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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第13シーズン 招き猫と冒険者
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第64話 反省と出発

『田園都市世界』ともいよいよお別れです。


 


 バーベキューの翌朝、一夜を明かした点ちゃん1号から外に出る。

 場所はタムと銀さんの隠れ小屋がある森だ。


 白銀色の機体と並び、半球状のドームテントがある。


「ミミ、ポル、ちょっといいかな?」


 テントの入り口で声を掛ける。


「……はい」


 蚊の鳴くような、ポルの声がする。

 入り口のアイコンに触れ、開いた入り口から中に入る。

 そこには、片隅で膝を抱えたミミとポルがいた。

 耳が力なく垂れ、目の下に隈ができている。

 昨日は一睡もしていないようだ。

 この二人、食いしん坊なのに、昨日は食事もとらなかったんだよね。


 俺は壁にはめ込まれた収納から、ちゃぶ台を出すと、それをテントのまん中に置いた。 小型コンロでお湯をわかし、それでお茶をいれる。

 地球で買ってきた、猫の絵がついたカップをミミの前に、狸の絵がついたカップをポルの前に置く。

 とっておきの『黒蜂蜜』を一さじずつ垂らす。

  

「二人とも、とにかくまずこれを飲んで」


 二人が動こうとしないので、少し厳しく言う。


「さあ、早く飲んで」


 ミミとポルは、のろのろとちゃぶ台の横に座った。

 二人はカップに少し口を着けたが、下を向き黙ったままだ。


「昨日のアレは最低だったね」


 俺はハッキリ言葉にした。

 俯いたミミとポルの下にあるちゃぶ台に、ぽたぽた涙が落ちる。


「君たちは、タムや銀さん、エミリーやハーディ卿を危険にさらしたことになる」


 二人から嗚咽が洩れる。


「だけど、あの巨大カニと対峙して、自分の命を守れたのは大したものだ」


 それを聞いたミミとポルは、ちゃぶ台に伏せ、声を上げ泣きだした。


「自分の命を守るために、冒険者はギリギリの決断を迫られることもある。

 あの場合、俺とリーヴァスさん、翔太の姿を確認した次点で、砂山の横へ迂回うかいすべきだったね」

 

 その三人なら、『岩蟹いわがに』でも対処できるからね。

 しかも、カニの注意がミミとポルに向いているなら、なおさら対処は簡単だ。


「俺たちは命懸けの仕事をしているけど、いつもはそれに気づけないこともある。

 その油断が死に繋がる」


 最後の言葉は、低い声で言う。

 ミミとポルがやっと顔を上げ、こちらを見た。

 まっ赤な目で、二人が昨日からたくさん泣いたと分かる。


「失敗しても、生きのこれたなら、これからに活かせる。

 君たち二人なら、きっとこの失敗を越えられると信じてるよ」


 俺は二人の頭を撫でると、テーブルに二人分のカニ料理を置き、テントの外に出た。テントの外には、リーヴァスさんが立っていた。

 彼も二人の事が気がかりだったのだろう。

 彼は頷くと、俺の背中をぽんぽんと軽く叩いた。  


『(@ω@) ご主人様がリーダーらしいことをした!?』

「ミー?!」(なんだこれ?!)


 点ちゃん、ブランちゃん、ちょっと驚きすぎ!


 ◇


「ボク、一からやり直します!」

「私も、一からやり直します!」


 昼前にリーヴァスさんの所にやってきたポルとミミは、腰を直角に曲げ頭を下げると、大きな声でそう言った。


「そうですか。

 なんにせよ、これから次第ですな」


 言葉は厳しいが、リーヴァスさんの顔は優しかった。


「パーパ。

 ミミとポル、どうしたの?」 

「どうしたの?」


 ナルとメルが不思議そうな顔で、ミミたちを見ている。

 俺はそんな二人の耳に、あることを囁いた。


「あっ、ナルちゃん、尻尾しっぽはダメ!」

「メルちゃん、尻尾はヤメテー!」


「ぽるっぽー!」

「みみっぽー!」


 ナルとメルが、二人の尻尾に飛びかかっている。

 二人とも反省してるから、今回の罰は、これくらいにしておこう。


 ◇


 この世界での締めくくりとして、みんなで街にある倉庫に来ている。

 この倉庫は以前「肥料」が大量に積んであったが、今では空っぽでガランとしていた。

 俺が指を鳴らすと、倉庫の七割程度まで袋が積みがる。

 

「これ、小麦粉っていって、お好み焼きの材料です。

 いろんな調理法があります。

 簡単な説明を渡しておきますね」


 点魔法で作ったレシピ帳を渡す。

 

「生の肉は保管が難しいので、乾燥肉を置いていきますね。

 あと、このソースを掛けてから、こちらの袋の中身を掛けてください」


 おたふく印のソースと、カツオの袋、塩の袋も何箱分か置いていく。

 

「す、すごい!

 いいのですか、こんなに?」


 銀さんが、申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「ははは、あの青い宝石、きっと凄い値段で売れますから。

 まだまだ、こんなものでは足りませんよ」


「その『値段』というのがよく分かりません。

 書物から知識はあるのですが……」


 それはそうだよね。この世界ってお金なんてなかったから。


「この世界は、膨大な富が眠っています。

 他の世界との交流において、それは強みになります」


「そ、そうですか。

 全部シローさんに頼るようなことになりますが――」


「お気にせず。

 俺も十分儲けるつもりですから」


『( ̄▽ ̄) 十分儲ける? めちゃくちゃ儲ける、じゃないの?』

「ミミー!」(その通り!)


 まあ、その辺はね。 


 ◇   


「では、銀さん、近いうちに『学園都市世界』から人が来ますから」


「ありがとう。

 それを聞いたら、少しがんばれそうです」


「なにかあれば、必ず俺に話してください」


「ええ、そうさせてもらいます。

 タム、おいで!」


 倉庫の中を走りまわっている子供たちの中から、タムがこちらにやってくる。

 

「皆さん、もう帰られるそうよ」


「えーっ!?

 ナルちゃん、メルちゃんは?」


「すまないな、タム。

 ナルとメルも帰るよ」


「えー!?

 エミリーさんと、ショータさんは?」


「みんな帰る」


「イヤだ!

 兄ちゃん、帰っちゃヤだ!」


「タム、この袋とこの箱あるだろう?」


「……どうして帰っちゃうの?」


「これでお好み焼きが作れるぞ!」


「えっ!?

 ホント?」


「ああ、また来るから、それまでにタムのオリジナルお好み焼きを作っておいてくれ」


「うん!

 めちゃくちゃ美味しいの作るからな!」    


「ナルとメルもオリジナルお好み焼き考えておくから、食べくらべしような」


「うん!

 ナルちゃんとメルちゃんのより旨いの作るぞ!」


 銀さんがタムの頭を優しく撫でている。


「じゃ、みんな集まって」


 倉庫の空きスペースで、俺たち家族と仲間が輪になる。


「タム君、またね!」


 エミリーがことさら明るい声を掛ける。


「また会おうね!」


 翔太が笑顔で手を振る。


「「お好み焼きー!」」


 ナルとメルはそれを挨拶に代えるようだ。


「「「宝石探しの先生、ありがとうー!」」」


 ルル、コルナ、コリーダが声を合わせる。


「兄ちゃん、絶対また来てくれよ!」


「ああ、前の約束も守っただろう?

 必ずまた来るからね!

 じゃあ、銀さん、タム、またね!」


「「「またねー!」」」


 俺たちは、新世界群の一つ、『結び世界』へ向け転移した。


 いつもお読みいただきありがとうございます。

『田園都市世界』でのエピソードいかがでしたか?

 次話から舞台は、科学の進んだ都市国家が、二つの国を実験的に戦わせていた『結び世界』へ移ります。

 明日へつづく。

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