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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第13シーズン 招き猫と冒険者
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第97話 薬師の本分

 ルエラン君が何か発明するようです。

 


 晩餐会の翌朝、俺たちは、陛下や王妃、ルナーリア姫、シュテインに別れを告げた。


「シロー、あなたを『マンボウ騎士』に任じます」


 ルナーリア姫の言葉で、この国での役職が一つ増えてしまった。

『オコ騎士』『モフモフ騎士』『マンボウ騎士』の三つになっちゃったね。


『(*'▽') ご主人様、ぱねー!』


 またもや! 点ちゃんは、面白がってるだけだね。


 立ちさる前に、みんなが王都を空から見たいということなので、点ちゃん1号で飛ぶ。

 一時間もせず、ベラコスの街に着いた。

 ギルドのサウタージさんに挨拶してお土産を渡した後、『ルエラン薬草店』を訪れる。

 店に入ると、やけに興奮したルエランが奥から跳びだしてきた。


「シローさん、聞いてください!

 凄いですよ!」


 何が凄いんだろう?


「ル、ルエラン、ちょっと落ちついて!

 何があったの?」


「あっ、その前に、ハナとケロ、二人を派遣してくださってありがとうございます。

 よく働いてくれて助かってます」


「ええと、ハナとケロって誰だっけ?」


「シロー、森で会った例の二人では?」


 ルルが教えてくれる。


「ああ、あの二人か!

 君の役に立ってるなら、俺も嬉しいよ」


 ハナとケロって、ハンナとケロベスのことだね。分かりやすい名前にしたものだ。

 だけど、「ケロ」ってカエルみたいだな。


「では、凄い発見をお見せしますから、一人で調合室に来てください」


「俺一人だけ?」


「ええ、よろしくお願いします」


 これは、本当に凄い発見かもしれない。

 何事にも控え目なルエランが、そんなことを言うなんてね。


 ◇


 家族や仲間をルエランの母親フィナさんに任せ、俺はルエランと二人、薬剤店の奥にある調合室に来ている。

 整理整頓がモットーのルエランには珍しく、調合を行う器具の周辺はビーカーやフラスコが雑然と並べられていた。


 ルエランは、台の上に置いてあった小型のナイフを手にすると、いきなりそれで自分の手のひらに切りつけた。

 当然、傷口が開き血が流れだす。


「おいっ!?」


 ギョッとした俺に、ルエランが落ちついた声を掛けた。


「よく見ていてください」


 彼はそう言うと、小さな容器に入れてあった、琥珀色の液体をほんのわずか、血まみれの手に垂らした。


 シューッ


 そんな音を立て血が泡立ち、少しするとそれが収まった。

 ルエランは、傷を負った手のひらを布で拭いた。

  

「えっ!?」


 そこにあったはずの傷は、綺麗に消えていた。

 ピンク色の線が残っているから、そこに傷があったのだろう。


「こりゃ凄い!」


 同じような事は舞子の呪文でも可能だが、これはさっきの液体さえあれば、誰にでもできるからね。


「『神薬』と名づけました。

 中心になった素材は、これです」


 傷が消えた彼の手には、薄い紙のようなものが載っていた。


「あっ、それって神樹の種を包んでいるヤツだね」


「そうなんです。

 種を植えた後、この素材を調べていて、成分がエリクサーに似ていると気づいたんです」


「点ちゃん、エリクサーってなに?」


『(*'▽') 別名「蘇生薬」と言われる、万病に効く薬の名前ですね』


「ルエラン、なんでそんな薬の成分を知ってたの?」


「以前、運よく素材が手に入り、手掛けたことあるんです。

 この薬草店も、そのとき儲けたお金で建てました」


 新しく『ポンポコ商会』に参加したこの若者は、思った以上に大物だったらしい。


「シローさん、この素材ですが、他にお持ちではありませんか?」


 やばい。何がやばいって、そんな凄い素材が大量にある。

 以前、『神樹戦役』に参加した人たちに神樹の種を配った時、それを包んでいた紙のようなものは、「ゴミ」として全部回収してあるからね。

 

「ええと、一万枚ほど持ってる」


「えええっ……!」


 ルエランのくりくりした目が、白くなったり黒くなったりしてる。

 ちょっと面白い。


『(; ・`д・´) 不埒ふらち者ーっ!』


 ◇


 神薬の話があるから、ルエラン、彼の母親であるフィナさん、それと俺の三人だけでお茶をすることにした。

 俺は、ルエランが作った新しい薬の話をした後、自分の考えを口にした。


「フィナさん、そういうことですから、『ルエラン薬草店』が『ポンポコ商会』に入るかどうか、もう一度、考えてください。

 ぶっちゃけた話、そのまま神薬を売る方が、儲けられると思いますよ」


「難しい事は分かりませんが、息子ルエランは、自分の考えを変えないと思いますよ」


 微笑んで言うフィナさんに、ルエランが続けた。


「ボクは薬師です。

 薬師の本分は、より多くの方を病やケガから回復させることだと思うんです。

 そのためには、『ルエラン薬草店(ウチ)』が『ポンポコ商会』に入った方がいいんです」


 なるほどなあ、薬師の本分か。

 ルエランは、間違いなく本物の薬師だね。


 俺は、そんな人物が『ポンポコ商会』に入ってくれたことを嬉しく思うとともに、彼が言ったとおり、薬によっていかに一人でも多くの病人を救うか、その責任の重さを痛感していた。


 いつもお読みいただきありがとうございます。

 神樹を包んでいた紙のようなものが、そんなに貴重なものだったなんてね。

 それに気づいたルエラン君はさすがです。

 次回、聖樹様への報告です。

 明日へつづく。

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