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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第13シーズン 招き猫と冒険者
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第58話 『田園都市世界』の変化

 久しぶりに訪れた『田園都市世界』

 史郎がここを訪れた後、どのような変化があったでしょうか?




 俺たちが乗る「バイク」は一時間もかからず、この世界唯一の街に着いた。 


「あーあ、もう終わりかー。

 もうちょっと乗っていたかったなあ!」


 うわー、黒騎士がめちゃくちゃしゃべった。よっぽど楽しかったんだね。


 俺たちを目にした道行く人々の顔には、かつて見られなかった驚きの表情が浮かんでいるように見えた。


「「「あっ!?」」」


 俺が全ての点ちゃん4号を一度に消すと、住人の何人かが声を上げた。

 

 俺は地面に落ちている紙クズを拾いあげた。


「ゴミだ!」


「お兄ちゃん、なんでゴミで驚いてるのよ!」


「それは驚くよ、コルナ。

 この世界はね、話したように少し前まで何から何まで管理された世界だったんだ。

 だから、以前はゴミ一つ落ちてなかったんだよ」


「うーん、説明されても、理解はできないわね」


「まあ、そうだよね」


 実際には、生死まで『罪科者』と呼ばれる少数の人々によってコントロールされていたわけだからね。

 

 俺たちは、街の中心近くにある、大きな建物に入った。

 ここは、かつて住民に食事を支給する場所だったが……。


 戸口が開けはなされた、広い部屋では、二十人程が食事をしていた。

 半数ほどは一人だけで食事しているが、あと半分は、二人三人で集まって食事している。

 こんなところにも、変化が見てとれた。


「ああっ!

 兄ちゃん!」


 一人の少年が、椅子を倒して立ちあがる。

 彼は俺に跳びついてきた。


「タム、元気にしてたかい?」


 相変わらず質素なローブを身にまとった少年は、俺に顔を押しつけ泣いている。


「どうしたの?

 どこか痛いの?」

「いい子いい子ー」


 ナルとメルが、さっそくタム少年の頭を撫でている。

 お姉ちゃんぶってるけど、彼女たちよりタムの方が少し年上に見える。

 少し見ないうちに、タムは背が伸びたようだ。


「シローさん、本当に来てくださったんですね……」


 涙を浮かべた初老の女性がタムの肩に手を載せる。かつて銀の仮面を着けていた彼女は、あれから苦労したのか、少し痩せて見えた。


「銀さん、お久しぶりです。

 とにかく、座って話をしませんか?」


 店のテーブルは全て一人用の小さなものだから、一角のテーブルを部屋の隅に寄せ、スペースを作り、そこに土魔法で大きめのテーブルを造った。

 全員がその周りに座る。


「パーパ、ここでご飯食べるの?」


 メルはお腹が減っているようだ。


「うーん、ここの食事はまずいんだよね。

 ちょっとだけ食べてみようか」


 奥から出てきた少女から木のお椀とスプーンを受けとる。

 みんなが一口ずつそれを食べる。

 全員、眉をしかめている。

 まずいんだよね、穀物をお湯でふやかしただけだから。


「この世界の人って、こんなもの食べているの?

 あっ、ごめんなさい」


 コリーダは思わず言葉を洩らし、すぐに銀さんに謝った。


「美味しくないでしょう?

 私たちにとって当たり前の食事ですが、シローさんに頂いたものを食べてみて、もっと美味しいものがあるって気づきました」


 タムが期待を込めた目で俺の方を見ている。


「タム、お好み焼き食べるかい?」


「うん!」


 期待していたのだろう、タムは椅子から跳びあがった。

 

「ようし、じゃ、一人一枚ずつ食べるかな」


 大阪は『おこじゅー』のおばさんが焼いてくれた、熱々のお好み焼きが各自の前に現れる。


「「わーい、おこだー!」」


 お好み焼きが大好きな、ナルとメルが喜んでるね。

 

「「「いただきまーす!」」」


 みんながお好み焼きを食べはじめる。


「うーん、これは美味しい!」


 ショーカが感心している。

 フォークとお箸、両方用意したが、驚くことにショーカはお箸を器用に使いこなしていた。

 きっとヒロ姉や加藤から習ったのだろう。

 それを見た黒騎士が、やけに驚いた顔をしていた。

 ショーカのことを、ちょっとは見直すかもしれない。


「兄ちゃん、やっぱり、これうめえな!」


 ソースで汚れたタムの顔を銀さんが拭いている。


「お替りもあるぞ」


 俺の言葉を聞いて、タムだけでなくナルとメルまで喜んだ。


「「「わーい!」」」


 みんなが美味しそうにお好み焼きを食べるのを、現地の人たちがじっと見ているのが印象的だった。

 ここの人たち、以前はそんな反応しなかったからね。


 ◇


 食事の後、銀さんの案内で教育施設を訪れた。

 二階建ての白い建物には教室がたくさんある。

 かつてはここで、『罪科者』による思想教育が行われていた。

 書籍を並べた図書館らしき部屋で、この世界のお茶を飲みながら、俺がこの世界を離れた後のことを聞く。 

 

「それはもう大変です。

 あれから子供が生まれていませんから、人口は増えていませんが、十人の『罪科者』がやっていた仕事を一人でしていますから」


 だよね、銀さんがやつれているのもうなずける。


「俺からの提案なんですが、『学園都市世界』からの援助を受けませんか?」


「あのー、『学園都市世界』というのは?」


「この世界の制度を作った世界です」


「しかし、それだとまた以前のように『罪科者』が現われるのではありませんか?」


 銀さんは凄く不安そうだ。


「ははは、ご安心ください。

 俺が所属している『ギルド』という組織があるのですが、そこが彼らを管理すれば問題は起きませんよ。

 困難はあるでしょうが、この社会を少しずつ良い方へ変えられるはずです」


「あ、ありがとうございます。

 シローさんは、なぜそこまで私たちのために?」


 これには、リーヴァスさんが答えてくれた。 


「私も、『銀さん』と呼んでもよろしいかな。

 銀さん、このシローは、困っている人を放っておけない質でして。

 彼に任せておけば、心配ありませんよ」


「そ、そうですね」


「ギルドには、異世界間でも連絡する手段があります。

 何かあれば、すぐ私たちに知らされます。

 ご安心ください」


 金ランクの冒険者であり、ギルドのことにも詳しいルルが口添えしてくれる。


「それに、『学園都市世界』の人で、お兄ちゃんの言うこと聞かない人なんていないよね」


 コルナ、そんなこと言っちゃうと、俺のこと魔王的な何かだと思われちゃうでしょ!


「シローって、ちょっと『魔王』みたいよね」


 コリーダ……やっぱり俺の心を読んでる?


『(*'▽') わーい、ご主人様が魔王!』 

「ミュー!」(魔王!)


 いや、点ちゃん、ブラン、そこ喜ぶところじゃないから。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

『田園都市世界』は少しずつ変わりはじめているようですね。

 次話、みんなで宝石探しです。

 明日へつづく。

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