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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第1シーズン 冒険者世界アリスト編
27/927

第26話 尾行

  いよいよ運命の大きな流れが動きはじめます。

 点ちゃんの、超便利な新能力も登場します。

 しかし、あいかわらず、のんびりしてるな~史郎は。

 俺の周囲は、再び落ちつきを取りもどしていた。

 冒険者としての仕事も絶好調で、多いときは一日に三件の依頼をこなしている。この日も討伐達成の報告をするためにギルドへ来ていた。

 カウンター前に並んでいると、聞くとはなしに冒険者の声が耳に入ってきた。


「そんなに死んだのか?」

「ああ、二十人以上死んだらしいぜ」

「ひでえ話だな」

「あそこは宮廷魔術師との繋がりが噂されてたからな」

「しかし、全員殺すかね」

「貴族にとって、平民は虫けらほどの命も持たないのさ」

「ひでえ話だなあ」


 ちょっと気になったので話に割りこむ。


「すみません。

 それってどんな事件ですか?」


「ああ、ルーキーか。

 それがひでえ話でよ。

 レッドドラゴンって裏稼業のやつらが何かしくじったらしいんだが、口封じのために全員殺されたんだぜ」


 会頭やライスが死んだのか。同情はできないが、なんかすっきりしないな。


「メイドや料理人、他から派遣されてた警備員までもが殺されたらしい」


 あの警備員二人も殺されたのか。よっぽど知られたくない関係を持っていた誰かがいるってことか。手際の良さからしても魔術がらみだろう。


「そりゃひどいですね」


 ちょうど、その冒険者の受付順が来たので、話はそこで終わった。

 そのことについて、すぐにでもルルと相談したかったが、さすがにギルド内でできる話ではないので、依頼達成の報告を終えるまで我慢する。


 ◇


 ギルドからの家に帰り、リビングで事件の話をする。


「そういうことを聞いたんだが、ルルはどう思う?」


「……魔術師が関係していると見ていいでしょう」


 向かいのソファーに座ったルルが、少し考えた後、そう答えた。


「こちらはどう動くべきかな?」


「とりあえずは静観がいいとおもいます。

 ただ、相手が何かしてきたら、すぐに動けるようにしておきましょう」


「ナルとメルは、しばらく家から出さないほうがいいな」


「そうですね。

 キツネさんたちにも、周囲に気をつけるように伝えておきましょう」


「今回の犯人は、命を奪うのをためらわないヤツみたいだからね」


「旦那様がいれば、きっと大丈夫です」


 信頼が重いですよ、ルルさん。


 ◇


 数日後、キツネグループの何人かが、治安維持を受けもつ騎士からとり調べを受けた。


 事件当日の行動を追及されたらしい。レッドドラゴンとの抗争、実際には一方的にキツネたちがやられただけだったのだが、それについても聞かれたそうだ。

 まあ、ここまでは予想通りだね。


 何を話して何を話さないか。すでにロールプレイで練習しておいたからね。もちろん取り調べ官の役は、俺がやったよ。みんな震えてたから、本物よりよほど怖かったらしい。


 彼らのほとんどには事件当日のアリバイがあるから、すぐに釈放となった。アリバイが無い、ボス、キツネ、ゴリさんは三日ほど帰ってこなかったけどね。


 ギルドへは、俺とルルについて、騎士からの問いあわせがあったらしい。まあ、いつも家にキツネたちが来てるから、これはしょうがない。


 ◇


 その日、ギルドから帰る途中、尾行されていることに気づいた。


 たまたま、この日は俺一人だったので、少し遠まわりをして屋台を冷かしたり、喫茶店に立ちよったりすることで、尾行者をチェックした。

 やはり、二人組に尾行されていた。


 フードつきのローブはまだ許せるが、街中でフードをかぶってるのは怪しすぎるだろ。しかも、灰色のフードつきローブが二人だよ。

 せめて色くらいは変えようよ。


 明らかに尾行の素人だから、司直とは関係ないだろう。となると、レッドドラゴン関係者か、それとも犯行グループか。


 家に帰ると、ルルとボスも尾行されたということだった。

 ま、誰でも気づきますよね。

 尾行者は、やはり灰色のフード付きローブを着た二人組だった。


 わざと尾行に気づかせて、こちらの動きを誘おうとしている可能性もあるが、不器用さから見ても、まずそれはないだろう。


 ちょっと思いついたことがあったので試してみることにする。

 庭に出て、点ちゃんを呼ぶ。


 おーい、点ちゃん。


『(^▽^)/ は~い、点ちゃんですよー』


 相変わらずだな。

 点ちゃん、石の表面にくっつけたよね。


『(^▽^) 得意ですよー』


 ああいうの得意っていうのかね。

 布とかにもくっつける?


『(^▽^) 何にでもくっつきますよー』


 ちょっと頼みたいことがあるんだけどいいかな。


『\( 'ω')/ わーい、何ですか?』


 俺は、点ちゃんといろいろ打ちあせた。


 ◇


 次の日、ギルドへは向かわず、カラス亭に向かった。


「おう、久しぶりじゃねえか」


 店の前をホウキで掃いていたご主人が、声を掛けてくる。


「ちょっと早いですが、開いてますか?」


「うちは宿屋だからな。

 基本、年中無休だよ」


「ちょっとテーブルを貸してほしくて」


「いいぜ。

 好きなだけ使いな」


「ありがとうございます」


「いいっていいって」


 カラス亭の旦那さんは、出会った頃は無口だと思っていたが、付きあってみると意外に気さくな人だった。


「こんにちは」


「あれ、あんたかい。

 ここんところ、ご無沙汰だったね。

 元気にしてたかい?」


「おかみさんは、相変わらずお綺麗ですね」


「馬鹿なこと言ってるね、この子は!

 そんなこと言っても食事代は負けないよ」


 そのわりに嬉しそうだ。


 入口がよく見えるテーブルを貸してもらい、腰を落ちつける。

 お、来たな、って、二人が時間差で入ってきても、同じローブ着てたら意味ないだろう。こいつら、ほんと尾行の才能ないね。


 軽食とお茶を注文し、時間をかけて食事を楽しむ。

 ここ、やっぱり美味しいな~。

 お茶にも一工夫してあって、くつろげるわ~。


「もう注文しないんなら、出てっておくれ!」


 うわ、あいつらお茶一杯でずっと粘ってたから叱られてやんの。しかも、わざわざ別々のテーブルに座ってるし。

 この食堂は宿泊客も使うから、どう見ても迷惑だよね。

 二人とも、慌てておかわりを注文しようとしてるな。


「おかみさん」


「あいよ!」


「そこの二人に、ミュール出したげて」


 ミュールは、オレンジに似た果物を絞ったジュースだ。


「なんだい、あんたの知りあいだったのかい。

 一緒に座ればいいのに」


「ま、いろいろ事情があってね」


 主に向こうの二人にだけど。


「あっちのお友達からのおごりだよ」


 おかみさんがミュールを持っていくと、尾行していた二人は、慌てて宿から出ていった。

 ひどいね、こりゃ。


「飲まずに行っちまったよ。

 変な人たちだね」


「もったいないから、俺がもらうよ」


「ま、いいけどね。

 どうせあんたの金だからさ」


「ありがとう」


 せっかく食後のお茶で落ちついてたところに、ミュール二杯はきつかった。お腹が、ちゃっぷんちゃぷんになっちゃたよ。


「ごちそうさま」


「もう少しちょくちょく顔見せな」


「次は、ルルと来ますね」


「ああ、そうしとくれ」


 お礼を言ってカラス亭を後にする。


 ◇

 

 人気がない路地裏で点ちゃんに話しかける。


 点ちゃん、いますかー。


『(^▽^)/ は~い』


 尾行者の二人には、カラス亭で、分裂した点ちゃんを付けてある。


 あの二人、どうなってる?


『(Pω・) 二人とも同じ建物に入るところですよ』


 ふむふむ、そこまで案内してもらってもいいかな。


『(^▽^)/ はーい、お任せでーす』


 激しくびょんチカしてるね。

 今度から、もっと頼み事してみるか。


 ◇


『(^▽^) あそこですよー!』


 点ちゃんが案内してくれたのは、門構えから見て、明らかに貴族の屋敷だった。お城からかなり近いところにある。


 あ、そうそう。点ちゃん、二人が何してるか分かる?


『♪)))(6・ω・) 誰かと話してるみたいです』


 どんなこと話してるか、聞こえる?


『♪)))(6・ω・) 聞こえてますよ』


 聞こえてるの!? それ教えてもらえる?


『(・ω・) ご主人様が聞けるようにもできますよ』


 何それ、超便利! じゃ、そうしてくれる?


『(^▽^)/ はーい!』


 俺は、屋敷近くの路地裏に入り、中の様子をうかがうことにした。


 ◇


 俺を尾行していた二人組は、恐らく上司だろう人物の部屋にいた。


「報告しろ」


「ええ、特にこれといった動きはありません……」


 さすがに、尾行がばれたとは言えないんだね。しかし、これ、感度いいな。まるでその場にいるように聞こえるぞ。


「その冒険者の素性は、分かったのか?」


「素性がはっきりしないので、ギルドの線でも調べたのですが、特に怪しいところはありませんでした」


「馬鹿者! 

 素性がはっきりせぬだけで、十分に怪しいわ!」


「ただ、ゴブリンキング討伐、ドラゴン討伐の両方に参加していたことが分かりました」


「なに!? 

 凄腕の冒険者か?」


「いえ、まだ登録したばかりのルーキーだそうです」


「ルーキーだとな?

 ふーむ、討伐時の行動は、分かっているのか?」


「はい。

 ドラゴン討伐では荷物持ちでした。

 ゴブリンキングの方は、討伐をしたパーティにいたようです」


「ルーキーがか?

 討伐の様子をもっと詳しく調べあげろ!」


「はっ!」


 あ、そうだ。点ちゃん。


『(^▽^)/ はーい』


 こいつらが話している相手にも、点を付けられる?


『(^▽^) 簡単ですよー』


 じゃ、お願い。


『(^▽^)つ~* ちょちょいのちょい』


 いいのかね、そんな感じで。かなりシリアスな場面ですよ、ここは。


『(^▽^) できましたー』


 じゃ、こっちの点の音は、ずっと聞こえるようにしといてくれる?


『(^▽^)/ はーい』


 ローブ着てる二人の音は、聞きたいときだけ聞けるようにしておいてね。


『(・ω・) ういういー』


 あ、服だと脱ぐことがあるから体にくっついてね。

 しかし、今回の事で分かったけど、点ちゃんてホント凄いね。


『ぐ(*^ω^*) え~、そんな事ないですよ~』


 いや、気持ちバレバレだから。

 点ちゃんがいてくれて、ホント嬉しいよ。頼りにしてるよ、点ちゃん。


 ピカッ!


 暗い路地裏が光に満たされる。


 お! 点ちゃんか? 

 いや、自分が光るやつか! うえっ! こりゃ、今までで一番まぶしいな。

 

 光が消えたから、スキル確認のためパレットを出してと。

 みょんみょんぴーん。ちょんちょん、と。


 点魔法レベル9 拡張時間指定 


 あれ? 今回のスキルアップは、これだけか。

 点ちゃん、拡張時間指定って何?


『(・ω・)ノ 今までは、私を大きくしても時間がたてば点に戻ってましたよね』


 ああ、戻ってたね。


『(・ω・) その点に戻るまでの時間を、決めることができます』


 ん!? それって、超便利じゃないの? 

 もう、板を出しても、消えないってことでしょ?


『(^▽^) はい、そうですよー!』


 やったね。じゃ、その検証はまたにして。レベルアップもしたし、帰ろうか、点ちゃん


『(^▽^)/ はーい、今日はご主人様といっぱい遊べて、楽しかったな~』


 点ちゃんにとっては、遊んでただけなのね。

 こっちも楽しかったよ。ありがと、点ちゃん。


『ぐ(*^ω^*) えへへへ~』


 俺が「点魔法 拡張時間指定」のとんでもない力に気づくのは、まだまだ先のことだった。


 ◇


 その後、コウモリ男を調べてみて、やはりレッドドラゴン構成員の殺害に関わっていたことが分かった。

 えっ? なんで顔も見ずに「コウモリ男」って名づけたかって? 


 ヤツが屋敷から出てくるときに顔を確認したからだよ。ついでに、尾行が下手なローブ二人の顔も確認しておいた。


 コウモリ男が、ゴブリンキングの死に方とレッドドラゴンの屋敷で起こったことを結びつけるようなら、こちらも行動を起こす必要があるけれど、どうやらそこまでは頭がまわらないらしい。

 こちらから見ると十分怪しいのにね。まあ、俺が当事者だからかもしれないけど。


 少し心配なのは、どうもコウモリ男が聖女と接触しようとしていることかな。くっつけている点から得られた情報だと、今のところは、難航しているようだけど、それでもコウモリのヤツ、なんとかしようと手を尽くしているようだ。

 あんなヤツが舞子に接触したら危険極まりないから、本当に二人が会うようなことになったら邪魔しないといけないかもね。


 この懸念がやがて現実のものとなるのを、俺はまだ知らなかった。



 いつもお読みいただきありがとうございます。

今回の話は、以降、「ポータルズ 冒険者世界アリスト編」最後まで続く、大事な伏線になっています。

果たして、蝙蝠男はどう動くのか。

そして、史郎とルル、舞子の運命は?

 次回に乞うご期待です。


ー ポータルズ・トリビア - 尾行者のローブ

 尾行者のローブが同じなのは、全てコウモリ男からの支給品だからです。

中には自分で用意しようとした者もいたようですが、「なぜ、受け取れないんだ!」と、コウモリ男から叱られたようです。

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