第36話 ポンポコカフェ
エルフ国に、ポンポコ商会経営のカフェができるようです。
銀貨一枚(日本円で一万円程度)で売りだしたボードは、飛ぶような勢いで売れた。
毎日百台単位で売れていく。
色違いや限定モデルも売りだしたので、複数購入する場合も多いそうだ。
子供向けのオモチャとして売ったのだが、大人たちまで買っている。
原価はタダだから、ぼろ儲けだね。
ミミがいたら、ぼろ儲けを見て悪い顔で笑うところだった。あの顔は子供たちの教育に悪いから、彼女をギルド本部に送っておいて正解だったな。
エルフ国の交通は馬車と徒歩が主だから、低速とはいえボードで滑る人が増え、陛下が新しく法を整備したらしい。
売上の一部は、道路整備などの名目で国庫に入るようにしておいた。
なんせ、ボードって元手はタダなんだから。
◇
今日は、家族と一緒に、郊外に新しく開店したポンポコ商会のカフェに向かっている。
陛下から貸出された紋章入りの馬車は、嫌でも人目を引いた。
まだ看板も出していない店の前に馬車が停まると、人が集まってきた。
王家の紋章を目にしたからだろう、人々は遠巻きにこちらの様子をうかがっている。
客車から降りた俺たちの中にコリーダを見つけ、何人かが膝を着き頭を下げた。
彼女は、かつてこの国の王女だったからね。
俺たち家族は、慌ててカフェの中へ入った。
この店は、火事で街路の森が焼けおちた区画を買いとり、俺がそこへ土魔術で建てたものだ。
本来木の家しか建てられないところ、国王陛下に無理を言って許可をもらった。
パリスさんが名づけた店の名は、『ポンポコカフェ』
エルフの球状住宅に似せた造りにしてある。
いかに周囲の街並と違和感なく収めるかに苦心した力作だ。
店の中はかなり広く、ケーキを販売するコーナーと、カフェコーナーが併設されている。
「まあっ!
なんですか、これっ!?」
「柔らかいですわ!」
「お花で飾ってるのね!
えっ、この花……食べられるわっ!」
色とりどりの華やかな服でオシャレした、エルフのご婦人方がおしゃべりしながら、地球製のケーキを食べている。
商品の値段から考えて、貴族のご婦人方だろう。
このカフェの店長は……。
「シ、シロー様、あわわわわ!」
有能なのに、俺を見るとなぜか慌ててしまう女性メサリアさんだ。
たった今も、お客さんに出すためのケーキをトングで強くはさみ、潰してしまった。
大丈夫かなあ、この人……。
「ああっ!
どうしましょ!
銀貨一枚もするのに!」
そう、地球からもってきたケーキは、ここでは一個銀貨一枚、つまり約一万円で売っている。
それでも店は満員だ。
実はこの店、こういう時のためにとっておきの場所がある。
俺が指を立てると、こちらの意図を察っしたメサリアさんが、カウンターを他の売り子に任せ店の奥に俺たちを招きいれた。
階段を使い屋上まで上がる。三階建ての建物は、高さが森の木々と同じくらいに設計してある。
「「わあっ!」」
ナルとメルがベランダに走る。そこから見える景色は、木々のてっぺんがもこもこと繋がり、まるで緑の海に船が浮かんでいるようだった。
「ここ、素敵だわ!」
花や木が好きなルルは、手を広げてこの景色を満喫している。
「お兄ちゃん、ここのケーキって高いんでしょ。
お店の人に悪くないかしら?」
木を組んで作ったテーブルに着いたコルナは、早くも気兼ねしている。
「ははは、コルナ、そんなこと気にしてたのかい?
今日は俺がきちんと支払うから、大丈夫だよ」
「えっ、そうなの!?
じゃあ、私、思いっきり食べちゃお!」
いや、俺が払うからといって、そこで張りきらなくてもいいと思う。
「そう言えば、『アイスクリーム』っていう、冷やしたお菓子も扱うそうね?」
「うん、地球から持ってきたケーキは高価だから、普通の人たちはなかなか手が出ないでしょ。
だから、持ってきた分の在庫がなくなるまでに、この国の素材で作れるケーキやアイスのレシピを研究しているんだよ」
ちなみに、黒騎士、ハーディ卿、ショーカは、この建物の地下にある研究用の厨房で、店のスタッフと共に、今この時もレシピ作りに励んでいる。
「エミリーと翔太も来られたら良かったのに」
舞子は城に留まった二人が気になるようだ。
「舞子、エミリーと翔太には、お土産で、ケーキとアイス買っておくから」
「そう?
史郎君、お願いね」
だいたい、俺たちがここに来ると知った四人の王女様、そして王妃様まで、ちゃっかりお土産を頼んできたからね。
二人分なんて大したことない。
帰る時見ると、テーブルに着いたお客さんの多くが頭を抱えている。
どうしたんだろう?
「メサリアさん、彼女たちは?」
「ア、アイスクリームを召し上がられたのですが、なぜかあんなことになってしまって……」
あー、みなさん、アイスを急いで食べちゃったんだね。
ゆっくり食べるように、お店からアドバイスしてもらわないとね。
「じゃ、メサリアさん、後はよろしく」
「あわわわわわー」
大丈夫かね、カフェの店長さん。
いつもお読みいただきありがとうございます。
またまた儲けようとする史郎。
彼はどこまで稼ぐのか?
『(・ω・)ノ ご主人様はとっても腹黒いんだよ』
おー、また点ちゃんが、「腹黒い」などと言う言葉を。
あんたが教えたんだろうって?
えーと、明日へつづく。




