第12話 奪う者たち
一つ一つの話が、幾重にも繋がっていく。
それが、ポータルズです。
今回と次回は、いろいろなエピソードへと重なっていくお話となっています。
後書きには、女王様が登場。
コネカ村は、ケーナイの町から南西に位置する、小さな犬人族の集落だ。
典型的な農村で、豊かではないが、人々は毎日食べていくのに十分な恵みを大地から得ていた。
お昼時が過ぎ、昼寝をするものが多い時刻にそれは起きた。
突然、木を打ち鳴らすような音がすると、村のいくつかの家から火の手が上がった。枯れた植物の茎を編んだ屋根は、いったん火が着くと、巨大なたいまつとなる。
燃えた家から飛んだ火の粉が周囲に降りかかり、炎はあっという間に燃えひろがった。
逃げ惑う人たちを、輪になった縄が捕らえる。縄を振りまわしているのは、白いローブをかぶった男たちだった。
「一人も逃がすな!」
リーダーらしきローブが叫ぶと、今まで物陰に隠れていた者も村人に襲いかかった。十分もしないうち、村人はそのほとんどが縄で繋がれ、一か所に集められていた。
「この子は、まだ子供です。
許してください」
叫んでいる母親に、容赦なく鞭が飛ぶ。気を失った母親は、ローブを着た者の手で、荷馬車に投げこまれる。
物陰に隠れていた村人が、略奪者の一人にクワで殴りかかる。攻撃をするりとかわしたローブは、持っていた槍で村人の胸を突きとおした。
「反抗するものには、容赦するな!」
死にかけた男から槍を抜きとりながら、男は良く通る声で宣言する。村人が振るったクワに払われたフードの下から現れたのは、白い頭髪を持つ獣人の顔だった。
人族よりゴリラに近い面相をしている。しかし、その目には知性と冷酷な光があった。男は、一際小柄なローブに近づいていく。
手を胸に当て、礼を示してから報告をする。
「ソネル様、任務完了でございます」
小柄なローブは小さく頷くと、次の命令を出した。
「すぐに、出発してもらえる?」
聞こえてきたのは、女の声だった。
「はっ」
大柄な獣人は頭を下げると、すぐ部下に命令した。
「直ちに、出発せよ」
繋がれた村人を乗せた馬車が、すすり泣く声を漏らしながら、次々と南へ動きだす。最初に火の手が上がってから、三十分も掛かっていない。恐らく、ローブの襲撃者は、何度もこのような任務をこなしてきたに違いない。
後には、すでに燃えおち、くすぶる家の瓦礫と、放置された農具が残されているだけだった。
◇
その日、俺は、ギルドの掲示板で次の依頼を探していた。
初回任務は、俺たちのパーティに思わぬ収入をもたらしたが、それでも、かなりの赤字だった。安定した収入を得るには、コツコツと依頼をこなしていくしかない。
舞子が見つかるまで、どれほど時間が掛かるか分からない以上、まずはきちんと収入を得る必要があった。
その時、ギルドの表扉から、息を切らせた冒険者が駆けこんできた。
「ま、またやられた!
今度は、コネカ村だ!」
彼は悲痛な表情でそう言った。
ギルド内にいた冒険者がざわつく。
「またか!
どうなってるんだ!」
「防衛隊は、何してるんだ!」
「コネカ村……ば、ばあちゃんがいる村だ……」
何か良くないことが起きているのは分かっていたが、よそ者の自分が出しゃばってもいけないと思い、俺は黙って様子をうかがっていた。
「報告を聞こう」
奥からアンデが出てくると、報告を持ちこんだ冒険者を連れ奥に入った。しばらくたって、二人が出てくる。
「みんな、聞いてくれ。
また、何者かによる襲撃があったらしい。
調査依頼を出すから、銀ランク以上は、なるべく参加してくれ」
アンデは、俺の方をちらっと見て頷いた。
なるほど、手伝って欲しいってことだな。
「すぐに、会議を始めるから、パーティリーダーは手分けして、メンバーに声をかけてくれ」
少しすると、受付のお姉さんが、急いで作った依頼書を壁に貼りだした。
銀ランクの討伐依頼コーナーだ。ということは、戦闘になる可能性があるということか。今回、ポルとミミは、お留守番だな。
討伐内容 コネカ村の調査
必要討伐数 無し コネカ村で起ったことを調べる
場所 ケーナイ南西のコネカ村
報酬 一人につき銀貨二十枚
期限 無し
<注意> 調査隊の出発までに申しこむこと
調査だけで銀貨二十枚か。かなり危険な依頼だな。
俺は、すでに手伝う気になっていたが、命の危険があるようなら、任務放棄も辞さないつもりだ。
舞子の捜索という目的がある以上、ここでつまづくわけにはいかない。しかし、困っている獣人たちを黙って見過ごすこともできない。
アンデに参加を告げると、一旦、自分の部屋に戻った。
砂漠に近いということだから、水の魔道具は必要だろう。靴の中に砂が入らないための砂除けや、砂から目を守るゴーグルも必要かもしれない。
テーブルの上に必要なものを、用途ごとに分類して置くと、それぞれ点魔法で収納していく。
俺にしか見えない点魔法の文字で、但し書きを付けておく。
「武器・防具」「食料・調理器具」「砂対策」「着替え」
こうしておけば、必要な時に必要なものが、すぐ取りだせる。
水の魔道具と金属製のコップは、使いやすいように腰のポーチに入れる。忘れ物が無いか確認すると、部屋を出て大部屋に向かう。
ここで、今回の任務に向けた打ちあわせが行われる。部屋に入ると、すでに席の半分くらいが埋まっていた。
俺の姿を確認したアンデが、声をあげる。
「じゃ、始めるぞ」
この打ちあわせで、大陸南部の猿人族が北の部族を襲っている事実を知った。
すでに、いくつかの部族が滅んでいること。
その滅んだ部族の一つが、狸人族であること。
最近起こっている襲撃は、その手口からして、猿人族のものではないと思われているが、疑いは捨てきれないこと。
猿人族の背後に、人族の存在があるらしいこと。
それは、猿人族が魔道武器をよく使う事実からの推測であること。
なるほど、最初町に来た時に、武器屋でけんもほろろの対応をされたのは、こういう理由があったためか。
「よし、各パーティは、リーダーの指示に従ってくれ。
食事が終われば、すぐ出発するぞ」
すでに日は落ちかけていたが、夜通しの強行軍を行うらしい。まあ、事態の緊急性を考えたら、当然の判断だろう。
ただ、夜からの調査となると、危険がさらに増すのは間違いない。
自然と気がひき締まる思いだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
畑山「作者。最近、私の出番がないじゃない」
作者「え!? でも、今は獣人世界編だから……」
畑山「私の身分を言ってみなさい」
作者「えー、聖騎士様で?」
畑山「違うわよ! もう、しょうがないわね。もう一つの方よ」
作者「ははーっ、女王様です」
畑山「そうそう、それよ。女王様の言うことは聞くのが当然でしょう」
作者(この人、こういうところ、ミミに似てるよな)
畑山「何か言った?」
作者「いえ、何も」
畑山「じゃ、何とかしなさいよ」
畑山のムチャ振りに、頭を悩ませる作者だった。




