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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第13シーズン 招き猫と冒険者
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第46話 島での会議

 バカンス島二日目。

 シローは、天敵と戦います。


 バカンス島、二日目。

 今日は、この島から見て南西にある、大陸の学園都市から友人を招待する予定だ。

 だから、とりあえず全員に身だしなみを整えるよう言ってある。


 昨日建てた『海の家』とは別に、木が生えていないドーム型をした丘の頂に、会議用の『山の家』を建てる。

 土地の高低を利用したこの建物は、一部が三階建て、一部が二階建て、最上階の一部が平屋となっている。どの部屋にも広いベランダがあり、そこから海が見渡せる構造は、ドラゴニアの建物を参考にした。


 俺の建物なのに『海の家』にはシャワーしかないから、『山の家』は思いきって大きな風呂にした。

 水はどうしたかって?

 近くの川から少し拝借した。

 点魔法を使い、滝の上に小さな『ゲート』を作り、それが風呂場の『ゲート』から出てくる仕組みだ。

 これには、瞬間移動を応用した。

 うーん、これは商売につかえそうだ。


 家族がビーチで遊んでいる間に、『ポンポコ商会』関係者、つまり、黒騎士、ミミ、ポル、俺は『山の家』で会議がある。

 オブザーバーとして、ハーディ卿と軍師ショーカも参加した。


 窓の外に青い海と空が広がる会議室、円形のテーブルに着き指を鳴らす。

 会議室前部のスペースに、人々が現われる。

 

「なっ!?」

「えっ、どういうこと!?」

「どこだ?」


 みんな驚いてるな。

 彼らは、瞬間移動を体験するのが初めてだからね。 


「ダン、久しぶり!

 しかし、お前、なんで水着なんだ?」


 友人のダンは、太った体に、横じまのシャツと紺色の海水パンツ、水中眼鏡という姿だ。

 ドーナツ型の青い浮き輪を脇に抱えた、その気合いの入り方が凄い。

 相変わらず太っているので、いや、前にも増して太っているので、シャツの横じまが波うっている。

 ダンは日本人で、俺と同じく『ランダムポータル』に落ち、地球からこの世界へやってきた。海水浴など、ずっとしていないはずだから、やっぱり、楽しみだったんだろうね。


「おい、そりゃねえだろう!

 ビーチで泳ぐって聞いたから、慌てて水着を用意したんだぞ!」

 

「いや、確かにビーチで泳ぐが、それは仕事の後だぞ」


 ダンには、学園都市世界にある『ポンポコ商会』の支店長を任せている。


「あ?

 そういや、そんなこと言ってたな、うははは!」


「お久ぶりです、シローさん。

 ウチのが騒がしくてすみませんね」


 そう言ったのは、普通にフォーマルなスーツ型の服を身にまとった美しい犬人女性ドーラだ。長身のスラリとした彼女には、白いスーツとスラックスがよく似合っていた。

 スーツの後ろで揺れている尻尾しっぽが美しい。

 彼女とダンは夫婦だが、この場に子供を連れてきていた。


「まあっ!」

「ホープちゃん!」

「うわ!」


 黒騎士、ミミ、ポルが立ちあがり、ドーラが押しているベビーカーに駆けよる。

 カートの中では、ダンとドーラの子供ホープがスヤスヤ眠っている。

 犬人の特徴を持って生まれたホープは犬耳がカワイイ。 

 黒騎士は、いつものクールな表情が完全に崩れてしまっている。

 可愛いものに目がないようだね。


「この『ベビーカー』ですか?

 見た人から、買えないかって問いあわせが殺到したんですよ」


 前回『学園都市世界』を訪れた時、お土産としてこのベビーカーをドーラに渡したのだ。

 点魔法で作ってあるから、どこまでも軽く、しかも故障知らずの逸品だ。 


「いいですね!

 じゃ、使ってて気になった点を教えてください。

 それも商品として考えてみましょう」


 初対面の者同士が簡単に自己紹介した後、会議が始まった。


 ◇


「ええ、以上が収支報告となります」


 かつてダンの右腕としてパルチザンで活躍していたラジという男が、支店の状況を説明する。

 かつて山賊のようなイメージだった彼は、白色のスーツが似合っている。


「売上は十分なのですが、ウチは商品の種類が少ないのが問題です」


「その通りですね、現在はコケット中心の商売ですから。

 シローさんが、いくつか新商品を考えているみたいだから、もう大丈夫でしょう」


 ハーディ卿が俺の方を見る。

 やばい、これでは寝てられないよ。


『( ̄▽ ̄) 会議は寝る場ではありませんよ』

   

 でもねえ、退屈なんだもん。


『(; ・`д・´) しっかりしろ、リーダー!』


 へいへい。


「ええと、では、点ちゃんにも叱られちゃったから、商品を紹介しますよ」


「おい、ヤル気ねえなあ」


 ダンが呆れているが、水着姿でそれ言われてもねえ。


「最初の商品はこちら、マジックバッグです」


 テーブルの上に、小型のハンドバッグを出す。

 地球の某メーカーのバッグを参考に、ファッション性を重視してみた。

 光沢がある茶色の人工皮革を使ってある。


「マジックバッグ?

 初めて」


 黒騎士が眉を上げる。

 ああそうか。

 これの性能、ハーディ卿しか知らなかったね。


「え?

 マジックバッグって、あのマジックバッグか?」


 ダンは知ってたようだね。


「そうだよ、ダン。

 こんなに小さいが、この会議室の三分の一ほどの容量が入る」


「「「ええっ!?」」」


「シ、シロー、まさかと思いますが、マジックバッグを作ったんですか?」


 軍師ショーカは、そこに気づいたな。


「ええ、まあ」


 ショーカの顔色が青くなる。

 きっと彼は、マジックバッグの軍事的な利用について考えをめぐらせているのだろう。


「前もって言っておくけど、この商品はエルファリア世界にある『ポンポコ商会本店』の取りあつかいになるよ。

 各支店は、それを本店から仕入れて売るという形だね」


「どのくらいの数を予定してますか?」


 ショーカの目は、獲物を狙う鷹のように鋭い。


「最初は限定百個という予定なんだけどね。

 一応、使用期限と、使用者制限は行う予定だよ」


「期限と制限ってなんです?」


 ダンの部下ラジが真剣な顔で尋ねる。


「今日の議題でもあるんだが、使用期限の方は、三年、五年、十年、三種類のバッグを用意してある。

 そして、最初に使った人が使用者として登録されるようになっている」


「なるほど、その辺りがダンジョンで手に入るマジックバッグとは違うわけですね」


 緊張していたショーカの表情が、少しやわらぐ。

 

「使い方によっては危険な商品だから、誰に売るかはくれぐれも注意して。

 使用者登録は、ダンが直接確認するといいね」


「おう、そうするよ」


「あと、支店長には、同様のものを一つずつ配る予定なんだ。

 サンプルをいくつか見せるから、好きなものを選んでね」


「……いいのか?

 もの凄く高価なものだぞ」


 ダンの細い目が丸くなる。


「あー、そこは気にしなくていいよ。

 販売価格は、十年使えるもので金貨六百枚でどうかな」


「「「えっ!?」」」


 マジックバッグの価値を知らない者が驚いてる。

 地球の価値に換算すると、およそ六億円だからね。


「そんなに安いのですか?!」


 ショーカが驚きの声を上げる。


「「「ええっ!?」」」


 ショーカの言葉に、また驚いた人がいるね。

 

「シローさん、他の商品はありますか?

 あるなら、ぜひ見せてください!」


 犬人のドーラが興奮で尻尾を太くしている。

 くう、こうなると、真面目に会議に参加するしかないな。

 みんなはビーチで遊んでるのに……。 


『(; ・`д・´) 会社のトップが仕事するのは、当たり前だー!』


 えーっ、そうかなあ?


 いつもお読みいただきありがとうございます。

 シローは天敵の「会議」と戦いました。


 シロー「死ぬかと思った……」


『( ̄▽ ̄) 普通に働いただけでしょ』


 まったくそうのとおりだよね、点ちゃん。

 ところで、学園都市世界でもマジックバッグはレア商品みたいですね。

 次話、会議から解放された史郎は、面白い遊びを考えているようです。

 明日へつづく。

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