第302話 地球訪問編 第16話 加藤へのインタビュー
勇者加藤のインタビューで金もうけをたくらんだ史郎。
初めてのインタビューは、どうなるのでしょう。
柳井さんは、ネット上に新しくサイトを立ちあげた。
題は、『驚異のジャンプ力』
サイトを開くと、加藤がジャンプする動画が流れる。
英語、スペイン語対応のページも作った。
これには、騎士の双子姉妹が協力してくれた。
動画では異世界の事には、まだ触れていない。
翔太君のサイトからもリンクさせてある。
柳井さんが作ったサイトの表紙には、『報道関係者の皆様へ』という文字を入れてある。
そこをクリックすると、取材のためのオークションコーナーがあり、一定期間で最も高い金額を入札した会社からの取材を受ける事になっている。
また、加藤の体力測定という項目には、握力、幅跳び、垂直飛び、百メートル走、などの選択肢があり、これは一社一回だけ入札ができる仕組みにしてある。
入札には、会社の名前と入札に関する責任者の名前を書きこむようになっているから、一般の人が面白半分に参加しようとしても、柳井さんがチェックしてはじかれる。
最初のインタビューは十日後で、入札期限はその三日前だ。
柳井さんによるとサイトを開いて三日ほどは、ほとんど反応が無かったが、四日目くらいから急に入札件数が増え、その金額も、うなぎのぼりだそうだ。
そして、入札を締めきる日が来た。
◇
オークションで一番の高値をつけたのは、東京に本社がある放送局で、落札額二百万円というものだった。
俺たち四人と柳井さん、翔太君率いる騎士が集まり、インタビューに向けての打ちあわせをする。
俺が一番気にしているのは公権力からの介入だったが、警察に勤める黒騎士の話では、そういった動きは、まだ出ていないということだ。
インタビューの場所は、白騎士の店、『ホワイトローズ』にした。
伝説のハッカーである桃騎士とは、インタビューの後に公開する新しいページについて打ちあわせる。
忙しくしていると、あっという間にインタビュー当日が来た。
俺たち『初めの四人』と翔太君は店の一番奥にあるテーブル、騎士たちは隣のテーブルに座っている。
約束の時間より少し前に、店にスラリとした長身の男性が入ってきた。
恐らく三十代半ばだろうその男は、灰色のスーツにベージュのトレンチコートを羽織り、浅黒く引きしまった印象の顔つきだった。
加藤と翔太君の顔を確認すると、俺たちのテーブルに向かって歩いてきた。
立ちあがった柳井さんが、その前に立つ。
女性にしては長身の柳井さんより、男の方が頭一つ高かった。
男は会釈すると、柳井さんに名刺を差しだした。
「初めまして。
東京〇〇テレビの後藤です」
耳ざわりがいい柔らかな男の声に、柳井が答える。
「加藤君の広報を担当している柳井です。
今日は遠くからわざわざありがとう」
「失礼ですが柳井さん、〇〇テレビにいませんでした?」
「えっ?
ええ、最近まで、あそこでしたが……」
「放送関係者の集まりで何度か目にしたことがあります。
いい番組を作る人がいるなあと思ってたんですよ」
「ははは、もう番組は作りませんけどね」
柳井さんが屈託のない笑顔で答える。
彼女は、会社の事が完全に吹っきれたようだ。
「では、時間なので、インタビューに移らせていただきます」
後藤さんは、柳井さんが指示した席、テーブルをはさみ加藤と向きあう位置に座った。
インタビューの条件として、関係者の同席を伝えてあるから、俺たちは座ったままだ。
「では、よろしくお願いします」
後藤さんは、加藤と翔太君にも挨拶と自己紹介をした後、インタビューを始めた。
柳井さんがストップウォッチを押す。
インタビューは、三十分と決めてある。
後藤さんがボイスレコーダーを卓上に置き、インタビューを始めた。
「加藤さん、どうやってあのようなジャンプができたのですか?」
インタビューの時間が限られているからか、後藤がいきなり核心に切りこむ。
「俺、ある事情で、しばらくある場所に行ってましてね。
そこで、そういった能力に目覚めました」
「つまり、あの映像は、特殊映像やトリックではないと?」
「ああ、普通にジャンプしただけだよ」
「画像には、最近有名な、『ネトプリ』翔太君も映っていたようですが……」
柳井さんが、手で大きなバツを作る。
今回、翔太君に関する質問は受けつけていない。
「では、質問を変えます。
昨年の三月に突然姿を消したという事で、家族から警察に捜索願いが出されていますね」
「ああ、そうだね。
十月に両親が引っこめたけど」
「他に、坊野君、畑山さん、渡辺さんという方も失踪していますね?」
「ああ」
「彼らの捜索願いも同じ時期に取りさげられています。
ああ、坊野君は、捜索願いそのものが出されていないようですが……。
これは、何があったのですか?」
この後藤という男、俺たちの事をきちんと調べてからこの場に臨んでるな。
「俺たちが、ある場所で元気にしているという事が分かったからだな」
「ご両親は、あなたの無事をどうやって知ったのですか?」
「俺たちが行っていた場所から仲間の一人が一時帰還して、四人の無事を伝えたんだ」
「仲間の一人とは誰です?」
「ボー、ああ、坊野だよ」
「その方も、今はこちらに?」
柳井が再びNGを出す。
「……では、あなたの能力を教えてください。
ジャンプの他に、どんなことができますか?」
「試したことはないが、色々できるんじゃないか。
それを調べたければ、『体力測定』の入札に参加してくれ」
これは、念話を通じて俺が指示したセリフだ。
「今、この場で能力を見せてもらうことは?」
「だから、それも二週間後に予定している『体力測定』で見せるから、知りたいなら入札してくれ」
「私は、最初あなたの能力について半信半疑でした。
しかし、柳井さんが会社を辞めてまでサポートしているとなると、俄然興味がわいてきましたよ」
「そう?
人が信じようが信じまいが、俺は俺だから」
加藤らしいセリフだな。
後藤さんが言葉を続ける。
「この取材まで漕ぎつけるのが、かなり大変でしたよ。
局の上層部にはジャンプ映像を疑う者が多くてね。
今回の入札も、半分は私自身のお金です。
まあ、インタビューが上手くいかなければ、クビが飛ぶでしょう」
平然としているところを見ると、後藤はかなり肝が据わった男らしい。
俺たちの広報部にぜひ欲しい人材だ。
柳井さんに念話しておく。
『柳井さん、後で彼にカードを渡してもらえますか?』
『史郎君、カードって?』
『俺が用意します』
『分かったわ』
その後、後藤さんは、加藤に学校に通っていた時のことや、もう一度学校に通うつもりはあるかを尋ねていた。
「後藤さん、時間です」
柳井が声を掛けると、後藤はピタリと話をやめた。
「柳井さん、今日はインタビュー受けてもらってありがとう。
自腹の百万円とクビをかけた甲斐があったよ」
柳井さんが俺の方を向いたので、俺は自分の胸を指さす。
柳井さんが、自分の胸ポケットに手をやると、中からカードを取りだした。
たった今、俺が点魔法で作り、瞬間移動で彼女のポケットに入れたものだ。
白銀のカードには、黒字で次のように書いてある。
Ms Yanai
Ponpoko Corp.
Portals
電話番号は、書かれていない。
裏にも一言書いてある。
Private Use Only
後藤はそれを受けとると、大きく目を見開いた。
問いかけるような視線を柳井に送る。
「私なら、そのカードをよく調べますね」
柳井さんは、そう言って後藤の視線に答えた。
これは、俺が指示したセリフだ。
こうして、俺たちの初インタビューは終わった。
異世界の事が公表され世界が騒然となるまで、そう遠くない日の出来事だった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
最初のインタビューは、上手くいったようです。
もしかすると、広報担当二人目が手に入るかも?
明日へつづく。




