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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第12シーズン 放浪編
584/927

第55話 お好み焼きと陰謀(下)

さて、食前酒に続き、史郎が食事として出すものは?

 貴族たちの不穏な動きも気になります。


 ティーヤム王国の王都、その王城にある迎賓館で、俺は国王一家のために食事を提供している。


「次が楽しみだわ」


 いや、そんなに期待されても、出すものは変わりませんから。

 

 俺は腰のポーチに触れ、点収納からお好み焼きを出した。

 さて、ここまで、こちらの世界群でみんなに受けてきたお好み焼きだが、国王陛下への受けはどうかな?


「史郎さん、次はオコ焼きですか?」


 シュテイン皇太子が訊いてくる。


「はい、そのつもりですが」


「父上、オコ焼きは、熱くないと美味しくないと聞いております」


 シュテインのその言葉で、陛下の後ろに立つお毒見役の男性が身じろぎする。

 その男が、意を決した顔で陛下に話しかける。


「陛下、熱いものなどお召しあがりになってはいけません!」


 陛下は俺の方を向き、こう言った。


「シロー、オコ焼きは、熱くないと美味しくないというのはまことか?」


「はっ!

 間違いなく、冷めると美味しさは大きく損なわれます」


 陛下の後ろに立つお毒見役が、それだけで殺せるような視線を俺に送ってくる。

 陛下は侍従の一人を呼ぶと、彼に何か耳打ちしている。

 侍従は、慌てて部屋を飛びだしていった。


「シロー、少し待ってくれ。

 その間、この酒をもう少し味あわせてもらうぞ」


 ◇


 しばらくすると、右手の扉が開き、五人の男たちが入ってきた。

 沢山飾りが付いた立派な服装と、それぞれ年齢が高いところを見ると、かなり上級の貴族らしい。

 彼らは国王の側に行くと、何か話しった後、その一人が懐から羊皮紙を取りだした。

 国王が、羽根ペンでそれにサインする。


「シロー、喜べ!

 たった今、大臣たちと話しあい、『オコ焼き令』を出したぞ。

 いかなる者も、オコ焼きは熱いうちに食べよという法令じゃ。

 これで気兼ねなく熱いオコ焼きが食べられるぞ、あはははは!」


 あはははは、じゃないよ、全く!

 こんなことなら、きちんと『お好み焼き』だって訂正しておけばよかったよ。


『(; ・`д・´)つ 突っこむとこ、そこ!?』


 絶望した顔のお毒見役が、俺が点収納から出したばかりのお好み焼きを口にする。


「熱っ!

 旨っ!」


 口にしてしまったお毒見役が、しまったという顔をした後、絶望の表情で天井を仰ぐと、その顔を両手で覆い膝を着いた。 

 おい、いくらなんでも、それは大げさだろう!


 それを見た陛下が、お好み焼きを一口食べる。

 

「熱っ!

 旨っ!」 


 それ、お毒見役と同じ反応……。


「お父様、これ、おひひいです、むきゅむきゅ」


 ルナーリア姫の無邪気な反応には、心が洗われるよ。


「これ、旨っ!

 あっ、美味しゅうございます」


 シュテインの婚約者、セリカ嬢が慌てて言いなおす。


「まあ、セリカさん、遠慮はいらないですのよ」


 王妃が、鷹揚に話しかける。 

 しかし、彼女もお好み焼きを口にしたとたん……


「熱っ!

 旨っ!」


 さすが夫婦、陛下と同じ反応でしたね。


 ◇


「なにっ!

 陛下の一家がお城から迎賓館に出向いてるだと?」


 反乱を企てる貴族たちの盟主ナゼリア侯爵は、思わぬ知らせに自分の耳を疑った。


「それは間違いないな?」


「はい、たった今、使いの者が知らせて参りました。

 いかがしましょう?」


 警備の厳重な王城内ならともかく、迎賓館なら少数で襲ってもなんとかなる。


「すぐに貴族たちに知らせよ!

 兵を出せるだけ出せとな!

 遅れたら、ワシが作る新王国ではひら貴族に降格だと告げよ!

 急げっ!」


「はっ!」



 いつもお読みいただきありがとうございます。

 史郎は王族にお好み焼きを出したようです。

 いいのかなあ。

 毒見させてから食べるため、冷えたものしか食べられない王族にとって、焼きたてのお好み焼きは忘れがたい印象を残したようです。

 次話、貴族たちのたくらみが動きだします。 

 明日へつづく。


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