第10話 獣人の歴史
隠れ里の長から獣人の歴史が語られます。
なぜ、聖女は獣人世界で崇められているのでしょうか?
里長は、聖女舞子に次のような話をした。
昔、この大陸には、獣人たちが共存していた。
それぞれの種族がそれぞれに適した土地に集まって住み、種族間の交流も盛んだった。
争いは、ほとんど起こらなかった。それは、細長い大陸の中央辺りに大きな森が広がっており、そこに神獣が棲んでいたからだ。
神獣はテレパシーを使い、各部族の長と交信することができた。いや、神獣と交信できる者だけが、長として選ばれた。
神獣はとても強く、そして、賢かった。時には私欲から争いを引きおこそうとする者もいたが、神獣の叡智と、その手足となって働く部族長たちの前に、なす術もなく敗れさった。
変化が訪れたのは、三百年程前だ。
大陸中央の森が、少しずつ消えはじめた。消えたところは草原や砂漠となり、神獣が棲めない環境となった。
二百年前には、中央の森、そのほとんどが姿を消し、同時に神獣もどこかへ行ってしまった。それにつけ込むように勢力を伸ばしたのが、大陸南部に住んでいた猿人族だ。
猿人は、普通なら通れないはずの、危険な砂漠を渡る術を持っていた。砂漠を通って他の地域に現れては、略奪や殺人を繰りかえした。
南部近くに村がある他種族は、早々に姿を消した。
犬人族の中には、このようなことが起こったのは、異世界から魔道具がもたらされたためだという考えが生まれた。
この考えから、大陸北部の山岳地帯に隠れ、魔道具を使わない生活を始めた人々が、この村の祖先だそうだ。
「それで、なぜ聖女のことを、このように扱うようになったのですか?」
「二百年前、多くの神獣様が聖女様に救われたそうです。
そして、神獣様がお姿を消すとき、各部族の長に、テレパシーでお告げをしたのです」
「お告げ?」
「ええ。
『我われは、聖女に救われた。もし再びこの地に聖女が現れるようなことがあれば、これを敬いたてまつれ』
そういうお告げだったそうです」
この集落の人々が聖女を敬う原因が、そんな昔のお告げにあったなんて。
舞子は、見えない大きな力に自分が動かされているような気がするのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
神獣とは一体何か、気になるところです。
聖女舞子は、この後どうなるのか。
これからのポータルズにご期待ください。




