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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第13シーズン 招き猫と冒険者
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第53話 新商品お披露目

 またまた黒い史郎が……。


『( ̄▽ ̄) ホント、まっ黒ー』

「ミー!」(だね!)


 ドラゴニアの『ポンポコ商会』が、新商品をお披露目する日となった。

 場所は、建てたばかりの『希望の家』、二階の会議室だ。

 あいにく小雨模様の天気となったが、お客の入りは上々だ。

 広い会議室が、人で一杯だった。

 参加者は、青竜族、赤竜族、白竜族、黒竜族の貴族たち、支店の常連さんたち、そして、地方にある村からのやってきた人たちだ。

 

 幾つか置かれたテーブルの上には商品サンプルが置いてある。

 お客さんは、それぞれ興味ある商品が展示されたテーブルに集まっている。

 特に混雑しているテーブルに近づくと、そこにいた青竜族の老人が俺に話しかけてきた。


「シロー殿!

 お久しぶりじゃな!」


 最初は誰か分からなかったが、横に立つがっちりした中年の竜人を見て思いだした。


村長みらおさ、ルンドさん、お久しぶり」


 かつて思わぬ転移に巻きこまれドラゴニア世界にやって来た時、最初に出会ったのが彼らだ。

 遠くの村から、はるばるここまで来てくれたんだね。


「治癒の薬が手に入るかもしれないと聞いてな。

 居ても立っても居られなかったのじゃ」


 この世界では、他の世界に比べ、病気やケガに対し十分な対策がとられていない。


「今回展示している水薬ポーションは、村の薬師さんに卸す予定ですが、それでよろしいか?」


 そうしないと、薬師の仕事を奪ってしまうことになるからね。


「ケガや病が治るなら、大歓迎じゃよ。

 薬師は来ておらぬが、村に帰ったらすぐここへ送ろう」


「そうするといいですね」


 二人の後ろから、青竜族の若者が顔を出す。


「あ、あのー、歌姫、いや、コリーダ様はいらっしゃらないので?」


「ああ、彼女なら『天竜国』だよ」


「て、『天竜国』!?

 ということは、天竜様のところですか?」


「うーん、正確には真竜様の所だね」


「「「ええーっ!?」」」


 三人が凄く驚いている。

 彼らは以前この都で開かれた『天竜祭』に参加してないから、その辺の事情を知らないのだろう。


「シローさん、あの白いものはなんです?」


 ルンドが筋肉ムキムキの青い腕を近くのテーブルへ伸ばす。

 そのテーブルには、一片五十センチほどの白い立方体が置いてある。 


「ああ、あれは塩ですよ」


「「「……」」」


 よろよろと倒れかかった村長をルンドと若者が支える。

 塩が希少なこの世界では、その塩の塊は同じ大きさの純金より価値がある。


「おい、シロー!

 ポーションの販売、なんとかなりそうだ。

 治癒魔術師と薬師の両方に根回ししなきゃならないから、本当に大変だったんだぞ」 


 ジェラートが、疲れた顔で俺に話しかけてくる。

 

「シロー殿、こちらのお方は?」


「村長、こいつは白竜族の族長ですよ」


「「「ぞ、族長……」」」


 三人とも、田舎の村から来てるから、なんにでも驚けていいよね。


『( ̄▽ ̄) まったく、この人は……』 


 なぜか点ちゃんに呆れられた。


 ◇


 地下一階の貯蔵庫では、積まれた塩の山を見て、少なくない人数が気を失った。

 地下三階のモデルハウス展示場では、カプセルから現れた『土の家』を見て、やはり気を失う人が多数出た。

 そういった人たちは、一階のリビングに寝かせてある。

 竜人女性たちが、凄く羨ましそうにキッチンを眺めているのが印象的だった。


 次はキッチンシステムを売るのもいいね。

 そう考えていたら、なぜか肩に乗ったブランに頭をぺしぺしされた。


「ミーミ、ミィ!」(少し自重しなさい!)

 

 え!? なんで?


 ◇


 商品のお披露目の後、簡単な食事会をしたが、異世界の味にみんな驚きの声を上げていた。

 特にアイスクリームは人気があった。

 会場を後にする人たちは、一様に興奮を隠しきれない様子だった。

 お土産で渡した、塩と蜂蜜クッキーが入った袋を、大事そうに抱え帰っていく。


 三階のカフェラウンジに、五人の竜人が集まった。

 四人はそれぞれ、竜人四種族の長で、あと一人は赤竜族の重鎮マルローさんだ。


 彼らが座ったテーブルには、ルビー色の液体が入ったワイングラスが置いてある。


「みなさん、今日はご参加ありがとうございました。

 各筋への根回し、大変だったと思います。

 それに、立派なギルドを建ててくださったとのこと、本当にありがとうございます。

 どうかお礼の品を受けとってください」


「シロー、お礼って、これか?」


 ジェラードが目の前のグラスを指さす。


「ああ、俺の故郷、『地球世界』から持ってきたワインって酒だ。

 みなさん、どうぞ」


 ワインを一口飲んだ五人が、目を大きく開く。


「こ、これは……このような酒は初めて飲みましたよ。

 なんとも言えない香りと味ですな!」


 赤竜族の族長ラズローが、感嘆の声を上げる。

 

「一樽ずつ用意してますから、荷馬車で取りにきてもらってください」


「シロー殿、あなたには世界を救ってもらったうえ、スレッジ世界に囚われていた多くの同朋を解放してもらった。

 お礼をせねばならぬのはこちらの方です」


 赤竜族の老人マルローさんが、眼帯をしていない方の目を閉じ頭を下げた。

 他の竜人たちも、俺に頭を下げる。


「みなさん、感謝なら聖女エミリー様に。

 彼女は『天竜国』に滞在中ですが、ここを訪れるのはまた別の機会になります」


「「「おおっ!」」」


「その時が待ちどおしいですな」


 黒竜族の族長が、真剣な顔でそう言った。


「ところで、今回はみなさんにお願いがありまして」


「なんでしょう?

 ぜひ赤竜族にお任せを!」

「いや、我ら青竜族に!」

「黒竜族に名誉挽回の機会を下さい!」


 お願いの内容を聞かないうちに、族長たちが口々にそれを引きうけようとする。


「ええと、森の中に友人ができまして。

 彼女を保護してほしいのです」


「おいおい、また新しい女性か?」


 ジェラード、お前、何か勘違いしてるぞ。


「友人は、蜂でして」


「「「蜂?」」」


 族長たちがぽかーんとした顔になる。


「ええ、蜂です。

 彼女がいる森を保護してもらいたいのですが」


「そ、それは構いませんが……」


 マルローは、どこか納得できないという顔だ。


「場所は後ほどイオから聞いてください。

 よろしくお願いしますよ。

 それと……」


 テーブルの上に、親指ほどの小瓶を出す。

 中には濃い琥珀色をした液体が入っている。


「これは何ですか?」


 青竜族の族長がけげんな目でこちらを見る。 

 

「特別な蜂蜜ですよ」


「シロー、もしかして、さっき言ってた蜂の友人にもらったのか?」


「そのとおりだ、ジェラード。

 あり得ないほど素晴らしい蜂蜜だよ。

 今回、これを四つ、天竜に献上しようと思ってる」


「「「おおおっ!」」」


 さあ、盛りあがってきましたよ!


「シロー殿、その献上蜂蜜には、以前のように我らが名を書いていただけるのか?」


 黒竜族の族長が祈るように両手を合わせる。


「ええ、もちろんですよ。

 買ってくれた場合、そうなります」


「い、いくらですか?」


「そうですね、この世に二つとない品ですから……竜金貨二百枚ですね」


 二つとないとか言いながら、実は大びんに三本あるんだけどね。

 ちなみに、竜金貨二百枚というと、地球世界では一億円になる。


「それは安いですな!」

「うむ、そんな値段でよいのだろうか?」

「ぜひ売ってほしい!」

 

 しくじった?

 竜金貨五百枚にしとけばよかったかな?

 だけど、これ親指サイズの瓶だからね。


『( ̄▽ ̄) 黒いご主人様が出たー!』 


 点ちゃん、虫みたいな言い方やめてくれる?


 いつもお読みいただきありがとうございます。

 黒い、黒いぞ史郎!

 明日へつづく。 


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