第305話 地球訪問編 第19話 テレビ放映
例のへっぽこインタビュワーが、テレビで史郎たちの事に触れるようです。
これは、絶対に何か起きますよね。
沢村という、とんでもないへぼインタビュワーとの会見から三日後、俺は加藤家の夕食に招かれていた。
今日は、そのインタビュワーがテレビに出る日でもある。
ゴールデンタイムに放映されるニュース番組の中で、彼女は『街角の謎』というコーナーを受けもっているそうだ。
しかし、いくらゴールデンタイムとはいえ、一つのコーナーのためにポンと二千万出すってどうよ。
食事を終えた俺たち、つまり、俺、加藤、加藤夫妻、ヒロ姉は、テレビがある部屋に移動した。
加藤家では、食事をする部屋とテレビを見る部屋を分けてある。
カゴに蜜柑が盛られた炬燵に座り、番組開始を待つ。
ニュース番組が始まり、『今日の出来事』のコーナーが終わると、コマーシャルをはさんで、すぐに『街角の謎』が始まった。
心なしか三日前よりやつれた感じの沢村さんが画面に現れた。
「なんか、感じ良くない人ねえ」
ヒロ姉が印象に触れる。彼女は妙に直感的なところがあるからね。
テレビでは、コーナー最初の音楽が流れた後、加藤のジャンプ映像の一部が流れた。
『みなさん、今週も『街角の謎』にようこそ。
レポーターの沢村です。
今、巷で噂のジャンプ映像ですが、それが事実かどうか、この目で確かめに行ってきました』
画面に地図が出る。
『インタビューは、ここで行いました』
地図上に矢印が打たれた後、街の遠景、カフェ『ホワイトローズ』の外観と映像が移りかわっていく。
『さて、その結論からいくとー』
ここで、小太鼓を鳴らす効果音が入る。
『この情報は、全くのデマでした』
彼女はニヤリと笑い、次の言葉を続けようとした。
『この少年は……』
沢村さんは口をパクパクさせるだけで、言葉が出ていない。
彼女の後ろには、色とりどりの番組セットがおかれているのだが、それがぱっと白く変わった。
セットの前に、白いスクリーンが掛かったのだ。
普通こういうトラブルがあれば、「しばらくお待ちくださいおじさん」の絵が画面に現れ頭を下げるのだが、なぜか放送は続いていた。
スクリーンに『ホワイトローズ』の店内が映しだされる。
沢村さんや俺たちの顔は映っているが、翔太君や『騎士』たちは、顔の部分がぼやけている。
映像は、沢村さんが落としたグラスを加藤が手で受けとめる場面から始まっていた。
彼女のひどいインタビュー振りに、人の悪口を言わない加藤の両親も、首を左右に振っている。
ヒロ姉は弟に向かい、「あんた、テレビ写り悪いわね」と暢気なものだ。
グダグダなインタビューの最後に、翔太君とのやり取りが入った。
「お姉ちゃん、人の話はきちんと聞いた方がいいよ」
「なによっ!
あんたみたいなちっさなガキに、何が分かるっていうのよ!」
映像は、そこで終わってた。
沢村さんはブルブル震えながら、「ナシっ……今のナシっ!」とつぶやいている、
やっと声が出せるようになったようだ。
画面はようやく、「しばらくお待ちくださいおじさん」が頭を下げた絵となった。
「雄一、あんた、大変な目に遭ったねえ」
おばさんが、加藤の背中を撫でている。
加藤家の固定電話が鳴るが、おじさんが立ちあがり、電話線を引きぬいた。
「史郎君、ちょっといいかな?」
「な、なんでしょう?」
ヒロ姉が、異様に真剣な目で俺を見つめる。
「さっき、ユウと一緒に映ってたの、翔太君じゃない?」
ええっ!? どうしてそれを……。
確かに声は変えてないけど、顔にはぼかしが入ってるんだけど。
大体、なんで翔太君を知ってるの?
「ねえ、あれ翔太君よね」
呆然としている俺を放っておき、ヒロ姉の質問は弟に向かった。
「ああ、そうだよ」
おい、加藤! そこでばらしてどうする。
「あ、あんた、プリンスと知りあいなの!?」
ヒロ姉が加藤の襟首をつかみ激しく揺するので、彼の頭はがくんがくんとなっている。
「ま、まあ知ってるけど――」
「あんただけ、いい目を見るのは許さないわよ!」
その「いい目」って、具体的になんですかね?
「史郎君!」
「はひっ!」
思わず声が裏返っちゃったよ。
「あなたも、忘れずに翔太君を私に紹介するのよ!」
「は、はい……」
おじさんが部屋を出ていくとき、俺と加藤の肩をポンポンと叩いた。
分かってるねえ、おじさんは。
「さあさあ、あんたたち、さっさとお風呂に入んなさい」
おばさんが助け舟を出してくれる。
「「はーい!」」
この日、俺は加藤の実家に泊まった。
◇
この後、例の番組放映は、幾重にも騒ぎの輪を広げていく。
そのことは後ほど述べるとして、ここでは番組中に起きていたことについて少し触れておこうか。
点魔法の映像が流れている間、沢村さんが声を出せなかったのは、点ちゃんが小さな板で彼女の声帯を押さえていたからだ。
画面を隠されても困るから、体も一時的にシールドで固定しておいた。
なぜ、放送が中止にならなかったかだが、コントロールルームの人たちも全員同じ目に遭っていたからだ。
放送局には、万一に備えて予備のコントロールルームもあったようだが、点ちゃんがその解析力を使い、あっという間にそこを見つけてしまった。
そちらに待機していた人も、一時的に動きを封じられてたってわけ。
◇
では、ここからは、番組放映の翌日に起きたこと。
朝起きると、翔太君から念話が入った。
いつもより声が高いのは、興奮しているのだろう。
『ボーさん、ボクのサイトがすごいことになってる!』
『翔太君、何があったの?』
『アクセス数がもの凄い勢いで増えてるの』
彼のサイトは、すでにかなりの人数が見ていたはずだが……。
『いつもの十倍以上の人が見てると思う』
『(*'▽') ぱねー!』
これは、俺の念話ではなく、点ちゃん。
まあ、点ちゃんの声は翔太君には聞こえないんだけどね。
『また、何か変わったことがあったら教えてね』
次に念話してきたのは、後藤さん。
『おはようございます、リーダー』
俺は、柳井さんと後藤さんをポンポコ商会の一員として遇するつもりだから、呼び方はリーダーなんだ。
だって、『社長』や『会長』とか呼ばれるのって、耐えられないでしょ。
『この念話って便利ですね。
電話代も掛からないし』
おいおい、驚くところ、そこですかい。
『何かあったの?』
『沢村さんが働いているテレビ局から、正式な抗議が来ました』
『何に対する抗議?』
『それが、はっきり書かれてません』
それはそうだ。抗議するネタなんて無いからね。
『あの会社には俺の知人が勤めてるんですが、そいつの話では、こういうことだったらしいですよ』
後藤によると、沢村さんは、テレビ局のお偉いさんの姪だそうだ。
入社も、そのコネを使ったとのこと。
だから、番組中の一コーナーに過ぎないのに二千万円も出したのか。
沢村さんは、職員研修もすっぽかすか、いい加減にこなしてきたから、インタビューの技術が無いのは当たり前だそうだ。
今回の抗議も、沢村さんのおじさん以外は、みんな事情がわかっているから、放置してくれて構わないということだった。
それより、その会社のサイトとブログがひどい炎上に遭い、現在閉鎖中だという話だ。
トラブルメーカーは、芋づる式にトラブルを起こすな。
俺の事じゃないよ、沢村さんの話。
俺たちに関する初めてのテレビ放映は、じわじわとその反響の輪を広げていった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
予想通りというか、へっぽこインタビュワーさん、かわいそう。
ところで、史郎は自分の事がトラブルメーカーだという自覚はあったんだね。
『(*´ω`) そうみたいですね』
困ったご主人様だね、点ちゃん。
次話、勇者加藤の体力測定です。
明日へつづく。




