表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第6シーズン 竜人世界ドラゴニア編
241/927

第239話 竜人世界編 第43話 黒竜族の凋落(ちょうらく)

 竜闘第一試合でミミがとった不可解な行動の意味が判明します。

黒竜族は、会議でもコテンパンにされるようです。


 竜闘の翌日、四竜社では、今後の事を話しあうため会合が開かれた。迷い人の俺がこの場にいるのは、会合に先立ち、竜闘勝利で手に入れた、権利の使い道を表明するためだ。


 先日呼び出されたのと同じ部屋に、同じ顔ぶれの竜人が揃っていた。

 青竜族、赤竜族、白竜族、黒竜族が各二名ずつ並んで座っている。ただし、かしらの席には、誰も座っていない。

 今日の会合で、ビギに代わる頭が決まる予定だ。


「では、竜闘に勝利した権利を、シロー殿からうかがいましょうか」


 白竜族のジェラードが、美しい声で発言する。


「ちょっと待て」


 さっそくトールが口出しする。前回の会合で俺に難癖をつけてきた、中年の黒竜族だ。


「その前に、次期四竜社の頭は、黒竜族から出すことでいいな」


 議題を無視した、唐突な意見だ。すかさずジェラードが反論する。


「それは、後ほど話しあう予定のはずですが。

 それに今回の頭選びについては、黒竜族には遠慮してもらいたい」


「なぜだ!? 

 そんな話は聞いておらんぞ!」


 トールが激昂する。


「ビギが竜闘の名誉をけがした以上、仕方ないことですな」


 赤竜族のラズローが、ジェラードを支持する。


「頭は竜闘を汚してなどいない!」


 トールの横に座る、黒竜族の若者が主張する。


「ビギは竜闘で毒を使ったと、自ら認めたのですよ。

 これまで竜闘で得た権益は、すべて返されるべきものです」


 ジェラードが落ちついた声で言う。


「ビギ様が、そのようなことを認めるはずがない。

 大体、今回の竜闘にしても、迷い人が勝ったとはいえぬ」


 トールが強い口調で言う。


「ほう。

 私には、まぎれもなく迷い人チームが勝ったと見えましたが」


 ジェラードは、微笑みさえ浮かべそう言った。


「大将戦で、そいつはビギ様の剣を使ったではないか。

 あんな事は、許されていないはずだ」


「ええ。

 許されるとは思えません」


 青竜族のハルトという男が、トールの意見を援護する。彼は先の竜闘における運営責任者でもある。


「ほう。

 ビギは毒の使用について認めていないし、シロー殿は反則をしたというのですな?」


 これはラズローだ。彼は、すでにビギの事を敬称無しで呼んでいた。


 そのとき、窓とは反対側の壁にある文様がすっと消えた。この部屋は、白地の壁に模様がついている。実際は壁が全て白くなったのだ。


 そこに映像が現れた。


 ◇


 映像は竜闘第一試合が終わった後、史郎が審判にルール確認をするところから始まっていた。


「今の勝負に対して、異議申したてがあります」


 史郎の言葉に、青竜族の主審が応える。


「何だね。

 勝敗は、至極ハッキリしていると思うが」


「竜闘のルールでは、武器は一つしか使えないのでは?」


「ああ。

 そういう質問か。

 剣を使えるのは一度に一つという意味だよ、あれは」


「では、敵の剣を使ってもいいんですね?」


「手に自分の剣を持っていなければ、何の問題も無い」


「分かりました。

 時間を取らせて申しわけない」


 映像は、そこで一旦途切れた。それを見た青竜族の二人が、顔を歪めている。しかし、映像はそれで終わりではなかった。


 第五試合の後、竜舞台で起こったことが映しだされたのだ。


 ◇


 映っているのは、俺、ビギ、そして審判役のジェラードだ。

 敗北を宣告されたビギが、荒い息をつき、立ちあがった場面が映る。


「審判、彼が何か言いたいことがあるようだ」


 映像では、俺がジェラードに声を掛けている。

 ジェラードがビギに尋ねる。


「ビギ様、何でしょう?」


 ビギが憔悴した顔でうめくように言った。


「ワ、ワシは、今まで竜闘で毒を使用してきた」


 ジェラードの顔に、驚きの表情が浮かぶ。


「どうしてそんな告白を?」


 その問いに対し、ビギは沈黙で答えている。


 今度の映像には、黒竜族の二人が顔をしかめる。トールなど、よほど悔しかったのだろう、唇を噛み切った血が口の端から滴っている。


「これでもまだ、黒竜族の権利を主張されますか?」


 いつもは柔らかいジェラードの声が、まるで氷のようだ。黒竜族の二人は、がっくりと肩を落とした。


「黒竜族が竜闘で得た権益は、やはり全て返却してもらおう」


 ラズローの発言は、二人にとってとどめとなるものだった。


「わ、私もそれに賛成です」


 青竜族のハルトが、取ってつけたように発言する。沈みかけた船から逃げだそうというわけだ。

 さすがにこれは、トールが許さない。顔を上げ、ハルトの方をきっと睨みながら声を上げる。


「貴様っ! 

 裏切るのか?」


「裏切るとはどういうことですか」


 ジェラードがトールに問う。


「剣に毒を仕込むなど、竜闘を運営する者の協力無しにはできるはずもあるまい。

 毒の事は認めよう。

 しかし、青竜族だけが罪を免れるのは許せぬ」


 トールは罪を認めてしまった形だが、青竜族の足は引っぱれたようだ。


「ふむ。

 しょうがありませんな。

 今回の話しあいは、青竜族の口出しもご遠慮願おう」


 ラズローが普段の口調で言う。


「だ、だが……」


 青竜族のハルトが何か言いかけるが、残り三種族から絶対零度の視線を向けられ、発言を諦めた。


 ◇


「ラズロー殿、話を元に戻してもよろしいか?」


 ジェラードが、ラズローに確認を取る。

 これで、この場は白竜族と赤竜族だけで公式な話をする場となった。


「議事進行はお任せする」


「分かりました。

 最初に、迷い人チームが竜闘の権利を何に使うかですが……。

 その話をする前に、私から提案があります。

 今回は、権利を一つではなく、二つにするのはいかがでしょう」


「それで構わない。

 彼らには散々迷惑を掛けたからな」


 ラズローが、こちらを見て片眼をつむった。


「では、シロー殿。

 ご希望を二つおっしゃってください」


 ジェラードが俺に問いかける。ここまでは、打ちあわせ通りだ。


「そうですね。

 一つは、天竜祭への参加です」


「そんな事はっ……」


 トールが何か言いかけるが、他種族から拒絶の視線を向けられ口を閉じた。


「いいでしょう。

 では、一か月後にある、天竜祭への参加を認めましょう」


「もう一つは、何にしますか?」


「我々が元の世界に帰るためにも、隠しポータルを開放してほしい」


 青竜族の二人と黒竜族の二人が、ガタっと椅子を鳴らし立ちあがる。


「言語道断だ!」

「そんな事が許されるかっ!」

「あり得ない!」

「我々の権利はどうなる!」


 四人が口々に主張する。

 ジェラードが静かに言った。


「あなた方はこの会議の議決に関係ありませんが、一応お言葉だけは承っておきましょう。

 ところで、竜闘の勝利者が求められないものとして、命を奪う行為だけが規定されています。

 それはご存知ですよね? 

 ポータルを開放したとき、誰かが死にますか?」


「そ、それは……」


 立ちあがった四人は、ぐうの音も出ない。

 ジェラードが、さらに追いうちを掛ける。


「黒竜族から、『我々の権利』という言葉が出ましたが、すでに過去の竜闘で得た権利を返すと決まった今、それはあなた方の権利ではありません」


 黒竜族、青竜族の四人は、身体から力が抜けたのか、ぐにゃりと椅子に座った。

 それは、まさに一敗地にまみれた姿だった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

赤竜族ラズローと白竜族ジェラードの連携が素晴らしい。

この二人、実はめちゃくちゃ仲がいいんでは?

次回、点魔法で作る久々の乗り物が。

 では、明日につづく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ