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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第13シーズン 招き猫と冒険者
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第1話 おみやげ

『ポータルズ』第13シーズン、『招き猫と冒険者』編スタートです。

 今回のテーマは「旅(冒険)」と「商売」です。

 楽しさてんこ盛りの新章をどうぞ。


 いつものごとく、最初に例の「枕」がありますから、早く本編に入りたい方は二つ目の「◇」からどうぞ。


『ポータルズ』 


 そう呼ばれる世界群。


 ここでは各世界が『ポータル』と呼ばれる門で繋がっている。

『ゲート』とも呼ばれるこの門は、通過したものを異世界へと運ぶ。

 この門には、様々な種類がある。


 最も多いのが、二つ対になった『ポータル』で、片方の世界からもう一方の世界へ通じている。

 このタイプは、常に同じ場所に口を開けており、向こうに行った後、こちらに帰ってこられる利便性から、商業活動や外交をはじめ、一般市民の行き来にも使われる。

 国は通行料を徴収することで、門の管理に充てている。


 他に一方通行の『ポータル』も存在する。

 このタイプは、前述のものより利便性が劣る。僻地や山奥に存在することが多く、きちんと管理されていない門も多い。

 非合法活動する輩、盗賊や無許可奴隷商人の移動手段ともなっている。


 また、まれに存在するのが、『ランダムポータル』と呼ばれる門だ。

 ある日、突然町の広場に現れることもあるし、人っ子一人いない森の奥に現れることもある。そして、長くとも一週間の後には、跡形もなく消えてしまう。


 この門がどこに通じているかは、まさに神のみぞ知る。なぜなら、『ランダムポータル』は、ほとんどの場合、行く先が決まっていないだけでなく一方通行であるからだ。

 子供が興味半分に入ることもあるが、その場合、まず帰ってくることはない。

 多くの世界で、このケースは神隠しとして扱われている。


 ◇


 ある少年が『ポータル』を渡り、別の世界に降りたった。

 少年の名は、坊野史郎ぼうのしろうという。

 日本の片田舎に住んでいた彼は、『ランダムポータル』によって、異世界へと飛ばされたのだ。


 そこには、中世ヨーロッパを思わせる封建社会があった。

 違うのは、魔術と魔獣が存在していたことだ。


 特別な転移を経験した者には、並外れた力が宿る。

 現地では、それを覚醒と呼んでいた。


 転移した四人のうち、他の三人は、それぞれ『勇者』、『聖騎士』、『聖女』というレア職に覚醒した。しかし、史郎だけは、『魔術師』という一般的な職についた。

 レベルも「1」であったが、なにより使えるスキルが『点魔法』しかなかった。この魔法は、視界に小さな点が一つ見えるだけというもので、このことで彼は城にいられなくなってしまう。


 その後、個性的な人々との出会い、命懸けの経験、そういったものを通じ、彼は少しずつ成長していった。


 初め役に立たないと思っていた点魔法も、その『人格』ともいえる、魔法キャラクター『点ちゃん』と出会うことで、少しずつ使い方が分かってきた。

 それは、無限の可能性を秘めた魔法だった。


 史郎はこの魔法を使い、己の欲望のまま国を戦争に追いやろうとした、国王一味を壊滅させた。


 安心したのもつかの間、幼馴染でもある聖女が、一味の生きのこりにさらわれ、『ポータル』に落とされてしまう。


 聖女の行先は、獣人世界だった。

 彼女の後を追いかけ、獣人世界へと渡った史郎は、そこで新しい仲間と出会い、その協力で聖女を救いだすことに成功する。


 しかし、その過程で、多くの獣人たちがさらわれ学園都市世界へ送られていることに気づく。


 史郎は友人である勇者を追い学園都市世界へと向かい、彼と力を合わせ、捕らわれていた獣人たちを開放する。


 ところが、秘密施設で一人の少女を見つけたことから事態は新たな展開を見せる。

 その少女は、エルフの姫君だった。彼女から、エルフが住む世界への護衛を頼まれ、史郎は彼の家族と共に『ポータル』を渡る。

 エルフの世界で、史郎と彼の家族は、エルフ、ダークエルフ、フェアリスに係わる多くの謎を解き、三種族間の争いに終止符を打つ。


 エルフ王からもらった恩賞の中には、竜人世界に由縁のある宝玉が含まれていた。

 そして、この貴重な宝玉を奪おうとした者が史郎の仲間をさらう。仲間を救出したまではよかったが、彼は宝玉によって開かれた『ポータル』に落ちてしまう。


 史郎が『ポータル』によって送られた先は、竜人が住む世界ドラゴニアだった。その世界を支配する暴君一味を倒した史郎は、後から合流した仲間と共に、ドラゴニアの空に浮かぶ大陸、天竜国へと向かう。


 天竜国は、竜が棲む世界だった。天竜と真竜を苦境から助けた史郎は、聖樹の招きで再びエルファリアを訪れる。聖樹が彼に与えた能力は、世界間を渡る力という途方もないものだった。

 かつて、地球から異世界に飛ばされた史郎とその仲間は、この力を使い再び地球に戻った。


 久しぶりに帰った故郷ふるさとの地球世界で、彼らは様々な困難を乗りこえ、再び異世界に立ちもどる。

 そして、彼らが地球世界から異世界に連れてきた少女エミリーが、『聖樹の巫女』へと覚醒する。

 

『聖樹の巫女』とは、ポータルズ世界群が危機に陥ったとき現れる存在だった。その危機に対処するため、史郎は、異世界で、そして地球で、少女を守りながら、神樹たちの力を取りもどしていく。


 竜人世界を再び訪れた史郎は、彼の友人たちがさらわれ、異世界に連れていかれたことを知る。

 友人を探し彼が訪れた先は、奴隷制に支えられた文明を持つスレッジ世界だった。

 そこでは、二大国の後継者がクーデターを起こし、国の実権を握った。彼らの狙いは、ドラゴナイトと呼ばれる鉱石と神樹とから得られる力で異世界を征服することだった。

 しかし、その世界にある多数の神樹が一度に伐採されてしまえば、かろうじてバランスを保っている世界は、ポータルズ世界群ごと消滅する恐れがあった。

 史郎は、ドラゴナイト鉱石と神樹を守る巨人族に力を貸す。そして、家族や仲間の活躍で、戦場における圧倒的な劣勢を覆し、いくさに勝利した。


 世界群の危機が去り、家族と穏やかな日々を送っていた史郎は、地球からパンゲア世界への転移中に、ある世界へ召喚されてしまう。 

 その世界は、ポータルズ世界群とは異なる世界群に属する、田園都市世界だった。

 家族が住む世界へ帰る手段がない史郎は、そこへ通じるポータルを探し、異世界を渡りあるくことになる。

 わずかな人間が住民の生命まで支配する田園都市世界。男性しか住まない国と女性だけ

しか住まない国が争う結び世界。そして魔術が階級を決めるボナンザリア世界。それぞれの世界で冒険をくぐり抜けた史郎は、とうとう元の世界群への手がかりを見つける。

 そして、やっと家族の待つ家へと帰ってきたのだった。


 これは、そこから始まる物語だ。


 ◇


 ここは何もない空間だ。時間も無く方向も無い。さまよい続ける俺は、やがて小さな光を見つける。

 光に近づくと、それは温かく俺を包みこんだ。

 三人の女性が持つ不安、そして俺への気持ちが、波となって心の中へ入ってくる。

 それが自分の身体を満たすと、俺の身体が……。


「ぶはっ!」


 呼吸が停まりかけ、強制的に夢の世界からから現実へと引きもどされる。


「きゃははは!」

「ぶはっ、ぶはっ!

 きゃははは!」


 ナルとメルが、楽しそうに笑う声がする。

 目を開けると、視界が白い。

 手でそれをかき分ける。


「はーっ!」


 窒息しかけたのは、ナルとメルが、寝ている俺の顔にキューを押しつけたからだ。

 みっしり詰まったキューの毛は、ヘタをすると本当に息が止まりかねない。


「ナル、メル、この起こし方はしちゃダメって言ってあるだろう!」


「ぶはっ!」

「ぶはっ!」


 だめだなこりゃ。

 ナルとメルは、俺が『くつろぎの家』に帰ってきてから、この遊びにとりつかれている。

 最初は、寝ていた俺の顔がたまたまキューの下敷きになり、「ぶはっ!」となったのだが、それが面白かったらしく、毎朝、二人は俺の顔にキューを載せるのだ。


「ナル、メル、パーパにイジワルしちゃだめよ」


 ルルが部屋に入ってくる。


「イジワルじゃないよ!」

「ぶはってなるだけだもん!」


「困ったわね。

 シロー、あなたからも厳しく言ってください」


「あ、ああ、そうするよ。

 ナル、メル、もうしちゃダメだよ」


「「はーい!」」


『へ(u ω u)へ ぜーったい、またやりますよ、この二人は』  


 お早う、点ちゃん。まあ、いいじゃない。


『(*'▽') 親バカー!』


「二人とも、ポポのお世話は?」


「「はーい、マンマ!」」


 ナルとメルが歓声を上げ、寝室の外へ駆けだしていく。

 ベッドの横に押しのけられていたキューを、ルルが抱える。


「シロー、そろそろ地球へ行きませんか?」


 地球文化に興味があるルルが、そう言いながら目を輝かせる。 


「そうだね、『エミリー研究所』に持っていくものもあるし、おみやげのこともあるしね」


 ここで「おみやげ」といっているのは、俺が地球へ行く前に、ナルとメルに約束していた、お好み焼きのことだ。

 異世界召喚され、別の世界群に閉じこめられている間に、出会った人々にお好み焼きをご馳走していたら、帰ってきた時、百枚あったそれは、残りわずか二枚となっていた。

 それを一枚ずつ食べたナルとメルは、お替りが無いといって泣いたのだ。それで、お好み焼きを食べに、二人を地球に連れていくって約束させられたってわけ。


「お身体の方はもう大丈夫ですか?」


 ルルが心配しているのは、ここに帰ってきてから、俺が三日三晩寝ていたからだ。その後も、ベッドでゴロゴロしていることが多い。


『(・ω・)ノ ルルちゃん、ご主人様の体調は万全だよ。ただ怠けてるだけ』


「えっ? 

 シロー、そうなんですか?」


 ルルが、咎める目つきになる。

 点ちゃんたら、なんてことを……。


『d(・ω・) だって、ご主人様が寝たままだと、遊べないんだもん!』 


 いや、自分が遊びたいだけじゃない、それ!


「シロー、早く起きてください!」


 ルルは、すでに俺がしがみついている毛布に、彼女の右手を掛けている。

 やれやれ。


 ◇


 三階の寝室からリビングに降りると、キッチンにリーヴァスさんが立っていた。

 慌てて声を掛ける。


「リーヴァスさん、朝食の用意は俺が替わりますよ」


「おお、シロー、お早う。

 料理は私の趣味のようなものだから、気にせず座ってなさい」


「は、はい」


 リーヴァスさんは超一流の冒険者だが、料理の腕も一流だ。

 ナルとメルは、彼が作る朝食が大のお気にいりだ。


「シロー、お早う」

「お兄ちゃん、早よう」


 コリーダとコルナが、手袋を脱ぎながら、庭側の引き戸を開け入ってくる。

 二人は、家庭菜園から、朝食用の野菜を採ってきたようだ。


「おじいさま、はい、これを」

「おお、コルナ、コリーダ、ありがとう!」


 俺は食事用の大テーブルに載せてある、A4サイズの紙を手にする。

 これは、女王である畑山さんの許可を受け、『ポンポコ商会』が発行したものだ。

 新聞と言うより、情報誌といった方が近い。

 今は二週間に一度しか発行していないし、無料にしてある。

 その内、『異世界通信社』の事業として立ちあげる予定だ。


 お、隣のキンベラ王国で魔獣のスタンピードがあったのか。

 うん? なんだこりゃ、ポンポコ商会がケーキ屋なんか出してるのか?

 いつの間にそんなことに?

 なんか、俺が知らないうちに事業が勝手に拡大していってる気がする。

 後で、ゴリさんかキツネにその辺を尋ねておこう。


「お兄ちゃん、できたよー!」


 コルナの声で慌てて立ちあがった俺は、朝食の配膳にとりかかった。


 ◇


「じーじご飯、おいしいーっ!」

「おいしーっ!」


 朝食に夢中のナルとメルを眺め、リーヴァスさんが目を細めている。

 

「シロー、ルルから地球行きの話を聞いてるけど」


「ああ、コリーダ。

 今回は、地球だけでなく他の世界も回る予定だよ」


「えっ! 

 そうなの?」


 驚いた彼女の、艶のある褐色の長い髪がふわりと揺れた。

 コルナが俺に替わって詳しく説明してくれる。


「そうだよ、コリーダ。

 もう少しでナルとメルの学校が長期休暇じゃない?

 だから、家族旅行するんだって」


「いいわね!

 シロー、エルファリアにも寄ってくれるの?」


「ああ、当然だけど寄るよ」 


「じゃ、姉さんや妹たちへのお土産、用意しとかなくちゃ。

 だけど、シロー、冒険者の仕事はいいの?」


「ああ、この前の件もあって、ミランダさんから、仕事はしばらく控えろって言われてる」


「まあ、そうよね」


 コリーダがこちらに微笑みかけるが、目だけ笑っていない。   

 ぐっ、長いこと留守にしてすみません。


「おじい様も、ご一緒できるんですよね?」


「ああ、ルル、私も一緒に行けるよ。

 ギルドの指名依頼があるから、ずっと一緒って訳にもいかないがな」


 リーヴァスさんは、各ギルドの業務調査と、再接続した世界にあるギルドとの調整をまかされている。

 かくいう俺も、この旅行中に各地のポンポコ商会を回り、業務を取りまとめる予定なんだけどね。


「マンマ、どこか行くの?」


「そうよ、ナル。

 学校がお休みになったら、あちこち旅行するの」


「ナルも行ける?」


「ええ、あなたたちも一緒よ」 


「「わーい!」」


「シロー、ギルドの皆さんへの挨拶は?」


 俺が行方不明になっている間、ギルドの冒険者たちは、かなり無理をして、依頼をこなしながら捜索に手を貸してくれたそうだ。  


「ルル、とりあえず一度、ギルドへ顔を出しておくよ。

 正式なお礼は、また旅行から帰ってきてからするかな」


「ぜひ、そうなさってください」


 俺の家族は、それぞれが旅行に向け準備を始めた。


 いつもお読みいただきありがとうございます。

 ナルとメルの遊びが凶悪です。

 二人が無邪気なだけに怖いです。

 では、次話は旅行の準備です。

 明日へつづく。

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