第354話 異世界訪問編 第18話 新しい依頼
パーティ・ポンポコリンは、ギルド本部から、指名依頼を受けるようです。
神樹メアリー様がいる森から学園都市へ帰ると、俺はすぐに仕入れた情報をギルドとメラディス首席、ダンに報告した。
メラディス首席とダンには念話で、マウシーには直接会って伝える。
その日のうちに、マウシーが、エルファリアのギルド本部から出された依頼を持ってきた。
パーティ・ポンポコリンへの指名依頼だ。
依頼主は、エルファリアのギルド本部、依頼内容は、世界群にある神樹の調査だ。
依頼書には「神樹の調査」とあるが、本当は、エミリーが神樹メアリー様を癒したと同様のことを、他の世界でもしてほしいということだろう。
俺は、条件つきでその依頼を受けた。
条件とは、一旦エミリーを地球世界に帰すことだ。
彼女は、もともと異世界へ治療のために来ているからね。
父親のハーディ卿も、彼女の帰りを心待ちにしているはずだ。
また、この件で、翔太はパーティ・ポンポコリンに所属することになる。
彼が、エミリーの『守り手』であるから仕方なくだ。
翔太本人は、とても喜んでいたけどね。
メラディス首席に頼み、昨日会ったジョイとその上司を地球世界に招くことにした。
それによって、学園都市世界の科学を、地球世界に取りこむことができる。
それが地球の『枯れクズ』研究を何歩も進めるはずだ。
もちろん、地球の研究者の中で希望する者を、学園都市世界へ呼ぶことも考えている。
学園都市世界のポンポコ商会に、コケット素材の緑苔とお酒『フェアリスの涙』を置いておく。
そういえば、『枯れクズ』研究所の場所は、かつて賢人たちが使っていた秘密施設の跡地が選ばれた。
俺はそこに、土魔術で総二階建ての研究施設十棟を建てた。
中央に円形の大きな建物を置き、そこから三方向へ三棟ずつ放射状に延びるように配してある。
研究所は、この世界の神樹様にちなみ、『メアリー研究所』と名づけた。
俺は、学園都市世界を出発する準備を始めた。
◇
翔太、エミリー、俺、それに、ジョイとその上司ステファンが出発の用意を整えている。
場所は、ギルド本部のポータル部屋だ。
部屋にはメラディス首席、ダン、元気になったホープを抱いたドーラの姿があった。
「おい、次はもう少し長くいてくれよ」
「ああ、神樹様をたのんだぞ、ダン」
神樹メアリー様の近くには、監視小屋を設置し、『ポンポコ商会』、行政府がそれを見張ることになっている。
「シローさん、『枯れクズ』の無償提供ありがとうございます」
「メラディス首席、無償なのは研究用だけですから、お気にせず。
あと、地球世界からの研究者受入れの件、よろしくお願いしますよ」
「分かっております。
すでに研究施設はあるわけですから、造作もないことです」
「シロー、次はウチにも泊ってね」
俺は、ドーラの腕に抱かれ眠っている、赤ちゃんの頭を撫でる。
「ああ、ホープに会いにくるよ」
「待ってるわ」
エミリーと翔太が、ホープの可愛さに夢中になっている。
「二人とも、シローさんに迷惑かけないようにね」
メラディス首席が、地球世界まで行く予定の研究者二人に声を掛ける。
「分かっております、首席」
「全力を尽くします」
彼らの『枯れクズ』研究は、学園都市世界の命運を握っている。
二人の意気込みは、凄いものがある。
「じゃ、もう行くよ。
エミリー、翔太、皆さんとホープにご挨拶して」
二人は、みんなに挨拶したあと、ホープの側で名残惜しそうにしていた。
こうして、肩にブランを乗せた俺、エミリー、翔太、研究者二人は、アリストがあるパンゲア世界へのポータルを潜った。
◇
学園都市世界とパンゲア世界を繋ぐポータルは、サザール湖の岸近くに浮かぶ小島にある。
俺たちがポータルから出ると、そこには友人が待っていた。
「「「シロー、お帰り!」」」
ブレットのパーティ、『ハピィフェロー』の面々だ。
五人は、俺と言葉を交わしたあと、エミリーと翔太に向かい深々と礼をした。
「プリンス、それに聖女様。
お帰りなさい」
「あれ?
ブレット、なんで翔太のあだ名を知ってるの?」
「ああ、お前が留守の間に、国の方で、翔太様は『アリスト王国プリンス』、エミリー様は『聖女様』と、正式に決まったんんだ」
畑山さん、何やってんの!
しかし、翔太が、本物のプリンスになっちゃったよ。
聞きなれない名で呼ばれた、翔太とエミリーのぎこちない表情が初々しい。
ブレットたちに、二人の研究者を紹介すると、マスケドニア国の紋章がついた船に乗りこんだ。
「こんな豪華な船、初めて乗った」
体が大きなダンは、白く大きな帆船が豪華なので、少し居心地が悪そうだ。
彼によると、島までは、普通の船で来たそうだ。
エミリーと翔太は船室に入らず、甲板で湖の景色を眺めている。
「凄く綺麗ね」
「うん、ホント」
最初はあまり会話が無かった二人だが、多言語理解の指輪による助けもあり、最近はよく話をするようになった。
これからは、『聖樹の巫女』とその『守り手』として、行動を共にすることが多くなるだろうから、これは良い傾向だ。
岸に着くと、王宮からの馬車が待っていた。
俺、エミリー、翔太と研究者二人は別々の馬車に乗り、それぞれに護衛としてハピィフェローが分乗した。
王宮に着くと貴賓室に通された。ハピィフェローの面々は、控室で待機している。
マスケドニア国王とショーカが、王族に対する礼をする。
もちろん、エミリーと翔太に向けてだ。
「初めてお目にかかります、軍師ショーカです。
聖女様、アリスト国プリンスには、遥々わが国まで来ていただき光栄です。
本来、正式なご挨拶をするべきですが、お忍びの旅ということで、この部屋に席を用意させました」
「余がマスケドニアの王だ、
聖女様、プリンス、よう参られた。
ここを我が家と思い、くつろがれよ」
挨拶を受けた二人は、明らかに高貴な身分の二人から、そんな挨拶を受けて固まっている。
しょうがないから、俺が紹介する。
「エミリー、翔太、こちらの方は、この国の国王陛下と軍師様だよ。
ご挨拶して」
「は、初めまして」
「こ、こんにちは」
二人は、とっさの事に、しどろもどろになっている。
そんな二人も、テーブルに着くと、やっと人心地ついたようだ。
それというのも、加藤とヒロ姉が入ってきたからだ。
「ボー、旅はどうだった?」
「ああ、順調だったが、大切な仕事ができたよ。
後で、陛下とお前、ショーカさんに話があるから」
「おい、お前が真面目な顔をするってどういうことだ。
ちょっと怖いぞ」
実際、怖い話をするんだけどね。
ヒロ姉は、さっそく翔太の隣に座り、旅の様子を根掘り葉掘り聞いている。
エミリーは、そんな二人の様子を見てニコニコしている。
その後、みなが食事を終えると、ショーカに頼み、人払いしてもらう。
エミリーと翔太は、別室でハピィフェロー、ヒロ姉と一緒だ。
「で、シロー、話とは何なのだ」
俺の様子から、ただならぬものを感じたのだろう。
陛下も、いつものような気さくな声ではない。
俺は、聖樹様から聞いた話を二人にした。
「ふむ。
それでお主は、その危機を、どのようなものだと考えている」
「あくまで、俺の予想ですが、ポータルズ世界群の消滅だと思います」
「な、なにっ!」
「そ、そんな馬鹿な!」
「おい、ボー、マジか!」
これを聞いて、驚かない方がおかしいよね。
「ということは、聖女様のお役目は、それを防ぐことですね?」
さすが、軍師ショーカ、打てば響くというやつだ。
「ええ、彼女は、すでに学園都市世界で、その力の片鱗を見せました」
俺は、神樹メアリー様とエミリーのやり取りを話した。
「なるほどのお。
神樹様の存在が、カギなのだな?」
「はい、陛下。
神樹様の力を取りもどすこと、その数を増やすことで、危機は遠ざかると考えています」
「分かった。
我が国も、総力で事に当たらせてもらおう。
何か他に、こちらで、できることはないか?」
俺は、手始めに、『枯れクズ』の研究機関を作るようお願いした。
この国には、優れた錬金術師がいる。
錬金術からのアプローチで『枯れクズ』を研究するということだ。
「シロー、そのような貴重なもの、場合によっては、アリストの脅威になるかもしれぬものを、我々に渡していいのですか?」
さすがはショーカ、そこに気づいたようだ。
「ええ、貸しだす『枯れクズ』には、他に転用したりできない仕掛けを組みこんであります。
それに、研究用以外は、有償になりますから」
「さすがに、抜け目ないですね」
ショーカが、感心したように言う。
「陛下、研究所については、秘密厳守のため、一か所に絞ってください。
建物の方は、よろしければ、俺が造っておきます」
「よかろう。
場所は、明日知らせる。
今日はゆっくりするがよい」
「ありがとうございます」
こうして、俺たちは、その夜、マスケドニア王宮に泊まることになった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
プリンス翔太君まで、パーティ・ポンポコリンに入ることになるとは。
地球の「騎士」たちが騒ぎそうです。
そうならないうちに、明日へつづく。




