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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第10シーズン 奴隷世界スレッジ編
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第415話 奴隷世界編 第29話 ルルの捜索

 ルルが史郎の後を追います。


 

 ルルとアンデは、数人の冒険者と一緒に山道を進んでいた。シローがギルドに伝えた隠しポータルを目指しているのだ。 


 アンデがケーナイの街から連れてきた冒険者の一人は、時々地面に鼻を近づけ匂いを嗅いでいる。彼の手には、ルルが渡したぬいぐるみがあった。その小熊のぬいぐるみは、シローが地球からのお土産で買ってきたもので、寝る時メルがいつも抱いていたものだ。犬人の冒険者は、その匂いを追っていた。


「うーん、どういうことだろう」


 犬人冒険者は、納得いかないという表情をしている。


「おい、デデノ、どうしたんだ?」


「はい、それが恐らく娘さんたちだろう匂いは残ってるんですが、それが迷いなく俺たちと同じ道を通ってるんですよね」


「それがどうした?」


「いえね。

 シローさんの匂いは、残ってないんですよ。

 娘さんは、どうやって彼の後を追ってるのかってことです」


「なるほど……ルルさん、何か心当たりがありますか」


 ルルは、もしかしたらという予想はあったが、ここでいい加減なことを言うべきではないから、次のように答えた。


「娘たちがどうやってシローを追いかけているか、私にもまだ分かりません」


「そうですか」


 一行は途中で一度キャンプし、さらに山道を進んだ。

 足場が悪く、ルルの肩が揺れるからか、黒猫がそこから降り、みなの前を歩きだした。

 道は、途切れ途切れになってきた。

 

「娘さんたちが通ってから、大きな雨が降ってないようで助かりました」


 匂いを追っているデデノが、ルルに話しかける。

 

「雨が降ると、匂いが追えなくなるのですか?」


「その通りです。

 だから、こういう天気だと、急がなくてはなりません」


 デデノが空を指さした。そこには黒い雨雲があった。


「しかし、シローが通ってから、何度か雨が降ってる。

 ナルちゃんたちは、匂いじゃない何かを追ってるのかもしれないな」


 アンデがそう言った時、小雨が降りだした。

 それは、すぐに本格的な雨となった。


「やばいぞ、こりゃ!

 匂いが消えちまう!」


 もちろん、ナルとメルが、シローが渡った隠しポータルに向かっているなら心配いらないのだが、途中で別の場所へ向かっていたなら、匂いが追えず困ったことになる。

 彼らは、雨で滑りやすくなった山道を、どんどん進んでいった。


 打ちつける雨に体の芯まで冷えたころ、やっと洞窟の入り口にたどり着いた。

 入り口を塞いでいる岩を前足で叩くことで、黒猫が隠されていた洞窟を教えてくれたのだ。

 その岩を横にずらし、中へ入る。


 洞窟の奥には広い空間があり、そこには用途の分からない金属製の機械がいくつかと、石造りの祭壇らしきものがあった。

 人の背ほどの祭壇には、緑色の扉が付いていた。


「おそらく、これがポータルでしょう」


 ルルは、コルナからマスケドニアの小島にあるポータルの様子を聞いたことがあった。

 ポータルには、いくつかの決まった様式があるのだ。


「ふむ、問題は、ここからどうするかだな」


 アンデは思案顔だ。

  

「デデノさん、娘たちの匂いは?」


 ルルの落ちついた声が洞窟にこだました。


「ええ、ここで途絶えていますね」


「アンデさん、皆さん、ここまでありがとう。

 後は、私とこの子だけで行きます。

 行く先も分からないポータルへ、みなさんを入れる訳にはいきませんから」


 ルルは、再び肩に乗ってきた黒猫を撫でた。


「ルルさん、オレはギルドとの連絡もあるから、どうしても同行できない。

 本当は、一緒にシローを追いたいのだが申しわけない」


「アンデさん、あなたには、この世界に居てもらわないといけません。

 私の仲間が連絡を取るのを、ギルドで助けてください」


「……ルルさん、すまない」


「ギルマス、俺はルルさんについて行きますよ」


 冒険者の一人が、そう口にした。


「何を言ってるか分かってるのか、デデノ。

 命懸けになるぞ。

 二度とこの世界に帰ってこられんかもしれん。

 それでも、いいのか?」


「ははは、そんなこと思ってませんよ。

 だって、これを渡った先には、『黒鉄シロー』がいるんでしょ?」


「まあ、そうだが……」


「彼は、何度も獣人のために命をかけてくれた英雄ですよ。

 ここで彼を追わないと、俺は一生後悔します」


「……そうか、分かった。

 だが、無茶はするんじゃないぞ。

 なんとしても、必ずケーナイに帰ってこい」


「分かってますよ」


 結局、六人いる冒険者の内三人が、ルルと一緒にポータルを潜ることになった。


「では、アンデさん、行ってきます」


「ルルさん、みんな、気をつけてな」


 二人の冒険者が緑色の石でできた扉に手をかける。

 それが開かれると、黒いもやが渦巻くポータルが現れた。

 デデノがまずポータルに入る。続いて黒猫を連れたルル、二人の犬人がポータルを潜った。


「神獣様、神樹様、彼らをお守りください」


 ポータルから少し離れたところで、膝をついたアンデが祈りを捧げた。


 ◇


 ルルがポータルから出ると、そこは暗闇だった。


「ミー!」


 突然環境が変わったせいか、黒猫が一声高く鳴いた。

 冒険者の一人が、手探りでカバンから灯りの魔道具を取りだし、それに灯をともす。

 照らしだされたのは石造りの小さな部屋で、そこは湿っぽく、かび臭い匂いがした。


 狭い出口を潜りぬけると、上に向かう階段があった。

 それを登りきると、石造りの古い遺跡のような場所に出た。周囲は森に囲まれている。


「デデノさん、娘たちの匂いは分かりますか?」


「ええ、微かですが、残っています」


 もしかすると、こちらの世界では、娘たちが通った後、雨が降ったのかもしれない。

 ルルは、ためらいなく娘たちの匂いを追うことにした。


「では、匂いを追ってください」


「はい、分かりました」


 デデノを先頭に、ルルと三人の犬人冒険者は、森の中を歩きはじめた。


 ◇


 ルルたち四人と一匹は、木立の向こうに道を見つけた。

 そのことで気が緩んだのだろう。

 彼らは、狼型の魔獣が周囲をとり巻いているのに気づくのが遅れた。

 

「フーッ!」


 珍しく唸り声をあげた黒猫に、ルルたちは、やっと周囲の異変に気づいた。


「だめだ……囲まれちまってる」


 冒険者の一人が、絶望の声を上げる。


「気をしっかり持って!」


 冒険者に声を掛けると、ルルは腰のポーチから使いこんだ投げナイフを取りだした。

 投げナイフは、四本。魔獣は、十体以上いる。

 命懸けの戦いになりそうだ。


 魔獣は、ルルたちを中心に円を描くように歩きながら、その包囲の輪を次第に縮めはじめた。

 

 いつもお読みいただきありがとうございます。

コリーダ、コルナ、ルル、奇しくも、『竜の巫女』が、それぞれがいる世界で窮地に陥りました。

果たして、彼女たちはそれを乗りきることができるのでしょうか。

 次話、舞台は、再びスレッジ世界ドワーフ皇国へ。

いよいよ、次期国王を決める『選定の儀』が始まります。

 明日へつづく。

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