第341話 異世界訪問編 第5話 勇者の帰還
史郎は、加藤をマスケドニアに送るようです。
このお話と次のお話は、テンポよく読んでいただきたいので、連続投稿です。
水盤の儀が終わり、舞子、加藤、加藤夫妻、渡辺夫妻、翔太君、ヒロ姉、エミリーそれに俺は、迎賓館二階にある、続き部屋に来ていた。
ここは、かつて『初めの四人』が異世界に来た時、最初に宿泊した場所でもあるし、俺とルルが初めて出会った場所でもある。
昨夜、異世界から来た家族とエミリーは、ここに泊まった。
「ボー、エミリーちゃんは、なんで覚醒もしないで、『聖樹の巫女』になったんだ?」
「いや、加藤。
俺たちは、彼女が覚醒するところを見てる」
「えっ?
史郎君、いつ?」
「ほら、舞子、君がエミリーの目を治療したときだよ」
「えっ?
私、気づかなかったよ」
「あの時、エミリーの体全体が光ってたんだ。
俺は、てっきり舞子が、彼女の全身に治癒魔術を掛けたと思ったんだが……」
「ああ、あん時か。
確かにエミリーちゃん、光ってたな」
「舞子、エミリーは、どこか悪いところがあるの?」
「お母さん、それは心配しなくていいよ。
今、私たちが話しているのは、彼女が覚醒した職業の事だから?」
「職業っていっても、エミリーはまだ十二だろう」
「ああ、おじさん、地球で言う職業とはちょっと違うんですよ」
俺は、加藤夫妻、渡辺夫妻に、異世界における職業の話をした。
「ウチの雄一が勇者だって、あれかい?」
「そうです。
博子お姉さんは、畑山さんと同じ、『聖騎士』っていう職になりました」
「史郎君、我々は、どうしてその覚醒とかいうのをしなかったのかね?」
渡辺のおじさんが、尋ねる。
「それが、年齢がある程度以上になると、覚醒しなくなることが知られているんです。
それが分かっていて、皆さんが水盤の儀を受けたのは、異世界人だともしかして、と思われたからでしょう」
「そうか。
ウチの舞子も、あれで聖女になったんだね?」
「はい、そうです。
そのときは、もう周囲が大騒ぎでしたよ」
「ウチの雄一もかい?」
「ええ、おばさん。
彼は勇者になりましたから、それは国を挙げてのお祭りがありました」
「なんだい、そりゃ!
勇者って、それほどのものかい」
「ええ、このパンゲア世界で、彼はヒーローですよ」
「どうもねえ。
我が子だからかもしれないけど、ちょっと信じられないねえ」
「とにかく、一度マスケドニアの方に送りますよ。
もう女王陛下と向こうの国王には、話してるんです」
「分かったよ。
ここからどうやって行くんだい?」
「ちょっと目をつぶっててください」
史郎が指を鳴らすと、加藤、加藤の両親、ヒロ姉がマスケドニア王宮の来賓室に瞬間移動した。
◇
あらかじめ念話してあったので、俺たちがマスケドニアに瞬間移動すると、部屋にはマスケドニア国王、軍師ショーカ、ミツさんが待っていた。あまり人前に出ることがない、ミツさんのご両親もいた。
「おお!
勇者カトー、久しぶりじゃな?」
「陛下、ただいま」
「一体どうしたことかと、心配しておったのじゃ」
これには、俺が答える。
「聖樹様のお導きで、私たちの世界へ戻っておりました。
勇者を長くお借りして申しわけありません」
「ははは、シロー、他人行儀なことを言うな。
それに、なんと聖樹様のお導きとはな。
大いに納得したぞ。
さすがは、勇者じゃな」
「いや、俺は、何もしてないんだけど」
「彼は、向こうでも大活躍でしたよ」
「そうか、そうか。
この方々が、勇者殿のご家族じゃな?」
「ええ。
おい、加藤、みんなを紹介しろよ」
「ああ、そうだな。
えー、こちらが父、母、そして、姉です」
「おまえ、ひどい紹介だな」
「他にどうしろってんだ」
「とにかく、俺は今日中に天竜国へ向かうから、もう行くぞ」
「おい、ボー、つれないこと言うなよ!
もう少しだけいてくれ」
俺は、加藤の背中を叩くと、立ちあがった。
「陛下、ショーカさん、俺はこれで失礼します」
「うむ、ご苦労であったな」
「これ、俺たちから陛下へのお土産です。
後で、加藤から説明を受けてください。
あと、加藤の両親には、こちらに滞在する間だけ、多言語理解の指輪をお貸しくださると助かります」
確か、伝説級の指輪があと二つ、残っていたはずだ。
「おお、そうじゃな。
そうしよう。
お主も、また、近いうちに来てくれよ」
「ええ、必ず」
俺は、いつになく神妙な面持ちで立ちつくしているヒロ姉に、多言理解の指輪を渡す。
「ヒロ姉、それ着けると、陛下と直接話せるよ。
今のうちにそうしとかないと、ヒロ姉だけは、後で俺と行くところがあるからね」
「えっ?
私?」
俺は、ヒロ姉が驚いた顔をしたのを見届けると、アリスト城の迎賓館に跳んだ。
いつもお読みいただきありがとうございます。
加藤は、マスケドニア王に家族を紹介しました。マスケドニアは、彼にとって第二の故郷になりそうですね。
では、明日へつづく。




