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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第10シーズン 奴隷世界スレッジ編
404/927

第402話 奴隷世界編 第16話 奴隷と闘士(7)

 史郎対巨人、戦いの行く方は?




 見上げるほどの敵に、俺は驚いていた。

 ただ、ゴブリンキングや竜王様と戦ったことがある俺としては、相手の大きさで気おくれすることはない。

 それより相手の戦闘力が問題だった。


 ゴライアスという名の敵は、刃渡りだけで二メートル近くある曲刀を左右の手に持っている。

 それが振りまわされたら、相手はすだれのように切りきざまれるだろう。


 よく見ると、ゴライアスは、その巨体に似合わず、優し気な顔だちをしていた。彼は本来戦闘を好まぬ大人しい性格なのかもしれない。その首には太く、自動車のタイヤほどある大きな奴隷用の首輪が着けられていた。


 俺が半歩右足を引き半身はんみになっただけで、巨人はビクッとからだを震わせる。その目には、まぎれもなく恐怖があった。


「初めッ!」


 審判の旗が振られる。

 大男は右手の巨大な曲刀を振りかぶると、やけくそのような表情でそれを叩きつけてきた。


 俺には、今回もその剣の動きがスローモーションのように見えた。

 ぎりぎりのところで、巨大な刀をかわす。


 曲刀は、地面に深々と食いこんだ。

 初撃が外れたのに、なぜかゴライアスは、ほっとした顔をしている。 


 俺は地面に先が埋まった剣に両手を添えると、それを持ちあげた。ゴライアスの右手は一時的に動きを封じてある。


 剣先が空に向くように持つと、点魔法の『打ちあげ花火』を発動する。

 巨大な剣は空高く上昇すると、巨大なエメラルド色の火球となり花開いた。


 おお、この剣、どんな材質か知らないが、花火にぴったりだな。


 ゴライアスは、呆然としている。

 俺が両手を出すと、彼は左手に掴んでいた巨大な剣を、魅入られたように渡してきた。

 再び巨大な美しい花火が空中に咲く。

   

 会場が鎮まりかえる中、貴族席の幼い皇女だけが、キャッキャと喜んでいた。

 両手を地面に着き、うなだれたゴライアスを見て、審判が判定を下す。


「勝者、シロー!」


 音が無い会場が一転、爆発したような歓声に包まれた。


 ◇


 神託武闘後、ゴライアスは、彼の『ご主人様』により、街はずれの荒野に連れてこられた。


「このクズ野郎!

 大枚はたいて手に入れたのに、肝心な時にあのザマはなんだ!」


「で、でも、ボク……」


 ゴライアスの声は、巨大な身体に似ず、少年のそれだった。


「この罰は受けてもらうぞ!」


 男の顔が邪悪に歪む。

 彼が呪文を唱えると、ゴライアスの顔が次第に赤くなる。

 奴隷の首輪が締まっているのだ。


「く、苦し……」


 ゴライアスの顔色が、赤から青に変わる。


「苦しめ!

 苦しめっ!

 ハハハハハハ!」


 男が高笑いしたとたん、彼は自分の首に圧迫を感じた。


「くけっ、な、なんだっ!?」


 手で触れてみると、輪っかのようなものが、首を一周している。

 それは、まるで、奴隷の首輪だった。


「お前が他人に対し攻撃的な感情を抱くたび、その首輪は締まるぞ。

 せいぜい、死ぬまで他人に優しくするんだな」


 背後から若い男の声が聞こえてくる。氷のようなその声を聞いた途端、男は意識を失った。


 ゴライアスは、『ご主人様』が倒れた後、さっき武闘場で対戦したばかりの相手が目の前に現れ驚いていた。


「き、君は?」


「ああ、俺はシロー。

 お前は、ゴライアスだな?」


「うん、ボク、ゴライアス」


「お前は、もう自由だ。

 どこへでも好きに行け」


「……そうしたいけど首輪があるからできないの」


「首輪って、それの事か?」


 ゴライアスは、いつの間にか自分の足元に落ちている、大きな黒い首輪を信じられないという顔で見ていた。

 首筋に触ると、いつもそこにあった首輪がなくなっている。


「あれ?

 これって、ボクの首輪?」


「そうだよ」


「これ、外してくれたの君かい?」


「ああ、そうだよ」


「あ、ありがとう!」


 よほど嬉しかったのだろう、ゴライアスは座りこんで、わんわん泣きだしてしまった。

 

「じゃ、元気でな」


 シローは、そう言うと立ちさろうとした。


「ま、待って!」


 ゴライアスが、泣きそうな声を出す。


「ボ、ボクを置いていかないで!」


「だけど、俺はこれからいろいろやることがあるから、お前を連れてはいけないんだ」


「お仕事があるなら、ボクもお手伝いするから、お願いだから連れていって!」


「お前、故郷はどこだ?」


「分からないの。

 気がついたら、この人がいたの」


 ゴライアスは、気を失い足元に伸びている初老のドワーフを丸太のような指でさした。


「……しょうがないな。

 とりあえず、しばらく外に出られないが、それでもいいか?」


「うん!」


 こうして、巨人ゴライアスは、史郎と行動を共にすることになった。 


 いつもお読みいただきありがとうございます。

ゴライアスは、史郎以上にのんびり屋の匂いがします。

 では、明日へつづく。

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