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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第13シーズン 招き猫と冒険者
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第99話 軍師ショーカの任務

 軍師ショーカがシローたちの旅に同行した、真の目的は?


 一行がパンゲア世界アリストにある、ルルとシローの邸宅に帰った後、マスケドニア国軍師であるショーカは、歩けば三日はかかるだろう距離を、一瞬で祖国まで帰ってきた。シローが使う瞬間移動の魔法だ。


 王宮の庭に現れた彼は、荷物も解かないうちに、国王の執務室へ向かった。

 国王は、アリストに送りこんでいる連絡員からの連絡を受け、すでに彼を待っていた。


「長旅ご苦労だったな、ショーカ。

 よくぞ無事戻ってくれた」


 敬愛する主君からの言葉は、ショーカにとり、なによりのねぎらいだった。

 

「では、さっそく報告を」


 有能なショーカは無駄な時間を省き、いきなり報告に入った。

 

「今回の任務、英雄シローの能力と人となりの調査ですが……」


 彼は、シローと彼の仲間が旅行中に見せた能力について事細かく報告するとともに、それについて評価した。

 最後まで黙って聞いていたマスケドニア国王は、しばしの沈黙の後、重々しい声で言った。


「やはり、それほどの能力か。

 それに、彼に関わる者たちが、思わぬほどの力を持っていたとはな……。

 そして、そちの結論はどうなのだ?

 英雄シローが、世界の、そして我々の脅威となる可能性はあるのか?」


 そう、それを知る事こそが、国王が軍師ショーカをシローたちの旅に同行させた目的だった。 

 

「彼の人となりから見て、その可能性はまず無いでしょう。

 シローは権力や名誉に、全く興味がありません」


「では、ひとまず安心してよいのだな?」


「……それが、そうとも言いきれません」


「なぜだ?」


「旅行中の事を思いだそうとすると、一部記憶の欠損があるのです」


「記憶の欠損?」


「はい。

 エルファリア世界、ボナンザリア世界に関する記憶の多くが抜けおちております。

 その他の記憶も、一部が抜けています」


「どういうことだ?」


「なにかの能力だとしか推察できません。

 このような場合に備え、魔術的な防御を施した帳面に記録を取っていたのですが、該当する範囲のものだけが綺麗に抜きとられておりました」


「……まるで、お主の記憶がのぞかれていたようにだな?」


「仰せの通りです。

 ただ、前後の出来事から察するに、神樹様と聖樹様に関する部分、そして、特定の商品に関する部分が消されているようです」


「そうか……そうなると、お主を派遣して正解だったな」


 わずかなヒントから失われた記憶を再構築するなど、普通の者には到底出来ることではない。


「陛下、彼を見張るためアリストに送りこんでいる者たちを、すぐ引きあげさせてください」


「なぜだ?」


「記憶を消せるなら、記憶を書きかえることもできるかもしれません。

 そうなると、誤った情報に踊らされることになりかねません。

 それに、工作員たちの記憶から、こちらの情報がもれる可能性もあります」


「なるほど、あい分かった。

 その件、ただちにとりかからせよう」


 コトリ


 そんな音がしたので、国王とショーカは同時にそちらを見た。

 執務室には、部屋の隅に小さな丸テーブルがあり、そこに置かれた花瓶には、侍従の手で王宮の庭園から採ってきた季節の花が活けられている。

 いつの間にかそれが消え、代わりに木桶が置かれていた。


 ショーカが駆けより、干草で編まれた蓋を外すと、独特の匂いがたち昇った。

 最近まで、その匂いを知らなかったショーカだが、今ならそれが何かはっきり分かる。


「海の水?

 これは……」


 ショーカが木桶から取りだしたものは、真珠色をした大粒の二枚貝だった。

 彼が初めて見るものだ。

 木桶には貝がぎっしり詰まっている。

 シローたちがボナンザリア世界の海で遊んだ時、彼はそれに参加していなかったのだ。


 ふと見ると、木桶の後ろに封筒が置いてある。

 それは上質の紙で、凝った模様で飾られていた。

 明らかに異世界のものだろう。


 濡れた手を布で拭うと、ショーカは封筒を手に取った。

 その中には、光沢のある上質な紙につづられた手紙が入っていた。

 

『旅の間、仕事を手伝ってくれてありがとう。

 これは「貝」という食材で、ヒロコ王妃様が調理法をご存じです。

 一両日中に召しあがってください』


 その下には、何で押したのか、円の上に小さな円が三つ連なる判が押してあった。

 ポンポコ商会のマークとも違うそれに、ショーカは戸惑った。

 もしヒロコ王妃が見れば、すぐに肉球マークだと分かっただろう。


「陛下、シローからのようです」


 ショーカは、手紙を国王の前に広げると、その横にコトリと貝を置いた。


「シロー殿からの土産か?」


 陛下の言葉に、しかし、ショーカの顔色は冴えなかった。


「これは……彼のことを詮索するなという警告です」


「ショーカよ、それは考えすぎではないか?」


「いえ、まず、間違いありません。

 この「貝」なる食材をよくご覧ください」


「ふむ、二枚の蓋のようなものがかみ合っておるな?

 サザール湖にも小型のものならいたはずだが」


「これは口を閉じている様子を表していると思われませんか?

 それに、これが届いたタイミングをお考え下さい」


「言われてみれば、そちの言うとおりだ。

 恐ろしい男だな、シロー殿は」


 国王がそう言った時、彼の目の前にあった手紙の上に、ひらりと何かが舞いおちた。


「なんだ、これは?

 シロー殿が以前見せてくれた『シャシン』のようじゃが……。

 ふむ、やはりシロー殿には世界を征服しようなどという野心はないようだな」


「陛下、それはなぜでしょうか?」


 国王は舞いおちたものを手に取ると、向きを変え、ショーカの前に突きだした。

 それは大振りの紙で、四つに区切られたそれぞれに二人の男女が色鮮かに映っていた。


「こ、これはっ!」


 驚きのあまり、ショーカの手か紙が落ちる。

 再びそれを手にした国王が、意味ありげな笑みを浮かべながら、からかうように言った。


「これは、シロー殿の友人、黒騎士であろう。

 ずい分、彼女と仲良くなったものじゃな」


 シートには、ショーカと黒騎士、二人が映った写真が四カット貼りつけられていた。


「へ、陛下、誤解です!

 私と彼女は――」


「はははは、ごまかさずともよい!

 どのシャシンも良い瞬間を捉えておる」


 陛下が指さしたカットには、シローが教えた「指相撲ゆびずもう」という遊びに熱中する黒騎士とショーカの姿があった。

 少し前かがみになった二人は、互いに握った手の上で、真剣な顔で相手の目を覗きこんでいる。


 そのとき、ノックの音がして、ヒロコ王妃が部屋に入ってくる。


「ショーが帰ってきたって聞いたんだけど……あっ、お帰りショー!」


「これは、王妃様。

 ただいま戻りました」


「ヒロコ、シロー殿が良いものを送ってくれたぞ。

 そなたが料理法を知っておるそうだが」


「うわあっ!

 これなに、ハマグリ?

 それにしては光沢があるわね。

 とにかく、これはきっと美味しいわよ。

 料理長に調理法を教えとかないと」


「あとな、このシャシンとかいう――」


「陛下、それはご勘弁を!」


「なになに、ショー、なに隠してるの?

 さあ、見せてごらんなさい!」


 マスケドニア王宮、国王の執務室からは、場所にそぐわぬ賑やかな笑い声が聞こえてきた。


 いつもお読みいただきありがとうございます。

 やはり、軍師ショーカの同行には裏があったようです。

 もっとも、ほとんど役には立たなかったようですが。

 次話、にぎやかな『ポンポコ商会』支店長会議。

 明日へつづく。

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