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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第9シーズン 異世界訪問編
345/927

第343話 異世界訪問編 第7話 天竜国再び

 史郎がいよいよ家族と再会します。

真竜廟ダンジョンには、お笑い役のあの人も、同行するようです。


 舞子、彼女の両親、エミリー、翔太と俺は、ケーナイ郊外にある舞子の屋敷に到着した。コルネと御者役のアンデも一緒だ。


 ピエロッティが、いそいそと舞子の荷物を持つ。

 メイドたちが、舞子の両親や、エミリー、翔太の荷物を持った。


 来客室に入ってソファーにくつろぐ。


 舞子が家族やエミリー、翔太に宿泊する部屋を案内しているから、ここにはアンデとコルネしかいない。


「コルネ、さっき言ってた話だが」


「はい、何でしょう」


 素直なコルネは、かえって話しづらいな。


「舞子が連れてた女の子がいただろう」


「はい、綺麗な青い目をした人族の子ですね」


「そう。

 話というのは彼女が覚醒した職業についてなんだ」


「どんな職業についたのですか?」


 俺は、アンデとコルネに耳を寄せるように言った。点魔法のシールドで、周囲も覆う。


「それがね、『聖樹の巫女』っていうんだけど、何のことか分かるかい?」


 アンデは驚いただけだが、コルネは幽霊を見たような顔になった。

 目を大きく見開き、口をパクパクさせている。

 まっ青になり、ブルブル震えだした。

 そんな彼女を、アンデが慌ててソファーに横たえる。

 コルネは、意識を失った。


 どうやら、『聖樹の巫女』というのは、とんでもない職業らしい。

 そして、それがどうとんでもないのか、コルネは知っているという事か。


 アンデに頼み、コルネをお客さん用の寝室に運んでもらった。

 もちろん、部屋には厳重にシールドを張ってある。

 ついでに、エミリーや、舞子の両親の客室も同様にした。


 舞子がみんなを連れ、二階から降りてくる。


「史郎君、食事するくらいの時間はある?」


「そうだな。

 俺は、とりあえず、家族を迎えに行くよ。

 舞子、コルネが体調を崩してるから、治療した後、休ませてやって欲しい。

 アンデから事情を聴いおいてね。

 聞いたことは、絶対秘密にしておくんだよ」


「うん、分かった」


「後、俺が帰るまで、エミリーの事を頼むよ」


「史郎君、気をつけてね」


 舞子が俺に抱きつく。バイク旅行から、彼女はそういう事をするようになった。

 ハグを返して離れる。


「じゃ、二三日したら戻る。

 翔太は連れていくからね」


「行ってらっしゃい」


 俺は、翔太に歩みよる。彼は旅の疲れからか、あくびをしている。

 しかし、ここは心を鬼にして、彼を連れていく。


「翔太、俺の家族が他の世界にいるから、寝るのはそこに着いてからになるよ」


「えっ? 

 魔術の先生は、ここにいるんでしょ?」


「ああ、先生がいるのはここだけど、その前にやることがあるんだよ」


「分かりました」


「見たことないようなものが、たくさん見られるよ」


「うん! 

 行ってみる」


「じゃ、行くよ」


 俺は、翔太を連れ、セルフポータルを渡った。


 ◇


 史郎と翔太、そしてあと一人は、天竜国の真竜廟第三層に開いたポータルから出てきた。


「しかし、ヒロ姉、その恰好は……」


「あんたが、寝てる所を連れてきたんでしょうが!」


 ヒロ姉は、パジャマ姿で、目をこすっている。


「後で行くところがあるって、ちゃんと言ったよ」


「明日とか、明後日とかだと思ったのよ」


「翔太、どう思う?」


「お姉ちゃん、なんでパジャマで来ちゃたの?」


「プ、プリンス~、お許しをー」


 ヒロ姉が、ひざまずいて首を垂れている。

 しょうがないから、点収納から俺用の防寒ローブを出す。


「とりあえず、これ羽織っといてください」


 ヒロ姉は、スッピンの顔を翔太君に見られるのが恥ずかしいのか、俺の後ろに隠れた。


「じゃ、行きますよ」


 三人は、森の中を歩きはじめた。


 ◇


「ギャー! 

 出たー!」


 ヒロ姉が絶叫するのは何度目だろうか。

 ジャイアントスネークが出るたび、この反応だもんね。


 点ちゃんに頼み、ブランには、かなり後ろを歩くよう言ってもらった。

 彼女がいると、蛇は怖がって出てこないからね。


 大蛇は、俺が張ったシールドに、大きな口を何度もぶつけている。

 この旅は、ヒロ姉の不注意な行動を反省させる意味もあるから、ここは我慢してもらおう。

 翔太は、ヒロ姉が怖がる度にクスクス笑っている。

 彼は俺の魔法をどれだけ信頼してるんだろう。

 ちょっと、怖いね。


 森の中心にある泉の所まで来たので、そこから竜王様がいる部屋の前まで瞬間移動する。


「あれっ!? 

 やっと森を抜けたの? 

 もう、死ぬほど怖かったー!」


 それが笑いのツボにはまってみたいで、翔太が声を上げて笑いだした。


「プ、プリンスに笑われてる……イヤーッ!」


 しゃがみこんだヒロ姉が恥ずかしさに顔を隠す。

 少しすると、彼女はゾンビのようにむくっと立ちあがった。


「史郎君」


 なんか、声が怖い。


「今、私たち、泉からここまで一気に移動したわよね……」


「ええ、しましたが、それが何か?」


「ということは……森を通らなくてもよかった?」


 あちゃー、そこに気づいちゃいましたか。


「どうなの!? 

 どうなのよっ!?」


 ヒロ姉が、ずんずん俺の方に迫ってくる。

 その時、俺が背にした黄金色の大きな扉が音もなく開いた。

 中を覗きこんだとたん、ヒロ姉が気を失い、すとんと地面に落ちた。


『騒がしいので開けてみたが、シローではないか』


 振りむくと、俺を見下ろしている巨大なボーンドラゴン、竜王様がいた。


 ◇


 俺は、やっと竜王様の部屋に戻ってきた。

 念話を家族に送ると、すぐに皆が駆けてくる足音がする。


「「パーパ!」」


 ナルとメルが俺に飛びつく。


「ただいま!

 いい子にしてたかい?」


 二人は顔を俺のお腹辺りに擦りつけていて答えない。

 二人の頭を撫でていると、ミミ、ポル、リーヴァスさんが現れる。


「リーダー、お帰りー。

 ずい分、長かったね」


 ミミが、笑っている。

 まあ、三か月近く留守にしたからね。


「シローさん、子竜がずい分大きくなりましたよ」


 ポルが、ニコニコして握手を求めてくる。


「聖樹様のお仕事は、無事終わりましたかな?」


 リーヴァスさんが、微笑んでいる。


「ええ、リーヴァスさん、みんなの事、ありがとうございました。 

 聖樹様の導いてくださった事は、片づけてきました」


「そのお二方は?」


「勇者のお姉さんと、女王陛下の弟さんです」


「なんと! 

 では、故郷の世界に帰ったのですな?」


「はい、おかげさまで。

 詳しいことは、また後程」


「三人が待っていますぞ。

 どうぞこちらへ」


 リーヴァスさんが、俺をゆりかごの部屋だった扉の前まで連れていく。

 彼がノックをすると、扉が開いた。


 中から現れたのは、輝くばかりに美しい三人の女性だった。

 いや、「輝くばかり」ではなく、本当に輝いている。


 コルナは金色、コリーダは黒色、ルルが薄紫の薄布を羽織っている。

 頭にも、同色の薄いベールをかぶっていた。

 特別な素材で作られたであろう、その衣装がキラキラ輝いている。


 俺は感動で声が出ない。

 三人がお互いに目で合図すると、俺の周りに集まった。


 「「「シロー、お帰り」」」


 「……」


 『(・ω・)ノ ご主人様ー、「ただいま」って言わないのー』


 いや、点ちゃん、俺もう、胸がいっぱいいっぱい……。


 俺は、一人ひとりの手をぎゅっと握った。


 ここに帰ってきた。


「ただいま」


 俺と三人は、しばらく黙って立ちつくしていた。


 ◇


「うわっ! 

 何、この綺麗どころ!」


 あー、ヒロ姉のせいで、再会の余韻がぶち壊しだよ。

 もう十匹くらい、蛇に遭わせてもよかったかもね。


「シロー、この方は?」


 三人が、きっとヒロ姉の方を見る。


「ああ、こちら加藤のお姉さん。

 ヒロ姉って呼んであげて」


 三人の視線が緩む。


「ああ、カトーさんのお姉さんでしたか。

 初めまして、コルナです」

「コリーダと言います。

 よろしく」

「初めまして、ルルです。

 よろしくお願いします」


「ところで、お兄ちゃん。

 こちらの可愛い男の子は?」


 コルナのシリアスモードは一瞬で終わったようだ。

 すでにお兄ちゃん呼びになっている。


「彼は、翔太。

 アリスト女王陛下の弟君だよ」


 三人に頭を撫でられ、翔太が照れている。


「シロー、故郷の世界に帰れたんですね」


「ああ、ルル。

 君が予知したとおり、向こうでは大変な事が待ってたよ」


「あなたが無事帰ってきて、本当に嬉しいわ」


「君も元気だったかい、コリーダ」


「ええ、ありがとう。

 最近は、よく子竜たちに歌を聞かせてるの」


「いいね! 

 俺も早く君の歌が聞きたいよ」


 ナルとメルが、俺から離れ、ルルに抱きつく。


「ルル、留守中、特に変わりは無かったかい?」


「ええ、子竜たちの世話が忙しく、あっという間でした」


「子竜は?」


 ルルが部屋の片隅を指さす。丸いボールのようなものが九つある。

 大、中、小、それぞれのサイズが三つずつだね。

 生まれた時期で大きさが違うんだろう。


 俺がいない間に六体が生まれたことになる。


「大変だったろう。

 忙しいときに居なくてすまない」


「大変だけど、とても楽しかったですよ。

 おじいさま、ミミちゃん、ポル君も手伝ってくれましたから」


 竜王様の念話が入る。


『シロー、母親役の彼女たち三人と、お前の友人には、本当に世話になったな』


『みんな、お手伝いできて嬉しかったみたいですよ。

 それより、大変な時に留守にして申しわけありませんでした』


『なんの、聖樹様のお導きはたっときもの。

 またそのようなことがあれば、力をお貸しせよ』


『はい、そうします』


『疲れているようじゃから、風呂に入りすぐ休め』


『お言葉に甘えさせていただきます』


 俺は、久々に家族と会えたことで、心が満たされていた。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

史郎は、ようやく家族に会えました。


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