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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第6シーズン 竜人世界ドラゴニア編
242/927

第240話 竜人世界編 第44話 草原でボード遊び -点ちゃん4号登場ー

 点魔法が作りだす、新しい乗り物。

史郎は、すごく楽しそうです。


 竜闘が終わり三日がたった。

 今日までお店が休みということもあり、みんなで台地状の草原までボード遊びに来ている。


 皆といっても、リーヴァスさん、ミミ、ポルの三人は、ラズロー邸で剣の稽古だ。ネアさんも、お世話係としてそちらに参加している。

 ネアさんの娘イオは、こちらに来ている。リニアもナルやメルの話を聞き、ボードに興味を持ったようで、参加を希望した。


 先生役はコルナだ。


「初めての人は、シローにボードを作ってもらってください。

 崖に近づかないよう、気をつけて滑りましょう」


「「「はーい!」」」


 イオ、リニア、コリーダのために初心者用ボードを出す。これはバランスが取りやすく、スピードが出ないよう作ってある。加藤は、通常のボードだ。

 初心者が落ちないよう、崖の少し手前にポールも立てておいた。


「なんで、あんたがここにいるの」


 驚いたことに、白竜の若様ジェラードが来ていた。しかも、先日食事処で会った三人の護衛つきだ。

 何よりも、彼ら自身の足でここまで来たのが凄い。昼前のこの時間に間に合わせようと思ったら、都を暗いうちに出立したに違いない。


「いや、一昨日お宅にお邪魔したとき、今日の事を小耳にはさんでね。

 それと会いたい人もいたし……」


 ジェラードの目が、コルナにボードを習っているコリーダを追っている。全く、油断ならない男だ。

 大体、会合の翌日、彼がイオの家を訪れたのも、ポータル解放後の異世界との交易で大きな役割を担いそうなポンポコ商会と、正式に交渉するためだ。

 とにかく、この男、そつが無い。


 新しい四竜社の頭には彼が就任すると思っていたが、それをラズローに任せ、自分は補佐役に回っている。

 どう見ても、ただ者ではない。


「ああ、そうそう。

 会合があった日の夜、さっそく黒竜族の刺客が襲ってきたよ。

 君が言った通りだった。

 これ、とても役に立った。

 ありがとう」

 

 ジェラードは、小型のパレットを俺に手渡した。

 念話のことは彼に知られたくなかったので、文字で情報を教えることにしたのだ。


「しかし、それ、どうなってるの? 

 凄く便利だね」


 俺は黙ってパレットを腰のポーチに突っこむ。


「ところで……。

 私にも、あれを出してもらえないだろうか?」


 練習中のコルナたちをジェラードが指差す。


 原則、ボードは家族かパーティメンバーだけにしか渡さないのだが、この場合は仕方あるまい。

 俺はため息をつくと、長身の彼用に合わせやや大きな初心者用ボードを出してやった。


「ありがとう! 

 頼りになるね、君は」


 見えすいたお世辞でも、様になっているのが小憎らしい。彼はボードを手にすると、いそいそとコルナたちの方へ向かった。


 点ちゃんからの情報で彼の護衛が小さな傷を負っていると知っていたので、俺は三人に治癒魔術をかけておいた。

 恐らく『ついの森』を通る時ではなく、黒竜族から襲撃を受けた時に負った怪我だろう。つまり、この三人は、見かけより遥かに凄腕だということになる。

 護衛の一人、背が高い方の女性が、治療の礼を言った後、話しかけてくる。


「ああ見えて、若様は、あなたの事をとても評価していらっしゃるのですよ」


「彼は昔からああなんですか?」


「そうですね。

 白竜族のおさであったお父様が竜闘で敗れてから、少し変わられたかも知れません」


 彼の父も、毒にやられたのかもしれない。


「彼のお父上は?」


「竜闘のお怪我が元で……」


 なるほど、若くして一族を背負しょって立つことになったのか。身に負った不幸を感じさせない、彼の涼し気なまなざしを思うと、並外れたパーソナリティが分かる。


「若様、あのように楽しげに……。

 お館様やかたさまが亡くなられてから、初めて見ました」


 白竜族の女性は涙ぐみ、ボード練習中のジェラードを眺めていた。


 ◇


 俺は護衛役の三人にも初心者用ボードを作ってやった。三人ともボードを脇に抱えると、すぐにジェラードの所に走っていった。

 人望もあるんだよね、ヤツは。リア充め。


『(・ω・) 相変わらずですね、ご主人様は。それより、例のヤツ、出しましょうよ』


 点ちゃんが言っているのは、竜闘前の空き時間に作った乗り物の事だ。

 そうだね、乗ってみるかな。


『(*'▽') わーい!』


 俺は点収納から点ちゃん4号を出した。


 ◇


 点ちゃん4号は、大型バイクを模したものだ。


 細かいデザインはまだ改良中だが、つやがある漆黒仕上げだ。

 バイクのタイヤ代わりに、地面と水平になるよう、前後に厚めのボードが着いている。ボードは楕円形をしており、前側が広く後ろが狭い涙型だ。

 そこから伸びた太いフレームが、大きなボディを支えている。

 ハンドルは優美な曲線を描いており、俺がこだわった所だ。


 技術的には、ボードとフレームの接合部分に一番苦労した。直接融合してしまえばいいのだが、そうすると接合部に遊びが無くなり操作性が落ちる。

 様々なモデルを試した上、やっと接合部が完成した。製作時間の大部分は、この部分を作るのに掛かった。

 見かけはフレームとボードの接合部が球形に近くなっている。


 これから何度か試乗し、少しずつ改良していく予定だ。

 後ろのシートに、もう一人乗れるようにしてあるが、ナルとメルの事を考え、サイドカーを設計中だ。


「また変なの作ったね、お兄ちゃん」


 生徒たちに自主練習させておき、コルナがこちらを見にきた。


「やっぱり、変に見えるの?」


「うん。

 馬に似てるように見えるけど、何これ?」


「乗り物だよ。

 今は調整中だから、それが済んだら乗せてあげるね?」


「えっ? 

 運転してもいいの?」


「うーん、これはちょっと無理かな。

 その内、みんなが乗れるのも作る予定だから」


「なーんだ、自分で運転できないのか」


 このバイク型4号は、点ちゃんと俺が協力して運転する前提で作ってある。加速と停止は点ちゃんの仕事で、方向変更が俺の仕事だ。だから、今のところ他の人は運転できない。


 コルナは残念そうに、練習場へ戻っていった。


 ◇


 じゃ、点ちゃん行くよ。


 俺は4号にまたがる。シート部分には、エルファリアの『緑苔』を使った。ここもこれからの改良点で、そのうちもう少し硬いクッションにする予定だ。


 点ちゃん4号は、音も無くゆっくり滑りだした。

 草原を渡る風が気持ちいい。自分自身が風になったみたいだ。

 

 最初は低速運転でいろいろ試す。急カーブを切ったり、急停止をしてみる。


 思った以上に乗り心地がいい。俺は嬉しくなり、少しスピードを出すことにした。

 スピードアップをイメージすると、それだけで速度が上がる。高速でも車体は安定している。

 俺は調子に乗り、さらなるスピードアップをイメージした。


『ひゃっほーっ!』


 点ちゃんもスイッチが入ったな。

 おや、コントロールが利かない。

 あ! 点ちゃんが運転してるな。


 そう思った瞬間、車体が崖から飛びだした。


 ◇


 俺はバイク型の点ちゃん4号に乗ったまま、空中を飛んでいた。


 前回ボードで飛んだ時は、怖くて目が開けられなかった。しかし、今回は座ってハンドルを握っているせいか、それほど怖くない。いや、むしろ爽快だ。

 空を飛ぶ浮遊感、そして着地。


 着地時にボードの様な衝撃が無いのは、重力付与を点ちゃんが上手く使っているからだろう。

 厚いクッションの上に降りるような体感がある。


 これはいいな。


 俺は点ちゃんから方向転換のコントロールを返してもらい、自分から崖に突っこんでいく。

 点ちゃん4号は、一気に階段状台地を駆けおりた。


 ◇


 上の台地に帰るとき、崖の駆けあがりを試してみる事にした。

 さすがに、崖がオーバーハングになっている場所は避けた。

 低速で、崖に近づき、ぶつかる直前、前のボードを持ちあげる。ウイリーの要領だ。

 ボードが崖に近づくと「付与 重力」を使い、重力方向を崖に向ける。


 お、上がってる!


 4号はやすやすと最初の崖を登りきり、宙に飛びだす。着地すると勢いよく次の崖に突っこむ。

 再び崖を駆けのぼる。


 うはっ! これは、楽しい!


『(*'▽') わーい!』


 点ちゃんも喜んでいるようだ。

 俺と点ちゃんは、階段状台地の逆走を思いきり楽しんだ。


 ◇


 俺が点ちゃん4号をボード練習場横に停めると、練習していたコリーダたちだけでなく、ルルやナル、メルも集まってきた。

 当然のように、まず加藤が食いつく。


「おい! 

 なんだこりゃっ!?」


 娘たちは、目をキラキラさせて4号を見ている。


「パーパ! 

 何、これっ?」

「なんか、凄い」


 ルルも興味深々だ。


「シロー、これは何ですか?」


「新しい乗り物だよ。

 今は俺しか運転できないけど、その内に皆のも作るからね」


「「わーい!」」

「やったぜ!」


 ナルとメルを後ろに乗せ、それぞれ一周ずつ練習場を回った。二人は喜んでくれたが、やはり自分で操作するボードの方が楽しいのだろう。すぐにルルと一緒に、崖ジャンプをしに行った。


 俺は機体の微調整を済ませると、4号を点収納にしまった。

 皆のボード練習を見に行く。


 加藤、イオ、リニア、コリーダ組では、コリーダが一番上手い。

 ボードを乗りこなすにのに力は関係ないので、加藤は思ったより苦戦しているようだ。

 イオは、低速の運転なら、かなり上手い。ただ、スピードを出すのは怖いようだ。

 リニアは片手が無いせいか、バランスが取りにくいようで苦戦している。彼女が嫌がらなければ、そのうち舞子に頼んで腕を治してもらおう。


 ふと横を見ると、ジェラードが棒立ちになり、呆然としている。先ほど言葉を交わした、護衛の女性に尋ねる。


「彼は、一体どうしたんです?」


「そ、それが……」


 女性が向けた視線の先には、コリーダがいた。


「コリーダさんがシローさんの奥方だと聞いてから、あの状態です」


 あちゃー、本気でコリーダの事、好きになっちゃったのか。


「若様も、初心うぶでいらっしゃいますから……」


 初心?


「つかぬことをお尋ねしますが、ジェラードって何歳ですか?」


「少し前、二十歳になられました」


 ええっ! あれで二十歳……。いや~、末恐ろしいというか、何というか。これから多くの女性を泣かせるんだろうね。今日は、女性に泣かされちゃったみたいだけど。


『へ(u ω u)へ やれやれ。ご主人様は、なんかダメですねぇ』


 えっ? 点ちゃん、それは無いでしょ。

 今日も点ちゃんに呆れられてしまった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

点ちゃん4号は、バイク型でした。いやー、これはいいね。

 点ちゃん、作者に作っ『(*'▽') ダメー』

 ……だめですか。

 悲しみのなか、明日へつづく。

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