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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第12シーズン 放浪編
602/927

第74話 ポータルへの挑戦(中)

 聖樹様と約束した日が来ました。

 史郎は、彼がいる世界を救うことができるのか?

 

 


 聖樹様がおっしゃられた期日を明日に控え、俺たちはヘルポリにあるナゼルさんの屋敷で一泊した。

 昨日は、彼女が国王一家の接待にかかりっきりになっていたため、モフられるのをまぬがれ平和な夜を過ごしたブランとキューは、いたって機嫌がいい。


 朝食後、お后様に伴われたルナーリア姫がブランとキューに会いにきたので、姫に彼女たちを任せ、俺と国王陛下、シュテインの三人が、禁足地の森と屋敷の敷地を隔てる黒い門の前に集まった。


「シロー殿!

 なにとぞ、なにとぞ、この世界のことお願いしますぞ!」


 さすがに、陛下の声は緊張で震えている。

 まあね、この世界の命運が、これにかかってるから。


「くれぐれもお気をつけて!」


 シュテインは、そう言うと俺の右手をその両手で包んだ。ナゼルさんが見てなくて本当に良かったよ。

 この緊迫した場面で、よだれを垂らされてはシャレにならない。


「じゃ、行ってきます」


 俺は手を振ると、あらかじめナゼルさんから受けとっておいた金属製の大きな鍵を鍵穴に入れ回した。


 ガチャッ


 点魔法の重力付与で、金属製の大きな黒い扉が音もなく左右に開いた。

 すぐにそれを閉めた俺は、禁足地に踏みこんだ。


 ◇


「じゃ、行ってきます」


 カーキ色の冒険者服を着たシローが、気楽な様子で禁足地へ入っていく。

 門が閉まる時、彼は振りかえりもしなかった。


「シュテインよ、シロー殿は大丈夫であろうか?」


「父上、彼はどんな時も変わらないようですね。

 私は、むしろ、それが頼もしいと思います」


「……うむ、言われてみればそうだな。

 ダメな時は、きっと何をしてもダメであろうからな」


「肩の力が抜けていないと、不測の事態にも対処できないでしょうから」


「そうだな、余ができるのは、シロー殿がこの世界を救い、無事帰ってくることを精霊様に祈ることだけだの」


 国王と皇太子は、二人並び膝を着くと目を閉じ両手を合わせ祈りはじめた。


 ◇


 いよいよだね、点ちゃん。


『(^▽^)/ わーい! いっぱい遊べるかなー?』   


 相変わらずだね、点ちゃんは。

 さて、聖樹様は、この辺りのはずだが……。


「なっ!

 こ、これはっ!?」


 聖樹様がいらっしゃった場所には、全く別の巨木が立っていた。

 ねじくれた木は、黒っぽい木肌をしており、その根元は二倍くらいに膨れあがっていた。

 まるで流れだした溶岩が冷えて固まったようなありさまだ。

 膨れた所には、一抱えはありそうな、焦げた塊がいくつも見られた。

 スラリと天に伸びた美しい木の姿はどこにもなかった。


「せ、聖樹様?」


 俺は思わず声に出し話かけた。

 

『……シ、シローだね』


 黒い巨木から伝わってくる波動は弱々しく、意識しないと気づけないほどだった。

 聖樹から神樹になるということが、命を擦りへらすほどの負担だったにちがいない。


『どうしてこのようなお姿に?』


『初めてのことだからね。

 それに失敗できることでないから、慎重にやってるとこうなっちゃったんだ』


『……この街、この世界に代わり、お礼申しあげます』


 俺は膝を着き、深々と頭を下げた。

 聖樹様がこのようなお姿になってまで、街や世界を救おうというお心を感じた時、無意識に取った行動だ。


『反対側に』 


 お言葉を受け、巨木の裏側に回る。

 ねじくれた根元の少し上に、木のウロに似た切れ込みが三つ、まるで目と口のように刻まれていた。


 いままで何度か見たことがある、ポータルを持つ神樹の姿だ。

  

『後は頼んだよ』


 しわがれたような弱々しい波動が伝わってくると、「口」に当たる木のウロがゆっくり開きはじめた。

 その向こうには、黒いもやが渦巻くポータルがあった。


『聖樹様?』


 巨木から感じられる波動は、ほとんど感じられないほどになっている。おそらくポータルを開くことで、お力を使いきってしまわれたのだろう。


『行ってきます』


 俺はそう念話を残すと、黒い靄へ飛びこんだ。


 いつもお読みいただきありがとうございます。

 史郎ができたばかりのポータルへ踏みこみました。

「行く先が決まっていない」とはどういうことなのか?

 次回、史郎の挑戦にご期待ください。

 明日へつづく。

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