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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第13シーズン 招き猫と冒険者
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第2話 旅の準備

シローは、ギルドへお礼に行きます。

コルナの意外な才能が明らかに。


 俺は、自分の不在中、散々迷惑をかけたアリストのギルドを訪れた。

 いつものように開きっぱなしになっている入り口から一歩入ったとたん、凄い拍手と歓声が上がった。


「「「お帰りー!」」」


 聞きなれた冒険者たちの声で、言葉が出ないほど感動してしまった。彼らの声には、再会できた喜びと、俺の姿が見られた安心が込められていたからだ。


「……みんな、ホントにありがとう!」


 歓声に続く拍手の中で、俺はやっとそれだけを言った。


「シロー、みんな本当に心配してたのよ」


 俺の腰くらいまでしかないキャロが笑顔を浮かべ、ちょこちょこ近づいてくる。


「ギルマス、ご心配おかけしました」


「仕方ないことよ。

 それより、ルルさん、コルナさん、コリーダさんに感謝なさい。

 毎日のように、ここへ顔を出してたのよ」


 そうだったのか。

 俺は心の中で、三人の女性に頭を下げた。


「ガハハハ!

 おめえが死ぬはずねえって、ワシは言ってたんだがな!」


 マックの大声は、相変わらずだな。


「そんなこと言って、マックさん、えらくシュンとしてたじゃないですか。

 みんな一回り小さくなったって言ってたんですよ」


 後ろから俺の肩を叩きながら、ブレットがそんなことを言った。


「う、うるせえ!

 ワ、ワシは心配なぞしとらんぞっ!」


 マックがおろおろするところなど、普段はちょっとないことだから、それを見てみんなが笑った。


「「「シローさん!」」」


 三人顔を並べているのは、『星の卵』という、結成して一年ほどの若いパーティだ。


「シロー、こいつ、新米のくせに俺たちが弱気になったとき、ハッパかけてきたんだぜ。

 きっとお前は帰ってくるってな」


 顔に古傷のある顔見知りの冒険者が、『星の卵』のメンバーであるリンド少年の頭をぐりぐり撫でる。


「も、もう!

 言わないでください!」


 顔をまっ赤にしたリンド少年の様子に、またみんなが笑った。


「俺はしばらく家族旅行でアリストを留守にしますが、帰ってきたらお礼させてください」


「シロー、気にしなくていいのよ」


「ガハハハ、キャロよ、まあシローがそう言ってんだ。

 こいつが帰ってきたら、盛大にお礼してもらうぜ、なあみんな!」   


「おー!

 期待してるぜ!」

「俺はうめえ酒がいいな!」

「私はあの甘いヤツ、チョコレイト?

 あれがいいな!」


「ははは、じゃ、期待しといてください」


「「「おおーっ!」」」


 ◇


 出発前日の夕食は、家族みんなが旅行の準備に忙しいということもあって、外食することにした。

 お店は何かあるたびにいつも利用している『カラス亭』だ。今日は旅行に備え早めに寝るから、夕方少し早い時間に訪れることにした。

 家族がぞろぞろ店に入っていくと、壁に並べて貼ってある紙を、おばさんが剥がしているところだった。

 

「こんばんは、お世話になります」


「あっ、あんた、無事帰ってきたんだってね!」


 おばさんが駆けより、俺の両腕を強く握りしめる。

 その手から落ち、床に散らばった紙には、上手く特徴を捉えた、俺の似顔絵が描いてあった。 

  

「……ご心配おかけしました」


「無事に帰ってきたんだから何よりだよ。

 うちは宿屋やってるから、あちこちからお客さんが来るだろう?

 あんたの手がかりがあるかと思って、これ、貼ってたんだ」


「おばさま、ありがとうございました」


 ルルが頭を下げる。


「ルルちゃん、頭を上げとくれ。

 あたいはあんたが持ってきたこの紙を貼ってただけなんだから」


「おばさん、ありがとう!」


「ああ、コルナちゃん、これ書いたのあんたなんだってね!」


 えっ!?

 プロの絵かきが描いたんじゃないの?

 それにしては、この絵、上手すぎるぞ。

 コルナに絵を描く趣味があるのは知ってたけど、こんなに高いレベルだったとは……。


『へ(u ω u)へ まったくご主人様はどうしてこうですかねえ……』


 えっ!? ここで点ちゃんに呆れられるの!?

 俺、なんか悪いことした!?


『(; ・`д・´)つ いい加減にしろーっ!』


 ◇


 翌日、昼前に家族みんなが庭に集まった。

 今回、異世界旅行するのは、俺の他、以下の通り。

 ルル、コルナ、コリーダ。

 ナル、メル。

 リーヴァスさん。


 そして、連れていく魔獣。( )は世話係。

 白猫ブラン(俺)

 黒猫ノワール(ルル)

 猪っ子コリン(コリーダ)

 白い悪魔キュー(コルナ)

 

 ポポはその巨体に似合わず繊細な魔獣なので、今回はお留守番になる。

 スレッジを訪れるときだけは、俺が迎えに来る予定だ。


 コルナは、今まで他の者にペットがいたのを羨ましく思っていたらしく、キューにベタベタしている。気をつけないと、誰かさんみたいに嫌われちゃうぞ。

 

 広い庭の中央に集まった俺の家族を、デロリン、エルフのチョイス、竜人エンデ、ドワーフのデメルが見送る。


「シロー、次はわらわも加藤の故郷に連れていけよ!」


 いや、デメルさん、あなたドワーフ皇国の大使としてここにいるんでしょ?


「私も、ぜひ加藤さんの故郷が見たいです」


 エンデも竜人国の大使でしょうが。

 二人とも、どんだけ加藤が好きなんだよ。


「ナルちゃん、メルちゃん、ポポラとポポロの世話は任せてね!」


 デロンチョコンビが、ナルとメルに手を振る。


 見送りには、アリストの『ポンポコ商会』を任せているボス、ゴリ、キツネたちも顔を連ねている。


「リーダー、アイスクリームのレシピ待ってます!」


 そう言うボスは、叔父さんが隣国でケーキ屋を開いてるんだよね。最近ようやく知ったよ。


「母ちゃんの食器、お願いします」


 翔太の騎士たちが地球に持ちかえった母親の食器が高値で売れたと知り、ゴリさんは、俺に大量の食器を託している。

 

「ポンポコ商会の連携、よろしくお願いします」


 キツネがしおらしく頭を下げる。初めて会った時、彼はただのチンピラだったのに、変われば変わるものだ。


「じゃ、行ってきます。

 みんな、無理しないでね」


 俺は友人や社員にそう告げると、最初に訪問する地球世界に照準を定め、セルフポータルを発動した。


 いつもお読みいただきありがとうございます。

 コルナには絵を描く才能がありました。

 彼女って、多才だよね。神樹様とも話せるし。

 では、次回、シローの家族はいよいよ地球世界へ。

 明日へつづく。


 ― ポータルズトリビア ― キンベラのケーキ屋


 話中出てきたケーキ屋さん。これは、ポンポコ商会が隣国キンベラにオープンしたお店なんですが、『残念少女ツブテ』を読まれた方は、もうお気づきでしょう。

 そう、あのケーキ屋さんです。


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