第469話 奴隷世界編 第83話 心やすらぐ場所
いよいよ、第十シーズン『奴隷世界スレッジ編』も最終回。
『やすらぎの家』に集まる仲間たちです。
どうぞお楽しみください。
俺たち家族は二十日間に及ぶドラゴニア世界での滞在を終え、パンゲア世界アリスト国にある『くつろぎの家』に帰ってきた。
リーヴァスさんだけは、少しの間ドラゴニアに残っている。
彼はネアさんの家に住まわせてもらい、そこから新築されたギルドに通っている。
ベテランであるリーヴァスさんからの助言助力は、設立間もないドラゴニアギルドにとって価千金だろう。
俺はここのところ、『くつろぎの家』の拡張に取りくんでいる。
街の一区画全部を使えるので自由度が高く、土魔術で試行錯誤しながら改良を重ねている。
最初、外周に壁を巡らせたり、『地球の家』のように建築物で中庭を囲むことも考えたが、最終的には、外壁の無い開放的なデザインに落ちついた。
外壁が無い公園をイメージしてもらうといいだろう。
壁をめぐらさないかわりに、敷地の外縁にぐるりと神樹の種を植えた。
中庭には、すでに『光る木』の神樹様が育っているから、それを中心に小さな森のようにする予定だ。
全体の外観に関しては、『巨人の里』にあった『鎮守の杜』や狐人領の大木と共生する家を参考にした。
中庭として使っていた広場は、以前よりはるかに広くなり、芝生に似た草を植えている。これは丈が高くならず、刈りこむ必要がない優れものだ。
草がしっかり根づくまで庭が使えないコリンと二匹のポポは、家族の誰かが散歩することで、ストレスを発散している。
二匹のポポは大量の草を食べるから、俺が世話をすることが多い。瞬間移動で草原地帯まで連れていくのだ。
俺が留守の間、彼らのエサが蓄えられるように、円塔型のサイロも造った。サイロの上部には小部屋が設けられ、見晴らし台にもなっている。
そういえば、ナルとメルは、『神樹戦役』で活躍したご褒美に、女王陛下から『魔獣大使』の称号を頂いた。
これは、彼女たちがかつてエルフ王からもらったものと同様、国内で好きなだけ魔獣に乗ってよいというものだ。
ナルとメルはこの権利を使い、ポポラとポポロに乗り、街中を散歩することもある。
そんな時は、町の子供たちがその後についてぞろぞろ歩く姿が見られる。それを見るため、遠くの町からやってくる観光客が現れた。
ピンクのカバに似た動物、ポポはこうして街の名物になった。
そのため、ナルとメルは決まった曜日に、ポポの散歩をしている。
◇
改良を重ねていた『くつろぎの家』だが、大まかな形は整ってきた。
新しく用意した建物もほぼ完成したから、パーティーを開くことにした。
招待状を送った人全員から、参加の知らせを受ける。
昼から始まったパーティーは、いくつかの場所に分かれて行われた。
子供たちは、三倍にも拡張された中庭で駆けまわっている。ナル、メル、イオ、ポポラ、ポポロ、そして巨人族のチビはここにいる。この日は肌寒く、午後から小雨が降っていたのだが、上をシールドで覆われた広場からは、暗くなるまで子供たちの笑い声が聞こえていた。
◇
お茶好きやお菓子好きは、『くつろぎの家』屋上にある東屋でくつろいでいる。ルル、コリーダ、エンデ、ドワーフの女王シリルはここだ。
俺も彼女たちの相手をしている。
シリルは国政があるから参加は無理だと思ったのだが、絶対参加すると言って聞かなかったらしい。
そのため、デメルが臨時に母国へ帰り、代理を務めている。彼女がそれに応じたのは、俺が加藤とのデートをセッティングすると約束したからだ。デメルは畑山女王から、加藤とのお月見デートの話で散々あおられたらしい。何やってんのかね、女王様は。
「シロー、この冷たいお菓子はなんじゃ!
凄く美味しいのう」
「シリル様、それはアイスクリームというお菓子ですよ。
俺の故郷から持ってきました」
「さすが『お菓子騎士』じゃのう」
いつもナル、メルの面倒をみているルルは、小さなシリルが気になるらしく、アイスがついた彼女の口元を拭いてやったりして世話を焼いている。
◇
女王畑山や聖女舞子、コルナたちお風呂好きは、新しく建てた大浴場で温泉浴を楽しんでいる。ここは水着着用だから、マスケドニア王や軍師ショーカ、エルフ国王一家も入浴中だ。シリルに頼まれ、スレッジ世界から連れてきた彼女の父である前ドワーフ皇帝と、前帝国国王もここにいる。
ちなみに、この二人、同じく入浴を選んだギルド長ミランダさんに失政を厳しく叱責され、小さくなっていた。まあ、これは仕方ないよね。
大浴場は、縦二十五メートル、横十メートル、深さ一メートルから三メートルという三日月形もので、温水プールとしても使える。これはナルとメルが泳ぎを覚えるために造った。
温泉の雰囲気が出るよう、自然石で縁を囲んである。
足湯ができるような場所や、短いながらウオータースライドできる場所、打たせ湯や滝行ができる場所も作ってある。
「シロー、いくらかかっても構わん!
あの浴場を我が王宮に造ってくれ!」
マスケドニア王からそう言われたが、さすがに断った。だって、これ作るのもの凄く手間がかかるんだよ。それにいくつもアーティファクト使ってるからね。
◇
昼からお酒が飲みたい人は、離れである『やすらぎの家』を増築して作ったラウンジに集まった。
天竜の長や、竜人のラズローとジェラード、アリストギルドのマスターであるキャロとその父フィロ、前ギルマスのマック、天竜国から帰ってきたばかりのリーヴァスさん、そしてネアさんも、こちらに参加した。酒が飲めない加藤も、なぜかここでジュースを飲んでいる。
ちなみに、ジェラードはコリーダと一緒にお茶を楽しみたがっていたが、東屋は使える人数が限られるため、渋々こちらに参加している。
「リーヴァスさん、聞いてくださいよ。
シローはね、いつも俺に冷たいんです」
ジェラードがそんなことを言ってリーヴァスさんにからみ、彼を困らせたらしい。
素面に戻ったとき、ラズローからこっぴどく叱られていた。
◇
夕方になると、広場に集まり、みんなでバーベキューをする。
ずっと駆けまわっていた子供たちは、お腹が減っていたのだろう、みなガツガツ食べると、すぐにウトウトし始めた。彼らは新しく作った格技場にマットを敷き、そこで寝かせた。
チビは普通の家屋には入れないからね。
ちなみに、この日バーベキューで使ったお肉は、地球から持ちこんだA5級のもので、日頃、比較的固い肉に慣れているみんなは、その柔らかさと極上の味に驚いていた。
日本の牛肉が異世界の人々に認められた瞬間だった。
お、これって商売にできるんじゃないの?
『( ̄ー ̄) まあ、それはできるでしょうねえ』
最近、点ちゃんは不愛想な顔が多いよね。
『( ̄ー ̄)つ 誰のせいやねん!』
不愛想突っこみ、ありがとさんです。
◇
パーティーが終わり、俺が皆を彼らの世界、彼らの国へ送る。
家に帰ってきたら、すでに深夜だった。
大浴場で入浴を済ませた俺は、家族とラウンジに集まった。
「みんなお疲れさまでした。
いいパーティーだったね」
「そうですね。
皆が気ままにする、今日のようなパーティーもたまにはいいですね」
ルルがそう言って笑う。
「お兄ちゃん、点魔法を一番使ってるのこういう所だよね」
『(・ω・)ノ コルナさん、よく分かってるー』
「点ちゃんも大変だねえ」
『ぐ(u ω u) そうなんですよ。ご主人様は分かってくれませんからね』
「いつもご苦労様、点ちゃん」
『(^▽^) コリーダさん、ありがとう』
「シローをよろしく頼みますぞ」
『(^▽^) ワーイ、リーヴァスさんに頼まれちゃった』
「ミー!」(点ちゃん、凄いね!)
みなさーん、俺の事、忘れてませんか?
『(・ω・)ノ あ、ご主人様、いたの?』
ううう。
「ミ~……」(よしよし……)
白猫ブランに頭をぺしぺしされ、涙にくれる俺だった。
――――――――――――――――
第十シーズン『奴隷世界スレッジ編』終了
第十一シーズン『ポータルズ列伝』に続く
いつもお読みいただきありがとうございます。
第十シーズン、いかがでしたか。
このシーズンは、一章で、五章分くらいのエネルギーを遣いました。何より、ナルとメル、ルル、コルナ、コリーダそれぞれの物語を、糸を紡ぐようにより合わせるのが難しかったです。
さて、『ポータルズ』ですが、ここまで外伝として書き溜めていたもの、そして、新しく書くものを合わせ、各登場人物にスポットを当てた『ポータルズ列伝』をお届けする予定です。
どうか、お楽しみに。
また、それと同時にここまでの文章に大幅に手を入れることも考えています。
これからも毎日の更新を維持できたらなあと考えています。
第十二章は、まだ一文字も書かれていませんが、構想だけはあり『放浪編』という題になる予定です。そして、『奴隷世界編』最後の方に出てきたルル、コルナ、コリーダとのデートが伏線になるようなお話になると思います。
今後とも『ポータルズ』をよろしくお願いいたします。
では、恒例になっています、皆さんからシーズン最後のご挨拶を。
前帝国国王「この度は我らの不徳から読者様が住む世界まで危機に巻きこみ申しわけない」
前ドワーフ王「誠にすまぬ」
ミランダギルド長「あんたたち! 本当に迷惑なんだよ! 王となったからにはキチンと国を治めな!」
二人の前王「「す、すみません」」
女王シリル「父上、元気を出すのだ」
巨人の長「シリル殿はお優しいのう」
前ドワーフ王「そうじゃろ、そうじゃろ」
皇女デメル「父上は、本当にシリルに甘いから」
女王シリル「そんなことより、読んでくれた皆様、わらわは感謝しておる、ありがとう」
巨人族チビ「本当にありがとう! おかげでボク、お父さんとお母さんに会えました」
ルル「チビ君、よかったね。読者の皆様ありがとうございました」
コリーダ「私も家族とまた会えました。読者の皆様に感謝です」
コルナ「今シーズンは、私にとって読まれるとちょっと恥ずかしいエピソードもあったけど、八十話を超えるお話を読んでいただき、ありがとう」
エンデ「作者がコルナさんのデート情報を書いてしまったから……」
リニア「あの人、何でも暴露するつもりかしら」
コルナ「そういえば、ルルとコリーダのデートも晒されていなかった?」
ルル「……そうなんです。あの作者は節操がないから」
コリーダ「ほんとうに、そのようね」
作者「あのう……」
史郎「ああっ! びっくりしたー。あんた、どうしてテーブルの下から出てくるんだ?」
作者「いえ、その~、なにかと差しさわりがあるようで」
ナル「作者はヘタレね」
メル「ヘタレー」
作者「いや、ヘタレと言えば――」
ルル「作者さん、何か言いたいことでも?」
作者「いえ、あ、ありません」
女王畑山「まあ、許してあげてよ」
作者「女王陛下! ありがたやーっ!」
女王畑山「土下座はやめなさい、土下座は!」
聖女舞子「畑山さん、デートをセッティングしてもらったからって、優しくしてはダメよ」
デメル、エンデ「「ええっ! まさか加藤と……」」
女王畑山「ええ、ええ、デートしましたとも。しかもお月見デート、テヘ」
加藤「麗子さん、キャラが……」
ジェラード「おい、シロー、お前まさか、コリーダさんとデートしてないよな!」
史郎「いや、俺たち、すでに結婚してるから」
ジェラード「……」
ネア「ジェラード様、お気を確かに!」
リーヴァス「ネアさんの言うとおりじゃよ」
女王シリル「シロー、わらわも、お前とそのデートとやらをしたいぞ!」
ナルとメル「「ナルとメルが先なんだもん」」
前ドワーフ王「シリルや、お前も父さんとデートしよう」
ミランダ「だから、あんたはダメなんだよ!」
前ドワーフ王「ひいっ!」
『(Pω・) こうしてみると、ご主人様以外にも、ダメダメな人がいるみたいだね』
ブラン「ミー!」(そうみたい)
『(*'▽') みなさん、読んでくれてありがとう。またお会いしましょう!』
ブラン「ミーミ!」(またねー!)
猪っ子コリン「キュキュウ!」(ありがとうー!)
ポポ「ポポポーッ!」(ありがとう!)
ちいドラ隊+イオ「「「また会おーね!」」」




