表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第13シーズン 招き猫と冒険者
639/927

第33話 エルファリアのポンポコ商会(下)

エルフ国のポンポコ商会支店では、やっぱり、あれを売るようです。


 会議が行われていたのは、円形の部屋だった。この部屋は、店舗から一つ森の中へ入った場所に作られている。一つの球状住宅を丸ごと会議室にした形だ。

 その部屋中央に据えられた円形のテーブルの周囲に、数人のエルフたちと俺の仲間が座っていた。


「本当にこんなものが売れるのですか?」


 年配の男性エルフが手にしているのは、白猫のぬいぐるみだ。

 

「マスケドニアでは大変な売れゆきでしたよ」


 軍師ショーカが、いつもの落ちついた声でそう言った。

 彼は、店員と言うよりオブザーバー的な立場だから、よけい説得力があるよ。

 だけど、ショーカって、声がいいよね。声優の才能あるかもね?


「エルフにとって魔獣は忌むべきもの。

 これは本当に幸運のシンボルなのかい?」


 痩せたエルフのおばあさんが長い爪の先で、ぬいぐるみをつつく。

 物語に出てくる悪い魔女っぽい。

 

「リーダー、どう思います?」


 黒騎士さんが、俺に発言を求める。


「ああ、魔獣に対する先入観ね。

 何もしなければ、マスケドニアのように売れることはないだろうね」


「そうだろう、そうだろう」


 エルフのおばあさんが、したり顔で頷く。


「だけど、その辺は大丈夫。

 そんな先入観、宣伝でぶっ壊すからね」


「宣伝? 

 宣伝とは何ですか?」


 質問したのは、身長が一メートルくらいしかない若者だ。緑色の服を着た彼はフェアリス族という種族だ。

 遠く離れた『西の島』大陸に住む彼らだが、最近は少数ながら若者がエルフ王国で働いている。まだ、交易に関わる仕事にしか就いていないみたいだけど。


「これを見てください」


 各自に行きわたるだけ、点ちゃんシートを配った。

 みんなに見せるようシートを立て、それに触れる。

 それに映しだされた動画は、ダークエルフの少女がトテトテ走り、ぽふりとコケットに跳びのるというものだった。


『ふわふわ~♪』


 それを見たハーディ卿が目を丸くする。

 

「シローさん、これは何です?」


「ああ、これ、以前コケットを売りだすとき、宣伝用に作ったシートなんです。

 この世界では、マーケティングや宣伝という考えがまだまだ未発達なんです」


「なんと!

 それでは、この宣伝は凄い効果があったのではないですか?」


「ええ、これによって高額商品のコケットが飛ぶように売れたのが、『ポンポコ商会』設立のきっかけになったんですよ。

 ちなみに、商会の名前は今回ここにいませんが、ミミがつけました」


「納得」


 これは、黒騎士さんだ。

 

「宣伝に慣れていない人々、そしてこのシート……これはいい!」


 ハーディ卿が目をキラキラさせている。

 

「ええ、幾つかの映像を作って、最も良いものを採用しましょう。

 ロスさん、広告専門の部署って、まだ作っていませんでしたよね?」


「宣伝をする部署ですか?

 ええ、いままでは営業する者が兼ねていましたから」


「では、ハーディ卿にアドバイスしてもらって、それを立ちあげてください。

 それから、みなさんは、この『白猫様』の使い方、知ってますか?」


 俺はエルフの出席者の方を見まわした。

 みんな首を横に振っている。


「この肉球を指で押さえるんですよ。

 黒騎士さん、お願いします」


 エルフのおばあさんが、白猫ぬいぐるみを黒騎士に手渡す。

 彼女は、嬉しそうにそれを受けとると、肉球を指で押さえた。


「にゃんにゃん♪」


 エルフたちがどよめく。

 黒騎士の整った顔立ちがデレデレになってるからね。

 ロスが白猫を手に取り、黒騎士をまねる。


「にゃんにゃん♪

 なっ、なんだこの気持ち良さは!?」


 エルフたちは、争うように白猫のぬいぐるみを手にし「にゃんにゃん♪」を試した。


「素晴らしくイイね!」


 エルフのおばあさんも納得したようだ。

 

「片手を上げたこの形は、商売繁盛のご利益を意味しています」


「「「おおっ!」」」


 エルフたちが声を揃える。

 さて、後はハーディ卿と黒騎士さんに任せて、俺は宣伝用の動画を作りに行くかな?


 ◇


 店から出ると、メサリアさんが俺の方へ駆けてくる。慌てているのか三度ほど転んで、やっと俺の前に来る。


「英ゆ……失礼しました、リーダー、娘さんたちは凄い人気です」


 彼女が指さす方に、エルフの子供たちが並んでいる。


「子供たちが道いっぱいになってしまったので、整理しました」


 確かに、子供たちは三列縦隊で、道の端に並んでいた。

 ロスが言ったように、この人、本当は優秀なんだろうなあ。

 

 子供たちの歓声が上がる。

 エルフの子供を一人ずつボードに乗せ、ナルとメルが近づいてきたのだ。

 どうやら、二人は子供にせがまれ、ボード遊びをさせてやったようだ。


 子供たち全員がボードを体験するまで、道端に座り、それを見守った。

 久しぶりにボードに乗れ、ナルとメルは最高の笑顔だった。


 いつもお読みいただきありがとうございます。

 次回はお姫様たちとお茶会のようです。

 明日へつづく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ