第27話 聖樹様と水着
聖樹様との再会。
その感動も冷めやらぬ間に……。
エルファリア世界に来て二日目。
俺たちは聖樹様の所へ向かった。黒騎士さんと軍師ショーカは、宿泊した『木の家』で待機している。
この旅の最終的な目的は神樹に関係することだから、ここで聖樹様にお目に掛かっておいた方がいいだろう。
大木が並ぶ森を一時間あまり歩き、聖樹様の前に出た。
今回はエレノアさんとレガルスさんも同行している。
「では、エミリー聖女、ショータ様以外は、みなさんここで膝を着いてください」
ミミが俺が着ている冒険者服の袖を引っぱる。
「ミミ、今はちゃんとしないと」
さすがに小声で注意する。
「だけど、聖樹様ってどこにいるの?」
「すぐ前にいるでしょ」
「えっ?
どこ?」
「リーダー、ボクも聖樹様がどこにいるか分かりません」
ミミの隣にいるポルも首を傾げている。
しょうがないなあ、これは。
俺は指を立て、空を指した。
二人は上を向き、天を覆う枝に驚き、そしてやっと目の前にそびえる聖樹様のお姿に気づいた。
「「ええっ!?」」
そう言ったきり、二人はぽかんと口を開けている。その後ろでハーディ卿が同じ顔をしているのがおかしかった。
聖樹様の念話が伝わってくる。
『点の子よ、こたびも頼むぞ』
『(^▽^)/ はーい!』
点ちゃんがみんなと聖樹様の間に念話のネットワークを構築する。
エレノアさん、コリーダは、『神樹の巫女』だから、本来その必要はないのだが、今回はエミリー、翔太と一緒に、ネットワークに加わった。
『シローよ、新世界群にいる神樹の事で来てくれたのだな?』
聖樹様は再び繋がった世界群の事を『新世界群』と呼んでいるようだ。あの三つの世界は、これからそう呼ばれることになるだろう。
『はい、その通りです』
『巫女よ、頼めるかな?』
この場合、巫女とはエミリーのことだ。
『もちろんです、聖樹様』
『これがあれば少しは役に立つであろう』
聖樹様がそうおっしゃると、遥か上空にある枝から、ふわふわした白いものがたくさん落ちてくる。
俺は点魔法でそれを全て受けとめ、点収納に入れた。
『これは特別なものだ。
シローが持つとよい』
聖樹様のお声と共に、最後に虹色に輝くものが落ちてくる。
それを手に取る。
『聖樹様、ありがとうございます』
『うむ。
では、頼んだぞ、巫女、シロー。
守り手よ、巫女を頼むぞ』
聖樹様の祝福が俺たちを包む。
それは手で触れられそうな、濃密なエネルギーだった。
『聖樹様!』
エレノアさんの念話で、俺たちは偉大な存在に頭を下げた。
◇
「では、ミランダさん、ミミとポルをお願いします」
「ははは、分かってるよ。
いやしくも二人は銀ランクの冒険者だ。
お前が心配せずともうまくやるさ」
ギルド長に気に入られているミミとポルは、しばらくこの集落に滞在してギルドの依頼を受ける。
ここは凄腕の冒険者が集まっているから、彼らには良い刺激になるだろう。
「しかし、セント・ムンデの港まで送らなくて、本当にいいのかい?」
「ミランダ様、シローのことですからな」
リーヴァスさんが取りなしてくれる。
「ほほほ、確かにね。
では、用意した馬車は帰らせるよ。
カズノには、あんたから話しておくれ」
カズノは、ギルド本部所属の帆船を任されている船長だ。
今回、俺が馬車や彼の帆船を使わないのは、点ちゃん2号、3号を使えば、旅程を少なくとも一週間短縮できるからだ。もちろん、1号で飛べばもっと早いが、家族が船旅を希望したのだ。
「分かりました。
では、行きます」
俺は家族と友人を連れ、ギルド本部の裏から森へ入った。
ひらけた所を見つけ、みんなで輪になる。
「各自、自分の荷物、従魔は大丈夫かな?」
皆が頷くのを見て、セント・ムンデの港へ瞬間移動する。
◇
桟橋の上に突然現れた俺たちを見て、港で働いている人や、船員が騒ぎだす。
係留してある、大きな美しい帆船『クイーンエスメラルダ』のタラップから、船員たちがわらわら降りてくる。
「シロー、久しぶりだな!」
よく陽に焼け、ヒゲを生やした壮年の男性は、帆船の船長カズノだ。
「船長、お久しぶりです。
ええと、今回、俺たちは時間が無いから、自前の船で渡ります。
せっかく待機していただいたのに申しわけないです」
「えっ!?
ミミちゃん、乗らないの?」
「コルナちゃんは?」
「シロー、お前以外は俺たちの船に乗ればいい!」
日に焼け、引きしまった表情の船員たちが、口々に騒ぎだす。
「あ、コルナちゃんだ!」
船員の一人がコルナを見つける。
「「「コルナちゃん!」」」
なぜか、船員たちが一斉にコルナをとり囲む。
「コルナちゃん、握手して!」
「この服にサインして!
ヒューズさんへって書いてね!」
「俺も俺もー!」
どうなってるのこれ?
船員の一人が手にしているものを見て気がついた。
あー、あれが原因か。
彼の手には、かつて俺が船員たちに配った点写真があった。それには、ミミとコルナの水着姿が写っている。
「おう!
みんな!
あれやるぞ!」
船長の声で、皆が懐から何か取りだし、頭にそれをかぶる。
それは三角耳がついた、カチューシャだった。
全員シャツのボタンを外し、逞しい胸でぱつんぱつんのTシャツを見せる。
紺色のTシャツには、まっ白な四角い布が縫いつけられ、そこに平仮名が書かれている。
『こるな ちゃん』
船員たちは、異世界の文字を模様か何かかと思ったのだろう。
「きゃーっ!」
悲鳴を上げたのは、コルナ自身ではなく舞子だった。
コルナの水着を手掛けたのは、彼女なのだ。
写真に写っているコルナの姿をマネたのだろう。船員たちは、写真の中でコルナがとっているポーズ、つまり、両手を広げて突きだし最高の笑顔っていうやつを決めている。
「ひゃ~っ!」
赤くなった翔太が、おもわずそんな声を上げる。
その横で、頬を染めた顔を両手で隠すエミリー。
ルルとコリーダは、それぞれメルとナルの目を手のひらで塞いでいる。
これ、子供は見ない方がいいよね。
「ど、どうしたのみんな?」
そんなみんなを、むしろコルナが心配している。
「だ、誰がこんなことを?」
黒騎士が怖い顔になっている。
「少なくとも、犯人の一人は分かっています」
軍師ショーカが冷たい声でそう言った。
「誰?」
黒騎士の問いに答えたショーカが指さしたのは、俺だった。
えええっ!?
な、なんで!?
『( ̄▽ ̄) なにとぼけてんの、ご主人様!』
点ちゃんまで……ど、どうしてそんなことを?
そりゃあ、写真配ったの、俺だけど。
いつもお読みいただきありがとうございます。
これは、えらいことになりました。
事情が分かったコルナがどうなるか、怖くて見ていられません。
『(*'▽') ガクブル作者ー!』
いや、ここは冗談じゃなく、ガクブルするところだよ。
怖いけど、明日へつづく。




