第32話 エルファリアのポンポコ商会(上)
エルファリアのポンポコ商会周辺はずい分と様変わりしているようです。
「いや~、冒険者服って、こんなに着心地よかったかなあ」
玉座の間で正式な謁見が終わると、俺はやっと服を着ることができた。
うーん、当たり前って素晴らしい。
舞子は、コルナに連れられていった。
その際、なぜかコルナが舞子の頭を撫でていた。
よく頑張ったねって感じなのかな?
でも、それなら最初からあんな罰を与えなければいいのに。
「パーパ、早く行こう!」
メルが服の袖を引っぱる。
俺が水着姿の間、近よれなかったからか、いつにも増して娘たちがじゃれついてくる。
「そうだね。
ボードを出すけど、スピードを出しすぎないこと。
パーパの後ろをついてくるんだよ」
「「はーい!」」
俺と娘たちは城の門から外へ出ると、点ちゃんボードに乗り、城下町を目指した。
◇
エルフの街は、森を通る道に沿って左右の大木に球形の家屋が並んでいる。地面に近い所にある家ほど家賃が高いそうだ。
多くの店舗は地面すれすれに作ってあった。
道を行く馬車や歩行者は、俺、ナル、メルの三人がボードで通りすぎると、足を停めそれを見ている。
子供たちは歓声を上げ、追いかけてきた。
だから、目的地に着いた時、子供たちにとり囲まれてしまうことになった。
「あれ?
確かこの辺だったと思うんだけど」
辺りの様子が変わっていて、かつての面影がない。以前、比較的間隔を開けて並んでいた球状の店舗が、今ではびっしり隙間を空けず並んでいる。それは高い位置も同じで、三階層ぐらいまでは球状家屋がそんな感じで並んでいた。
これ、上の方は大丈夫なんだろうか?
木が折れたりしないよね。
試しに木の幹に手を触れてみる。
そこから伝わってくる、木の『言葉』は、やはり悲鳴に近いものだった。
応急処置として、各家屋に上向きの重力を付与していく。これでしばらく木に掛かる負担が減るはずだ。
しかし、どうしてこの区画だけこんなことになってしまったのか。
やっとのことで『ポンポコ商会』と書かれた看板を見つけた俺は、店の中へ足を踏みいれた。
ナルとメルはエルフの子供たちに囲まれているから、そのままにしておいた。
店の中は外から見るよりかなり広くなっており、苔のようなものを敷き詰めた床と曲線を描く壁が特徴的だった。
入り口正面にはカウンターがあり、左右の陳列棚には商品サンプルが並べられていた。
なぜかお客さんはニ三人しかいなかった。
「いらっしゃいませ。
ようこそ『王都ポンポコ商会』へ」
やけに感じのいいエルフ女性が愛想良くそう言った。
「ええと、シローと言います。
仲間がすでに来ていると思うのですが――」
俺がそこまで言うと、女性店員が俺に跳びついてきた。
ぶつかりそうな彼女を止めようと前に出した両方が、なぜかぎゅっと握られる。
「シローさん!
はーっ、いつか会えるのを楽しみにしてました!」
な、なんで?
「英雄シローに会うのが夢で、この店に勤めたんです!」
ぐはっ、いきなり禁句で攻撃してきましたね?
「メサリアさん!
シローさんをそう呼んではいけません!」
店の奥から出てきたのは、俺がこの支店を任せている二人の内一人、ロスさんだ。
かつて冒険者だった長身のエルフ男性は、口ひげを生やし、いかにも落ちついた大店の若主人といった感じになっていた。
「ロスさん、お久しぶり!
みんなは?」
「すでに奥で会議中です」
「そうですか。
パリスさんも会議ですか?」
パリスは、冒険者としてロスとコンビを組んでいたエルフ女性だ。
「そ、それがお城にリーヴァス様が滞在していると聞いて飛びだしていっちゃいました」
「そんなことしたって、会えないでしょうに」
「それが、最近ウチは王族との取引が増えておりまして、伝手を使えばなんとかなるんです」
あちゃー、しょうがないなあ、パリスさん。
「まあいいや、とにかく会議室にいきましょう。
ああ、メサリアさんでしたっけ?
外に娘二人が来ているので、様子を見てやってもらえますか?」
「はっ、はひっ!」
エルフ女性は慌てて外へ飛びだしていった。
大丈夫かねえ、彼女。
「普段は落ちついていて完璧なんですけど……」
そう言ってため息をつくロスさんと並び、店の奥へと入っていく。
いつもお読みいただきありがとうございます。
さて、ポンポコ商会で史郎はアレを売りだしたいようです。
どうなりますか。
明日へつづく。




