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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第10シーズン 奴隷世界スレッジ編
425/927

第423話 奴隷世界編 第37話 人族の王国(4)

 加藤と史郎が、珍しく不穏な雰囲気に。

勇者加藤は正義感が半端ないから、これはしょうがないよね。



 俺は、人族が支配するヒュッパス大陸の、主だった都市の上空から無数の点をばらまいた。

 わざとゆっくり時間をかけ、出発してから二日後の夕方、ドワーフ皇国王都近くの草原にある『土の家』に戻った。


 首輪の事で疲れきったシリルを背負い、家の中に入る。


 俺の姿を目にした青竜族の若者が膝を折ろうとしたが、禁止事項を思いだしたのだろう、なんとか平伏するのを思いとどまった。


「ただいま」


 俺が気軽に声を掛けると、彼は首をブンブン縦に振っている。

 

「お、帰ったか。

 こっちは、特に何も無かったぞ。

 しかし、隣の二人は、気持ちいいほどよく食うな」


 加藤が、呆れたような声を出す。

 留守中、チビとポポは、好き放題食べていたようだ。


「シリルちゃん、どうしたんだ。

 やけにぐったりしてるな」


「ああ、後で事情を話すからな。

 それより、ローリィがかなり疲れてる。

 まだ、1号に残ってるから、介抱してやってくれ」


「ああ、分かった」


 シリルとローリィを寝室で休ませると、二人以外を居間に集める。


「で、人族の国はどうだった?」


 加藤が俺に尋ねた。


「ああ、一応、準備はできた。

 後は、竜人全ての所在が分かるのを待つだけだ」


「シローとやら、一体どうやったらそんなことができるのじゃ?」


 デメルが呆れ顔になっている。

 それには答えず、人族の国ヒュパリオン帝国でもクーデターが起きていた事を告げた。


「しかし、本当にソラル姉さまは、人族などと手を結ぼうとしておるのか?」


 デメルには、人族に対する偏見がかなりあるからね。


「ああ、普通ならそうしないだろうが、今回は共通の目的があるようだ」


「なんだ、それは?」


「デメル様は、『大きなるものの国』をご存じですか?」


「な、なぜ、そちがそれを知っておる!」


 デメルも、その場所の事を知っていたようだ。


「人族は、『巨人の国』と呼んでいるようですが、ドワーフ皇国と帝国は、力を合わせてそこを攻めようとしているようです」


「しかし、我が国の王は、代々その地を保護してきたのじゃぞ」


「だからこそ、あなたの姉は、前皇帝が邪魔だったのでしょう」


「なんたることだ……姉上の優しい表情の下に、そのような野望が隠されていたとは!」


「ところで、デメル様、あなたは奴隷制度についてどう思われていますか?」


「うむ、わらわは、あまり良い制度とは思うておらん」


「なぜです?」


「考えてもみい、人は強制されて働かされるより、己から働くときこそ生産力が上がるのじゃ」


 このデメルという娘は、ただシリルにイジワルするだけの、お転婆ではなかったようだ。


「ま、まあ、この考えは、人から教えてもろうたのだがな」


 デメルが頬を染め、加藤の方を見ている。

 モテモテぶりにもほどがあるぞ、勇者加藤。


「シリルはどうもそのことが理解できないようだから、首輪を着けてもらった」


「おい、史郎!

 お前、何てことしたんだっ!」


 加藤が本気で腹を立てている。

 俺の事を『ボー』ではなく、『史郎』と呼んでいるのがその証拠だ。


「このお姫様のように、誰もが理性で物事を考えられるわけじゃないんだぞ、加藤」


 俺がデメルを指さすが、彼は真剣な顔つきで俺を見ている。

 なるほど、この顔つきに女性は弱いのか。


『へ(u ω u)へ やれやれ、この人は、全く……』

  

 加藤が両腕を伸ばし、俺の胸倉をつかんだとき、声が掛かった。


「シローの言うとおりじゃ。

 カトー、落ちつけ」


 寝間着代わりの白いローブを着たシリルが、ドアの所に立っていた。 

 彼女はゆっくり席に着くと、お茶を入れるよう手で俺に合図した。

 彼女の前に、湯気が立つカップが現われる。

 彼女はそれを一口飲むと、話を続けた。


「わらわは、奴隷制度を国の文化だと思うてきた」


 彼女が言葉を止め、悲痛な表情を見せた。


「それがあのような苦痛を、人々に与えていたとはな……」


 彼女の目から、涙がつうとこぼれた。


「わらわ、一生の不覚じゃ」


 しばらく黙った後、彼女が続ける。

 

「お主たちにも、辛い思いをさせてきたの。

 すまぬ」


 竜人たちに向け、彼女は深く頭を下げた。

 当の竜人たちが、すごく驚いている。

 それはそうだろう。

 最も身分が高い者が、最下層の自分たちに頭を下げたのだから。


「シローが目を覚ませてくれなければ、わらわは、あのままじゃった」


 シリルはそう言うと、机に伏し号泣を始めた。

 いつの間にか部屋に入ってきたローリィが、そんなシリルを椅子ごと抱きしめる。

 加藤は、握っていた俺の服をやっと放した。


「ボー、だけど、シリルちゃんには、きちんと謝っておけよ」


「ああ、分かってるよ」


 俺は、友人の目をまっ直ぐ見た。


「おい、なんだその目は、尊敬したような目で俺を見るなよ、気持ち悪い!」


 いや、本当に尊敬してるんだがな。


「私も、あなたを尊敬しています」


 デメルが胸の前で両手を合わせ、キラキラした目で加藤を見る。

 なんか、この娘、キャラが変わっちゃったよな。

 恋の魔法は強力無比だな。


『へ(u ω u)へ やれやれ……』


 ともかく、次にやることは、『大きなるものの国』訪問か。 

 ゆっくりする時間がとれそうにないことを考え、俺はげんなりするのだった。 


 いつもお読みいただきありがとうございます。

加藤は、みんなから尊敬されました。そして、デメルも彼にメロメロに。

『(*'▽') 勇者パネー!』

 だよね。

 明日へつづく。

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