第31話 恥ずかしい歓迎(下)
コルナが舞子と史郎に例の罰を与えた理由とは?
街で出会った兵士に先導され、点ちゃん2号は無事エルフ王城に着いた。
ポーラ港の役人から通信の魔道具を通し、俺たちについての連絡が来ていたそうだ。
ツタのような植物に覆われたエルフ王城、その巨大な門前にはきらびやかに着飾った貴族たちはもちろん、エルフ王とそのお后、そして四人の王女が並んでいた。
俺の家族や仲間がバス型の2号から降りるたび、貴族や騎士たちから大きな拍手と歓声があがった。
コルナ、ナル、メルが出ていくと、歓声はさらに高まった。娘たちは、魔獣の大群からこの城を守ったことがあるからね。
コリーダが降りると、王女たちが駆けよる。
「「コリーダ!」」
「「お姉ちゃん!」」
お后がコリーダを抱きしめる。
「お帰りなさい」
「ただいま、みんな、母様」
「リーヴァス、よう来た!
コリーダ、よくぞ帰ったなっ!?」
リーヴァスと握手した、エルフ王の言葉が途切れる。
そう、彼は最後に現れた、俺と舞子の姿を見てしまったのだ。
ピチピチ競泳水着と紺色のスクール水着を。
「「「きゃっ!」」」
王女たちは悲鳴を上げ、顔を手で覆う。
いや、もう遅いでしょ。
ばっちり見られちゃってるし。
モリーネ姫なんか、指の間からこっち見てるし……。
「シ、シローよ、その姿はどうしたのだ?」
お后とコリーダは、早々に王女たちや俺の家族を連れ、城に入っていった。
俺と舞子、エルフ王が騎士たちに囲まれる。
きっと、俺と舞子の姿が他から見られないようしたのだろう。
「ちょっと事情がありまして」
とりあえず、そう言っておく。
「しかし、その姿では……」
「陛下、とにかく謁見が終わるまでは、この姿でいさせてもらえませんか?」
コルナには、謁見が終わるまでこの姿でいろと言われている。
「それは英雄殿がそれでいいなら、ワシは構わぬが……。
ところで、そのご婦人はどなたかな?」
「こちら、大聖女様です」
「おおっ!?
もしや、獣人世界におられるという、あの大聖女様か?」
大聖女の名は、エルファリア世界にも知られているらしい。
「ええ、その大聖女様です。
舞子?」
さすがに、見知らぬ人、しかも王様に水着姿で挨拶するのは無理があるようだ。舞子は耳まで赤くなり黙ったままだ。
「そんな姿では風邪を引く。
英雄殿と大聖女様を中へお連れせよ!」
「「「はっ!」」」
陛下の言葉で、数人の騎士が俺たちの方へ駆けよる。
「ひいっ!」
それを見た舞子が、俺の腕に顔を押しつけた。
やれやれ、とにかくお城へ入ろうか。
◇
なぜか家族とは別の部屋に案内された俺と舞子は、やっと人心地ついた。
「舞子、大丈夫か?」
「……う、うん」
いくらなんでも、この罰、舞子にはきついだろう。
「もう服を着てもいいんだよ。
俺さえ、この格好をしていれば、コルナも許してくれるだろう」
舞子は、意外な反応を見せた。
「そんなのダメ!
私も悪いんだから、史郎君だけにそんな格好させられない!」
「寒くないか?」
「うん。
点ちゃんが温めてくれてるから大丈夫」
俺と舞子は、火魔術を付与した『・』で、点ちゃんに体表面の温度を調節してもらっている。
『(・ω・)ノ 任せて、舞子ちゃん』
おお、点ちゃんがいつになく頼もしい。
『(・ω・)ノ ご主人様をあっためてるの、舞子ちゃんのついでだから』
ひ、酷い!
『く(u ω u) ……ご主人様だけ、あっためるの止めようかなあ』
ごめんなさい! 私が悪うございました!
◇
家族に割りあてられた続き部屋の一室では、コルナ、ルル、コリーダの三人が並んでベッドに腰掛けている。
「ちょっとやり過ぎたかしら?」
コルナは、苦笑いを浮かべている。
「いいえ、あなたがされた事を思えば、あのくらいどうってことないわ!」
コリーダは、史郎がやったことに腹を立てているようだ。
「でも、あっちの方は上手くいったみたい」
ルルも苦笑しながら、そう言った。
「そうね。
私たちの前では、あの子、気兼ねしていたから」
コルナの言葉には、親友舞子に対する気遣いが感じられた。
「あれだけベタベタしたら、きっともう大丈夫よ」
コリーダが何か思いだすように、形がいい顎に指先を当てた。
「だけど、二人ともさっきの見た?」
コルナの問いかけに、ルルとコリーダが大きく頷く。
「マイコったら、シローの膝に頭を載っけてたよね」
「コルナの言う通りよ!
あれは、ちょっとどうかと思う!」
コリーダが憤慨の表情を見せる。
「私、まだあんなことしたことない……」
ルルが遠くを見る目になっている。
「謁見が終わったら、三人であれしよう!」
コルナの誘いに、すかさず二人が乗る。
「いいわね!」
「そうしましょう!」
三人は、顔を見合わせ朗らかに笑った。
読んでくださってありがとう。
コルナ、ルル、コリーダは、彼女たちに気兼ねする舞子にそれを捨てさせようとしたようです。
なんであんな恥ずかしい罰を与えたか、その謎が解けましたね。
明日へつづく。




