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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第6シーズン 竜人世界ドラゴニア編
237/927

第235話 竜人世界編 第39話 竜闘4 加藤の闘い

 加藤vs黒竜族の美しい娘。

勝敗の行方は?


 長い中断の後、迷い人側の場外負けが主審から告げられると、観客からは、不満の声が湧きおこった。


「場外だと? 

 少年は出てなかったぞ!」

「審判! 

 いい加減なこと言うな!」

「ポル君の勝ちよ!」


 主審は、その声を振りはらうかのように、次の試合を促す。


「迷い人、中堅が前に出て」


 加藤は、俺の方をチラッと見ると、竜舞台へ上がった。


 敵側からは、黒竜族の女性が出てきた。

 きっと二十代前半だろう。細身の美人で、このような場には釣りあわないように見える。


 俺は、彼女が着ている、黒く光沢がある服を、どこかで目にしたように思った。


 ◇


 黒竜族の暗殺集団、『影』一族の娘エンデは、対戦相手の姿を見て、我が目を疑った。


 この黒髪の少年、しかも、人族が兄に勝ったというのか?

 少年は、人族にしては身長が高いが、竜人に比べると小柄だ。鍛えられた身体のようにも思えない。何より、剣の持ち方からして、全くなっていなかった。

 これでは、だだの素人ではないか。


 準備体操のつもりだろう。少年が足を延ばしたり、上半身を回すのを見て、エンデの疑いは、確信へと変わった。


 彼は、戦闘に関する訓練を受けていない。

 兄は、彼の事を力もスピードも及ばなかったと話していたが、何かの拍子に、たまたまラッキーな攻撃をもらったに違いない。

 それとも、魔術使いなのか?


 彼女は、近接攻撃だけでなく魔術の詠唱まで、竜気オーラの変化から見抜くよう訓練されていた。魔術の兆候が見られたら、相手が詠唱を終える前に、近接攻撃を加えればよいだけの話だ。


 開始線に着いたとき、エンデは自分の勝利を確信していた。


 ◇


「では、迷い人の中堅カトー。

 竜人中堅、黒竜族エンデ。

 第三試合、始めっ!」


 開始直後、ザブルに負けるとも劣らぬ速さの攻撃が、加藤を襲う。

 手数が半端ではない。息もつかせぬ連続攻撃が続く。エンデが使う細身の剣、その剣先が枝分かれしたように見えるほどだ。


 加藤の、そして迷い人チームの負けを予感した、客席の女性陣から悲鳴が上がる。

 竜人びいきの観客は、もの凄い盛りあがりだ。


「行けーっ!」

「我ら竜人の誇りー!」

「ぶっ殺せー!」


 観客の盛りあがりに反し、エンデは焦りはじめていた。

 相手の少年が、彼女の攻撃を、難無く凌いでいるからだ。上手な体捌たいさばきとは、とても言えないが、余裕を持ってかわされていることは分かる。


 とうとう、最初の連撃を、全て無駄にされてしまった。


 ◇


 加藤は、彼なりに驚いていた。


 リーヴァスに稽古をつけてもらっているので、剣の速さには対処できる。しかし、この若さで、これだけの技量を持つには、並大抵の努力ではないはずだ。

 彼の中には、相手に対する敬意が生まれはじめていた。

 ただ、それと勝負は別だ。最初の連撃を避けきった今、今度は、こちらの番だ。


 加藤は、軽く様子見の攻撃を仕掛けることにした。


 ◇


 少年からの攻撃が始まった。

 おそらく武術の訓練を受けたことが無い彼の動きは、大雑把で、攻撃を予測するのは容易たやすい。

 しかし、エンデには余裕が無かった。


 剣撃のスピードと重さが、凄まじいのだ。相手の攻撃力を受けながす、影流派の極意を身に着けていなければ、あっという間に、剣を場外に弾きとばされていたに違いない。


 この受けながしの極意こそ、達人級の男たちがひしめく『影』において、彼女が天才の名をほしいままにしてきた理由でもある。

 その極意をもってしても、少年の剣を凌ぐのはやっとだ。


 天才ならではの感覚で、相手の少年が、まだ余力を残しているのを感じとったとき、彼女の身体に戦慄が走った。

 このままでは、負ける。


 エンデは、一族の奥義を出す決意をした。

 元より門外不出の秘技だ。このような場所で使えば、人目につくどころではない。一族は、その奥義を失うことになる。


 恐らく、破門はまぬがれないだろう。しかし、彼女は躊躇ちゅうちょしなかった。この相手には、自分が持つ全てをぶつけたい。その想いが、炎となって燃えあがる。


 エンデは、生まれて初めて、自分の全てをぶつけられる相手と出会ったのだ。


 ◇


 加藤は、相手の女性が、何かの覚悟を決めたと感じた。

 娘の顔が、決意の美しさに彩られたからだ。


 綺麗だな。


 彼は、試合中であることを忘れ、思わずそれに見とれてしまった。

 その油断を見透かしたように、娘の姿が消えた。


 ◇


 エンデは、自分が持つ最高の技を使った。

 相手の頭上から襲いかかる技だ。


竜颪りゅうおろし


 そう名づけられたこの技は、代々影一族に伝えられてきた。

 歴代の影でも、この技が使える者は片手で足りる。その中でも最高の使い手と言われるのが、彼女の兄だった。

 しかし、ことこの技において、自分の方が兄より上だと、エンデは自負していた。


 全てを捨て、技を使うエンデに、武の神が微笑んだ。

 始動した技は、彼女の限界を打ちやぶった。この時、エンデは、名実ともに歴代最強の影となった。


 ところが、武人としての高揚感を味わった彼女は、少年の頭上から襲いかかろうとして戸惑ってしまう。

 逃げ場が無いはずの竜舞台から、カトー少年の姿が消えたのだ。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

加藤とエンデの決着は?

 明日へつづく。


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