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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第12シーズン 放浪編
562/927

第33話 ちぐはぐな世界(下)

 男だけの国がどうやって成りたっているのか?

 秘密の一端が明かされます。


 近代的な巨大都市上空から『・』をばら撒いた後、俺は瞬間移動でイスタニアにある軍事施設の一室に戻っていた。

 質素なベッドに横たわり、ここまで集めた情報について考えてみる。


 この世界には、大きな海を挟んで二つの大陸がある。                  

 大きな方の大陸には、科学が進んだ巨大都市がある。

 かなり小さなもう一つの大陸には、都市国家が二つあり、お互いに争っている。   


 それにしても、このチグハグな感じはなんだろう。

 二つの大陸間で、文明の差があり過ぎる。

 そして、小さな方の大陸には、男だけしかいない国と女だけしかいない国がある。

 どう考えても矛盾が多すぎる。


 点ちゃんは、どう思う?


『(p ω・) 現在、情報を分析しています』

 

 だよね。いくら点ちゃんでも、何でも分かるわけじゃないもんね。


『d(u ω u) 何パターンかの予想は、すでにできています』


 えっ!? できてるの?

 教えてください。


『(・×・) まだ情報が十分でないから、教えることはできません』


 そ、そんな……ケチ。


『(; ・`д・´) ケチとは何ですか! 少しは自分で考えてください!』


 ご、ごめんなさい。

 とにかくヴァルムと話してみるか。


 ◇


 ヴァルムは任務で防壁の外へ出たとかで、しょうがないから、俺の世話をしている少年兵に話しかけた。

 俺のことを警戒しているのか、最初は口が重かった少年だが、蜂蜜クッキーをごちそうすると、なんとか会話できるようになった。


「俺、シローっていうんだ。

 君の名前は?」


「はっ、ニコ二等兵です」


「いや、俺、君の上官じゃないから、畏まらないでくれる?」


「え、ええ」


「君は、いつ兵士になったの?」


「十二です」


「へえ、そんなに小さなときから。

 お父さん、お母さんは心配しなかった?」


「ええと、お父さんというのは、分かりますが「オカアサン」とは何でしょうか?」


 うーん、女性に偏見がある社会みたいだから、どうやって説明しようか。

 そうだ!


「君はどこで生まれたの?」


「ええと、ウマレルとはどういうことでしょう?」


「……うーん、君は鳥が卵からかえるのは知ってる?」


「それは知っていますよ」


「君はどこで……生を受けたの?」


「ああ、ウマレルって『祝福』のことでしたか」 

 

「その『祝福』ってなに?」


「神様から生を授かることです」


「生を授かる?」


「神殿で、ええと、姿を現すことです」


「ふうん。

 神殿ってどこにあるの?」


「聖なる場所ですから、部外者には教えてもらえないと思います」


「君は知ってるんでしょ?」


「それは、もちろんですよ。

 お祈りにも行きますし」


「お祈りって、何をするの?」


「お祈りはお祈りですよ」


 うーん、とりあえず、この辺でいいかな。


「ありがとう。

 君と話せて楽しかったよ」


「えっ!?

 そ、そうですか」


 なぜか、赤くなったニコ少年は、部屋から出ていった。

 俺はブランの透明化を解いた。

 彼女は、俺が何をしたいか分かっているようで、ぴょんと肩の上に乗ってくると、肉球を俺の額に押しつけた。


 ニコの記憶、その一部が俺の頭に流れこんでくる。


 ◇


「お父さん、どんな子だろうね!」


 殺風景な街並みを背景に、大きな男性の手を握った「自分」が、スキップしながら歩いている。

 ニコが幼い頃の記憶らしい。


「きっと、いい子にちがいないよ、ニコ。

 俺の息子で、お前の弟だからね。

『祝福』が楽しみだ」


 口髭を生やした大柄な男はそう言うと、朗らかに笑った。


「うわー! 

 早く会いたいなあ!」


 やがて、目の前に白い円柱型の建物が見えてきた。

 建物は二階建てで、その周囲を幅広の道が囲んでいる。

 建物の中は、やはり白一色で統一されており、広いロビーの奥には、大きな金属製の扉があった。


 扉が開き、中へ入る。

 そこは大きな空間になっており、その中央に、天井へと続く白い円柱があった。 


 自分が手を繋いでいる男が円柱に銀色のカードで触れると、その部分が丸く開き、白いカプセルが押し出されてきた。

 そのカプセルの蓋がゆっくり開く。

 横から覗きこむと、そこには白い布に巻かれた三才くらいの幼子おさなごが眠っていた。

 

「ほら、ニコ、お前が抱いてやりなさい」


「はい!」


 男が幼子を抱えあげ、そっとこちらに渡す。

 幼子を包んだ布は温かく、ふわふわと柔らかかった。

 消毒液のような匂いが漂う。


「うわーっ!

 凄く軽いね!

 柔らかい!」


「ははは、ええとね、この子の名前は、ボリスだよ」


 男はカプセルの中から銀色のカードを取りだし、それを読んだ。

 カードには、幼子の名前が書いてあるらしい。   


「ボリス、これからよろしくね!」


 ニコの声で、幼子が目を覚まし泣きだす。

 男が小型のシリンダーをカプセルから取りだし、その端を幼子の口へもっていく。

 コクコクと液体を飲む音がする。


「うわーっ! 

 美味しそうに飲んでるね!」


「そうだな。

 早く大きくなって、イスタニアのために戦う立派な兵士になってもらわないとな」


 男が大きな手でニコの頭を撫でたので、視界がぐらぐら揺れた。


 ◇ 


 記憶を読みとり、それを受けわたすことができるブランの能力で、俺はニコの幼少期を体験した。

 そして、男だけの社会で、どうやって子供を授かるか、その秘密を目にすることができた。

 

「点ちゃん、どう思う?」


『(pω・) カードに書いてある文字は、明らかに『学園都市世界』の文字と似ていました』

 

「俺たちが昨日までいた『田園都市世界』と同じように、ここもあそこの影響を受けてるってことだね?」


『(・ω・) ニコの記憶にあった円柱形の白い建物は、『田園都市世界』の『旅立ちの森』と呼ばれていた建物と、構造が酷似しています』 

 

「なるほど」


『(・ω・)ノ もう一つの大陸にあった都市からの映像も見てみますか?』

 

「うん、見てみよう」

 いつもお読みいただきありがとうございます。

 イスタニアでは「生まれる」という言葉が無いんですね。

 ここでも学園都市世界の影響がみられました。

 次話、点ちゃんの活躍で、この世界についてさらに驚くべき事実が分かります。

 明日へつづく。

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