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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第10シーズン 奴隷世界スレッジ編
444/927

第442話 奴隷世界編 第56話 決戦(2)

 ドラゴナイトの影響で苦しむ子竜たち。

 コルナとコリーダは、彼らを助けることができるのか?



「あ、あれはっ!!」


 同盟軍の前線にいるドワーフ兵に衝撃が走る。


「し、神獣様……」


 そう。彼らが目にしているのは、伝承の中で伝えられてきた神獣そのものだった。

 神獣は次々と現れ、横一列に並んだ。

 

「ダ、ダメだ……向こうに神獣がいるってことは、正義は向こうにある!」

「神獣様に歯向かうことはできない……」

「もう、お終いだ!」


 ドワーフ軍の兵士半数以上が武器を捨て、逃げはじめた。

 逃亡する兵士に向け、ドワーフ軍、帝国軍から矢や魔術の火が降りそそぐ。

 しかし、その攻撃の大部分は見えない壁にぶつかり、逃亡兵に届かなかった。 


 ◇


「もう戦闘が始まってるみたい!」


 子竜の背中に乗ったミミがそう叫ぶ。

 前方には魔術が放つ閃光が幾筋も見えていた 


「でも、なんだか変だよ。

 山岳地帯ではなくて、自軍の後方を攻撃しているように見える」


 ポルは獣人ならではの視力を活かし、冷静に状況を見ていた。


 その時、急にガクンと子竜の高度が下がる。

 子竜の背中に座るコルナは、その異常にいち早く気づき、治癒魔術を施している。

 しかし、子竜の苦しそうな様子は変わらなかった。


「すぐ下に降りて!」


 コルナの声に答えるように、二体の子竜が急降下する。

 地面に降りた子竜は、ぬいぐるみに変身した。

 コルナが二人の子竜を抱く。

 

「二人とも、しっかりして!

 どうしよう、あと少しなのに……」


「マンマ……」

「マーマ……」


 熊とウサギのぬいぐるみが弱々しい声を出す。

 子竜がそうなった原因も分からないから、コルナの焦りは増すばかりだ。

 治癒魔術を掛けているのに、次第に動かなくなるぬいぐるみに、コルナの顔に絶望が浮かぶ。


 その時、上空から何かが降りてきた。


 ◇


 コルナたちの側に降りてきたのは、五体のワイバーンだった。やはり二体のぬいぐるみを抱いたコリーダが、その背から降りてくる。 

 彼女が抱いたぬいぐるみも苦しそうだ。   


「コルナ、これはきっとドラゴナイトの影響よ」


 コリーダが確信をもってそう告げる。


「では、これの出番ですな!」


 いつの間にかコリーダの横に立ったリーヴァスが、黒いケースを掲げる。


「コルナ、準備はいい?」


「ええ、コリーダ。

 あなたこそ、大丈夫?」


「こちらは任せて。

 すぐに始めて」


 コルナは、猫賢者から教わった長い呪文の詠唱に入った。

 途中で間違えると最初からやり直しだ。

 弱りゆく愛しい子竜を目の端に捉えたコルナは、しかし、全神経を魔術の詠唱に向けていく。

 それこそが、子竜を助けられる唯一の方法だからだ。


 ミミとポルは、弱りつつある子竜の姿をの当たりにしているのに何も手助けできず、気が気ではない。

 彼らにとり、永遠とも思える時間が過ぎた後、コルナが右手を挙げた。


 コリーダが黒いケースを開け、中のものを取りだす。それは三十センチほどの湾曲した漆黒の角笛だった。

 彼女がそれを口に当てると、コルナが右手を笛にかざし詠唱の最終節を唱えた。

 コルナの手から出た青い光が、コリーダの持つ黒い笛を覆う。


 コリーダが鳴らす笛の音が辺りに響きはじめる。それは大きな音ではないが、草原を越え、巨人の里やシローたち、そして、同盟軍の所にまで届いた。

 彼らには見えないが、音と共に広がった青い光が辺りを覆っていた。


「な、なんだ、この音は?」


 ガーベルがどこからか聞こえる音に苛立つ。

 しかし、その音は、多くの兵士の心を興奮から安寧へと導くものだった。

 さらに多くの兵士が武器を捨て、逃走を始めた。


 ◇


「コルナさん、コリーダさん、子竜が意識を取りもどしました!」


 ポルがそう報告しても、コルナとコリーダは演奏と魔術に集中しており、それに気づいていないようだった。


「ポル、邪魔をしてはいけないよ」


 リーヴァスがポルの肩に手を置く。


「リーヴァス様、これは一体?」


「コリーダが吹いているのは、『黒竜の角笛』というアーティファクトだよ。

 ある条件でそれが吹かれたとき、ドラゴナイトがその効果を失う」


「ある条件ですか?」


「うむ、さきほどコルナが唱えていた魔術がそうだ」


「そうでしたか。

 お二人はどうしてあのままなのでしょう?」

  

「この術は、発動したら最後まで行う必要がある。

 途中でやめれば、ドラゴナイトがまたその効果を及ぼすことになる」


 集中からすでに蒼白になっているコルナとコリーダを愛しげに見つめ、リーヴァスはつぶやいた。  

 

「大した娘たちだ」

    

 まるで彼の言葉が合図であるかのように、コリーダの演奏が終わる。

 二人は、共に草原に倒れかける。

 風のようにやってきたリーヴァスが、気を失った二人を両腕に抱きかかえる。


 元気が無かったワイバーンたちも、今は嬉し気な鳴き声を上げている。

 ポルが草の上に敷いた布に横たえられたコルナとコリーダに、ぬいぐるみが二匹ずつ抱きつく。


「やっとお迎えが来たようね」


 青い空を近づいてくる二匹の真竜を見あげ、ミミがそう言った。


 いつもお読みいただきありがとうございます。

ウサ子、そして、コルナとコリーダが大活躍したお話でした。

次話、ドラゴナイトの影響が消えた戦場では、何が起きるのでしょう。

 明日へつづく。

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