(u ω u) 舞子さんと一緒に、ポータルへ落ちた人に付けてた点も、力を失ってますから。
ポータルとポータルの間に、点を無効化する何かがあると思われます』
なんで、点ちゃんは大丈夫だったの?
『(・ω・)ノ 私を生み出したご主人様と一緒なら、ポータルを通っても大丈夫みたいです』
なるほどね。俺の中の点ちゃんと、誰かに付けた点ちゃんは、少し違いがあるわけか。
あ、そうそう。今まで試してなかったけど、世界の壁を越えて念話することはできないの?
『(・ω・) それも、先ほどと同じ理由で無理みたいです』
残念。それが出来たら、ルルや娘たちと話せるのに……。
でも、この世界に来ても、点ちゃんと一緒だったのは心強いよ。
『(*'▽') エへへへ』
点ちゃん、ありがとうね。
ピカッ
うはっ! 久々に、来たー!
俺の体を、まぶしい光が包む。なかなか、光が収まらない。収まるどころか、さらに光が強くなる。点魔法のレベルアップがあると、なぜか俺の身体が光るのだ。
目を閉じていても、耐えられないくらいまぶしくなった瞬間、光が収まった。
今回のは、特に凄かったね。
点魔法、レベル10か。どんなことが、出来るのかな?
点ちゃん?
あれ?
点ちゃんが、答えない。
点ちゃん、聞いてますかー。
……。
なんだ、これ?
ど、どういうこと?
◇
点ちゃんがいなくなったことは、俺の心に想像以上のダメージを与えた。
いつも一緒にいた友達が、突然いなくなる。それは、こんな気持ちなのだろうか?
強い喪失感は、俺から気力を奪っていた。
なぜ俺が元気をなくしたか、その理由が分からないミミとポルは、自分たちがはしゃぎすぎたのが原因かと思い、大人しくしている。
アンデも心配して、体調が優れないなら、町に残っていいと言ってきた。
狐人族領への旅を心待ちにしている、ミミとポルのことを思うと、そうもいかない。
俺は終日部屋にこもり、ベッドに横になっていた。俺の中で、点ちゃんの存在が、これほど大きくなっていたなんて……。
なぜ、点ちゃんは、いなくなったのだろう?
俺が、あまり相手をしてやらなかったせいか?
ポータルを通った影響が、後から出たのか?
レベルが上限に達したことで、消滅してしまったのか?
最後の考えは、俺の心をさいなんだ。
◇
狐人領へ向け出発する日が来た。
俺は、ふらふらつく足で階下へ降りていった。
「おい、無理するな。
途中で倒れられると、かえって迷惑だぞ」
アンデが、心配してくれる。
こちらは、それに答える余裕もなく、首を左右に振った。
「おい、お前たち二人が、シローをしっかりサポートしろよ!」
アンデが、ミミとポルに話しかけている。
「うん、分かってる」
「はい、気をつけます」
二人は、いつにないほど真剣な顔をしている。パーティリーダーの俺がこんな状態では、自分がしっかりするしかないと考えているのだろう。
「じゃ、行くぞ」
ギルマスのアンデ、二人のギルド職員、俺たち三人の合計六人が旅のメンバーだ。犬人族の族長が高齢のため、今回の族長会議では、アンデがその代理を務めるそうだ。
この世界では、アリストがある世界より、ギルドの力が強いのかもしれない。
旅は途中雨で一日遅れとなったが、魔獣も出ず、しごく平穏なものだった。
幹線道路を利用したこともあるのだろう。道の状態もよく、一団は順調に距離を伸ばした。そんな中、遅れがちにフラフラ歩いている俺を助けてくれたのは、ミミとポルだ。
俺は、パーティメンバーの有難さを痛感していた。
どうにか元気づけようと話しかけてくる、ポルに応えてやることはできなかったが、旅程の最後の頃には、俺もなんとか普段の足取りが戻ってきた。
狐人族領が近づくと、景色は草原から森へと変わりはじめた。
森の中に、特徴ある家々が見えはじめる。
おとぎ話に出てくるような小さな家は、屋根がコケのようなものでできている。
窓には、ちらちら人影が見える。きっと狐人だろう。
◇
最初に会った狐人は、柵のようなものの前に立つ、兵士だった。
犬人に比べると小柄だが、見るからに俊敏そうだ。剣も、レイピアに近い細身のものを腰に差している。頭には、三角耳が出るようにあつらえた、革の帽子をかぶっている。
「こんにちは。
通行証を、見せてもらえるかな?」
男は、丁寧な口調で話しかけてきた。ギルド職員が、六人分の手続きを行う。犬人族の長からの委任状を見せると、狐人の男は慌てて柵の中に入っていった。
少しすると、あきらかに文官とわかる、布の帽子をかぶった狐人の男を連れてくる。
「こんにちは。
ようこそ、狐人族領へ。
私が案内役を務める、ホクトでございます。
どうぞ、こちらへおいでください」
俺たち一行は、狐人の文官に案内され、町の中へと入った。
◇
町は、人族や犬人族のそれと、かなり違っていた。
どこにでも大きな木が生えており、その木に寄りそうように、家が建てられている。
道は、木々を縫うように、蛇行して作られている。森と町が一つになった感じだ。
俺たちは、ひときわ大きな木が林立する地区へと入っていった。
町は、落ちついている中にも活気があり、多くの狐人が行き来していた。人々は、前を合わせた、着物のような服を着ており、耳が出る帽子をかぶっている。
犬人族や人族が珍しいのか、俺たちは、かなり注目を集めていた。
家と家との間隔が次第に広くなり、それにつれて、一つ一つの家が大きくなってきた。
やがて、道の両脇に大木が二列に並んでいるところに来た。その並木の間を歩いていくと、天を突くような巨大な木が現れた。
その根元をとり巻くように、白壁の建物が立っている。建物は折り重なるように建てられており、それがこの国の建築技術の高さを物語っていた。
その建物に続く門を潜る。白壁は近くでみると、絶壁のように、そそり立っていた。
「壮観でございましょう?
我らが領地、自慢のお城でございます」
自慢するだけはある。城という既成概念が、うち壊されるほどの印象だ。
白壁の一部が音もなく奥に引っこみ、四角い開口部を作った。一行は、その中へと招きいれられた。
白壁の内側は、通路となっていた。壁の反対側には半透明なガラスが並んでおり、それが延々と続いている。
俺たちは、白壁とガラスに挟まれた回廊を進んでいく。
前方に現れたがっしりした扉が開くと、その中には大きな空間が広がっていた。上を見ても、天井が見えない。
差しわたし五十メートルはありそうな広間の奥に、大きな椅子が置いてあり、そこに小さな狐人の少女が座っていた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
点ちゃんが……ど、どうしましょう。
とにかく、次回へ。
ー ポータルズ・トリビア - ファンタジー世界の近接武器
今回、狐人の門番が持っていた剣はレイピアに近いものでした。
剣の名前が出たついでに、ファンタジー世界でよく出てくる近接武器の種類を挙げてみます。
小さいと思われるものから順にしてみました。
ナックル 拳に付けるものですね
ダガー 投げて使うことも多い小剣
ショートソード いわゆる短剣
モーニングスター 棒の先に、鎖で鉄球が付いてる
ロングソード いわゆる長剣
レイピア 細い剣
ブロードソード 幅広剣という名前だけど、レイピアに近いみたい
メイス 金属製のこん棒 いろいろ付いてて殴られると痛そう
ハンマー 戦闘用のハンマー
アックス 戦闘用斧
クレイモア・大剣 両手剣




