表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第11シーズン ポータルズ列伝
508/927

第505話 ポータルズ列伝 プリンスの騎士編 第10話 ダンジョンと冒険者(5)

 洞窟を出たマックは意外な行動に出ます。

 冒険者たち全員が、ダンジョンの入り口である塚の外へ避難した。


「あ、兄貴、どうして逃げないんです?」


 白騎士が尋ねるのも無理はない。マックは冒険者たちを指揮し、ダンジョン入り口から少し離れた辺りに、土を盛ったり、丸太を並べたりしている。


「説明は後だ!

 それより、お前も手伝え!」

 

 結局、白騎士も丸太を担いで「土木工事」を手伝うことになった。


「マックさん、そろそろ来やすぜ!」


 あごヒゲを生やした、がっしりしたベテラン冒険者が報告する。


「よっしゃ、いいか者ども!

 一匹たりとも逃がさねえつもりでやれ!

 ここで食いとめねえとどうなるか、分かってるな!」


 マックは大声で冒険者に呼びかけた。


「「「「「おーっ!」」」」」


「幸い、今回はベテランが多い。

 もしかすると、生きて帰れるかもしれねえ。

 気合い入れろ!

 ゴブリンどもに冒険者魂、見せつけてやれっ!」


「「「「「おおーっ!」」」」」


『星の卵』『プリンスの騎士』が集まった所にマックがやってくる。


「おい、スタン。

 お前は、帰り路が分かるよな。

 お前ら三人は、すぐ町に帰ってこのことをギルドに報告してくれ!」


「は、はい!」


「兄貴、私たちは帰らないわよ」


 白騎士が静かな声で言うのを聞き、マックが赤鬼のような顔になる。


「馬鹿野郎!

 駆けだしが、生意気言うんじゃねえっ!

 とっとと帰らねえと、ぶっ飛ばすぞっ!」


 さすが長年ギルマスをやっていただけあり、こんな時のマックは凄い迫力だ。

 しかし、白騎士は顔色一つ変えず、こう言った。


「ここでゴブリンってのを食いとめなきゃいけないのは、ヤツらが町を襲うからでしょ?」


「……」


 マックの沈黙が、白騎士の言葉通りだと認めていた。


「あたしは『プリンスの騎士』なの。

 プリンスを守るためには、この命、いつでも差しだすわ」


「……しょうがねえな。

 多分、命はねえぞ」


 白騎士の目を覗きこんでいたマックが、首を左右に振る。


「あんたたちは、街に帰んなさい」


 他の騎士に対し、白騎士が珍しくリーダーの威厳を見せる。



「「いーっだっ!」」

「戦闘上等!」

「ま、魔法……愛の魔法で奇跡を起こす!」


「な、なんでよっ!?」


 自分はマックの忠告を聞かなかったくせに、白騎士は仲間の言葉に怒っているようだ。


「ちょっとね、思いついたことがあるのよ。

 さっき洞窟ではパニクってて使えなかったけど」


 いつになく真剣な表情で、桃騎士がそう言った。


「「みんなでがんばろう!」」


 黄騎士と緑騎士が、声を合わせる。


「パーティは一つ!」


 黒騎士が、彼女にしては長めのセリフを吐く。

 

「仕方ないわねえ。

 命懸けだってのに。

 じゃ、『プリンスの騎士』で頑張るわよ!」


「「「「「おー!」」」」」


 こうして地球からやって来た騎士たちは、ゴブリンから街を守るため、ダンジョン前の陣地に留まることになった。


 ◇


 アリストギルドでは、昼食を終えたキャロが、待合室の掃除に取りかかっていた。

 彼女はギルマスになった今も、このギルドに来た当初からの日課である掃除を、自らの手でおこなっている。

 ギルド職員からは止められているのだが、自分でやらないと気持ちが落ちつかないのだ。特に今日は何だか胸騒ぎがして、じっとしていられなかった。

 彼女がホウキで床を掃こうとしたタイミングで、開けはなたれた入り口から、若い冒険者が飛びこんできた。


「スタン君、スノーちゃん、リンド君!」


 それはマックに連れられ、ダンジョン体験に向かったはずのパーティ『星の卵』の三人だった。


「そんなに息を切らせて、みんな、どうしたの?」

 

 息も絶え絶えの三人を見て、キャロはすぐ食事用のカウンターへ声を掛け、お盆にコップを三つ乗せ戻ってきた。

 床に腰を落とした少年少女にコップを渡す。


 震える手でコップを受けとったスタンは、半分ほどもこぼしながら、一気に水を飲みほした。


「ゼエゼエ、た、大変です!」


「見れば分かるわ。

 ダンジョンで何かあったのね?」


 キャロが励ますようにスタンの背中を撫でた。


「か、隠し通路から、ゴブリンがいっぱい出てきて!

 マックさんが、スタンピードを防ぐため、ダンジョン前に残っています!」

 

 緊急時にこれだけのことを伝えられれば十分だ。

 冒険者としてのスタンの能力が予想以上だったので、キャロは嬉しかったが、今はそれどころではない。

 

 一方、新米冒険者三人は、キャロがこの緊急時に黙って目を閉じ、じっとしていることに戸惑っていた。

 彼らは、キャロが念話でシローと連絡できるのを知らない。

 しばらくそうしていた彼女は、身体の力を抜き長く息を吐くと、落ちついた声でこう言った。

 

「マックさんたちは大丈夫です。

 安心していいですよ」


「い、一体、どうして?」


「あなたたちも、後片づけにかりだされるでしょうから、今から体を休めておきなさい。

 いいわね、きちんと食事もとるのよ。

 活躍のご褒美に、食事代は要らないから、ここで好きなものを思いっきり食べなさい」


 まだ、納得がいかない三人が、ぼんやりした顔をしている。


「現地には、シローが助っ人に向かったの」


 キャロが立ちさるときに囁いた言葉で、三人は顔を見あわせた。


「お兄ちゃん……」

「スノー……」

「スタン君……」


 そう口々に言った後、彼らは声を合わせた。


「「「見たかったーっ!」」」


 三人は、残念のあまり、床を拳で叩いていた。


 いつもお読みいただきありがとうございます。

 冒険者たちは、ゴブリンの大暴走を防ぐため、命懸けでダンジョン脇に陣取ったようです。

 さて、いったいどうなるのか。

 明日へつづく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ